42話 初混浴風呂
浴室は風呂の独特の香りが立ち込めて、充満していた。
湯気が体を包んで寒気を感じさせない。
風呂の匂いに誘われるように、服を脱いだ。
服は棚に置いておく。
待望の風呂場に。
布でできたタオルが用意されていた。
パンナオめ、中々気が利く奴だなと感心する。
湯気で周りがよく見えない。
思っていた以上に広い。
住んでいた家の風呂とはエラい違いだ。
自宅の風呂というより温泉宿の風呂と言った方が近いだろう。
1人だけでなく多くの人が同時に入れる程である。
パンナオの部下も多くいたので、これくらいの広さが必要な面も想像できた。
知ってるだけで8人はいたから。
さすがにシャワーはないようだ。
それは当然か。
ただ木製の桶はあったので、桶で湯船からお湯をくみ取り体にかけた。
「熱い!」
思わず言葉にしてしまった。
でもこれが風呂の楽しみでもある。
最初は熱いのだけど、少しずつ熱いのに慣れていくのだ。
体をお湯で何回か流して綺麗にしたら、ようやく湯船へつかる番。
足からそっと湯に浸すようにつける。
足から順に体を。
そして肩までお湯で満たされた。
うん、いい湯加減だ。
広い湯船を独占してゆったりと時間を楽しむ。
今日の迷宮での疲れは吸い取られるように消えていく。
これはいい、最高だな。
毎日でも入りたい。
必ず入ろう。
パンナオに言って毎日用意するように伝えなければな。
それから湯につかり、ボーとしていた。
その時だ。
何やら浴室の方から物音がした。
パンナオか…。
まだ湯につかったばかりで、これから温まるつもりなのに。
とんだ邪魔者もいいとこだ。
それとも俺の背中を洗いにでも来たのか。
洗いにきたなら許してやってもいい。
湯気がいっそう濃く室内を満たす。
風呂の室内に入って来たのは、人影でわかった。
まぁ背中でも洗ってもらうかな。
湯船から出て木製の台があり、俺はその上に尻を置いた。
近くには石鹸が置いてある。
俺が座った所まで人影は来たのでが石鹸を渡し。
「スマンな。体を洗ってくれ」
「……」
返事はなく、石鹸を手に取る。
そして言ったとおりに石鹸を使い、まず最初に背中を擦ってもらう。
他人に洗ってもらえるなんて経験はなかった。
パンナオの奴、気が効くよな。
手が背中から肩へと移る。
肩からかけて首もとも泡がたった。
気持ちのいいもんだ。
そして手は伸びていき、首もとから胸の辺りにまで。
胸やお腹も泡がたち手で撫でるようにされた。
しかしそこで俺は異変に気がつく。
撫でるようにしてもらうのはありがたいとパンナオに感謝。
でもお腹を洗っている時に俺の背中にパンナオの体が密着した。
まぁ密着しなければ洗えないのはわかるが。
それにしても密着した物が、やけに柔らかく感じるのは不思議だった。
パンナオの体はもっと締まっていたような気もする。
この柔らかくボリューム感のある感触は……。
待てよ!
まさかだよな。
俺はその時に洗ってくれてる者がパンナオじゃないと疑った。
そして後方にいるのを確かめる為に後ろを振り返った。
「……シュナリ!!」
「はい。どうですか洗った感想は」
「気持ちはいい……いや、そういうことじゃなくて」
俺はシュナリを見て驚いた。
シュナリだとは思ってもみなかったからだ。
「ご主人様が俺の後に入れと、おっしゃいました」
「いやいや…それは俺が風呂に入って出た後にシュナリが入れと言う意味をだな……」
「そうでしたか…私はてっきり一緒に入れと勘違いしてしまいました」
シュナリの勘違いであった。
どおりで俺の背中に当たる物が、大きくて柔らかいわけでして……。
ちょっと待てよ。
てことは…。
湯気が多すぎてハッキリと見えない。
かろうじてシュナリだと顔が判別できる程度。
俺はまさかと思い手を伸ばした。
その物を掴んだ。
その大きくて柔らかい物の正体を知るために。
「!!!」
「きゃあっ!」
シュナリは突然に声を出した。
ビックリしたようで立ち上がろうした。
だが立ち上がる時に運悪く石鹸を踏んでしまうシュナリ。
足を石鹸で滑らせて体のバランスを崩してしまった。
崩れたらどうなるのか。
シュナリの体が俺の方向に倒れて来る。
「うわぁ!」
俺はシュナリが倒れてきて体重を全て受け止めるしかなかった。
俺は風呂場の床に寝そべる。
その上にシュナリの全体重が覆い被さる。
柔らかいな。
その後は、お湯で体を流してもらいもう一度湯船に入る。
もちろんシュナリも一緒に。
混浴風呂って奴です。
「お風呂は気持ちのいいものですね。今まで知りませんでした」
「そうなんだよ。風呂は気持ちいいだろ。こうやって湯の中に居るだけで疲れがとれるんだな」
「ええ。疲れがとれるのはわかります。体がポカポカしてきてます。毎日でもこうしてご主人様と入りたいものです」
「俺と一緒がいいのか」
「一緒がいいです」
まぁシュナリ本人が一緒を望んでいるのだ。
無理に入れと言ったわけじゃないのだから、ここはそういうことにしておこう。
俺にとっても好都合なのだしな。
ゆったりと混浴風呂を堪能して湯を出ました。
10万文字達成出来ました。




