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43話 個室を持ちたい

 風呂場から食事をした広間に戻る。

 シュナリも一緒に。

 顔をぽっと赤らめていた。

 のぼせたのだろうか。


「顔が赤いぞ」


「なんだか、お酒を飲んだあたりから」


「酔っぱらったんだな」


「酔っぱらいですか。私が酔っぱらいに」


「そうさ。シュナリは酔っぱらいさ」


「そうですか。でも嫌な感じはなくて、むしろ気分がいいです」


「ははは。シュナリは酒好きな体質なんだよ。座って休もう」


 食事をしたテーブルに着いた。

 いい湯加減。

 パンナオに一言礼を言いたいくらいだ。

 シュナリを誘拐してくれて、ありがとうと。


「パンナオさんはどこに行ったのでしょう」


「そういえば居ないな。別の部屋にでも居るのだろう」


「部屋はいっぱいありそうです。この屋敷の大きさからして」


「少なくみても、6か7つは有るだろう。空き部屋はあるはずさ。シュナリも自分の個室が欲しいと言ってたっけ」


「はい。個室が欲しい。持ったことはありませんし、持てたらと思うとわくわくします」


「空き部屋を見に行くか」


「見に行きたいですが、どうしてもご主人様が私と同室がいいと言うのなら同室でも構いません」


「そんなこと言ってない! シュナリは自分の部屋を持っていいぞ」


「夜中にこっそりと入って来られても構いません」


「しない! 安心しろ。さぁ行こうか」


 そうと決まれば空き部屋を拝見しに行きたい。

 屋敷の中はわからないので、パンナオに案内させるのがベスト。

 姿が見えないので呼んでみる。


「パンナオ!」


「はい。何でしょうか」


 キッチンに居たようだ。


「空き部屋はあるよな。使いたいので拝見したい。案内を頼む」


「はい。空き部屋でしたら2階へどうぞ」


「2階だな」


 階段へ通されると2階へ上がる。

 2階には通路があった。

 通路脇には部屋が幾つか並んでいる。

 扉は全て閉まったまま。

 物静かで音一つしない。

 全部の部屋の扉を開けるように言う。


「全部開けてみてくれ」


「はい」


 1番手前の扉を開けた。

 中を見渡すと明らかに使用していた形跡がある。

 ゴミが散らばっているので、あまり入りたくはない。


「部下の部屋か」


「部下が使用していました。これでも片付けて使用しますか」


「使いたいのだけど、他にも見せてくれないか」


 残りの部屋も同じように見せてもらう。

 部屋の大きさや汚さもある。

 ひと通り見ておこう。

 部下の部屋を何個か見た。

 男の部屋というのもあってか、総じて汚い。

 掃除もろくにしてないのが、ホコリを見てわかった。

 普通に掃除くらいしとけと言いたい。

 まぁ俺も掃除は苦手でほとんどしてなかったが…。

 次の部屋の前でなぜか、パンナオが照れていた。

 気持ち悪い。


「ここは私の部屋ですが…」


「ほれ、開けてみな」


「では、開けます」


 パンナオは恥ずかしいのか開けるのをためらった。

 別に見たいわけではないのだが、確認の意味もあった。


「なんだこれは……」


 見た瞬間にパンナオの性格を疑った。

 趣味なのか知らないが、数多くの金色や銀色の宝飾品が飾られていた。

 お前は貴族か王族かと言いたくなるくらいに。


「……」


 シュナリも絶句していた。


「これはどうしたんだ」


「私が集めた財宝です。隠したつもりはなかったのですが、自然と集まってしまいました。捨てるのももったいないですので、ここに置いてあります」


 俺が見せろと言わなきゃ隠してただろ。


「ここはあんたが使ってくれ。別に財宝やらを奪ったりはしないから安心しな」


「このまま使わさせてもらいます」


 パンナオは何度も頭を下げる。

 よほど見られたくなかったのか、すぐに扉を閉めた。

 そして次の部屋を紹介する。


「この部屋は綺麗だな。使用者が居ないてことかい」


「はい。1つだけ完全に空き部屋でして。すぐにでも使用できます」


 部屋の大きさは十分に広い。

 シュナリの反応をみる。

 

「ここはどうかな、汚くないぞ」


「ええ。ここを使いたいな」


「いいぞ。決まりだな。この部屋はシュナリの個室にする」


「よろしいのですか」


「決まり。欲しい物は後々に購入していこう」


「嬉しいな。ありがとっ!」

 

 嬉しさのあまり俺に抱きついてきた。

 パンナオの見てる手前、デレデレするわけにはいかない。

 ベッドがあったらそのまま倒れて抱き合いたいのを必至に堪える。


「おいおい、苦しいぞ!」


「お礼に私とモフモフしていきますか」


「今は不味いだろ! しかも見られてるんだし」


 大変に喜んでいる様子で、部屋に入りはしゃいでいる。

 尻尾もクルクルと回っているのが何とも小犬のようだ。

 楽しそうなので、このままにしておいてあげよう。

 シュナリが俺に抱きつき誘う様を全て見ていたパンナオは気不味そうによそ見をする。

 その間に俺は隣の部屋に。


「ここなら使えそうだな」


 中央にはダブルベッドの大きさはあるベッドが。

 これは大きくて気持ち良さそうだな。

 さすがに床に寝るのは寝づらいし、寝心地も悪い。

 これなら問題はないので安心した。

 

「部下が使用してましたが」


「ベッドが大きいのが気に入った。俺はここを個室とするよ」


「そうですか。どうぞお使いください」


 でも使用済みなので掃除だけはしておいてもらおう。


「掃除だけはしておいてよ」


「あ、はい。今すぐ掃除しますので」


 パンナオは、ほうきを持ってくると俺の個室となった部屋を丹念に掃除しだした。

 なかなかの、ほうきさばきだ。

 丹念に掃除させることにした。

 やはり、生かしておいて正解であった。

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