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41話 初の風呂

 俺はシュナリと違いゆっくりとワインを飲んだ。

 酒よりもチーズとハムに興味がいく。

 そうとうに美味い。

 こんなに美味いハムなんて日本にいた時にですら食ったことはなかった。

 当時はスーパーで安いハムしか食えないので我慢していたものだ。

 弁当も半額のを好んで食っていた。

 まさか異世界に来て満足な食事にありつけるとは、嬉しい限りだ。

 その間もシュナリは食べていて、俺のワインを見ているような気がしてならない。

 もしかしたら、俺のワインも欲しいのだろうか。

 いくら何でも、それは飲み過ぎというものだ。

 飲み過ぎて倒れても困ってしまうし。

 それでも見ているので、きいてみると。


「もしかして、このワインが欲しいのか」


「欲しいな」


「それはそれで、飲み過ぎのようだぞ。まだ自分が飲めるかわからないのに、後で気持ち悪いって言ってきても知らないぞ」


「んー飲みたい!」


 やはり飲みたかったようだ。

 俺が欲しいところを、待ったをかけると体を揺らして欲しいアピール。

 そこまでして欲しいのか。

 しかしその揺らした仕草が可愛い。

 その仕草に負けました。


「飲ませない」


「どうしてですか。飲ませてくださいよ、ご主人様が飲まないなら」


「飲むなと言われると飲みたくなります」


「酒に酔ってフラフラになったら、俺が困るんで飲ませたくないのが本音だ」


「まだ全然フラフラじゃないですの。ほら立って普通に歩けますし」


「後から酔いがまわってくる体質なのかもしれん。立ってみてみろよ、フラフラかどうかわかるから」


「全然フラフラじゃない……でしょ」


 立ち上がると椅子の周りを一周したら、少しだけフラついていた。


「今、フラついていたぞ」


「絶対に大丈夫ですから、飲ませてください」


「ダメだな。歩けなくなったらどうする!」


「ほら大丈夫………!!」


「うわぁ! 息が……」


 シュナリは歩くとよろけて俺の椅子に倒れてきた。

 俺はとっさにシュナリを支えてあげる。

 胸がぴったりと顔面を捉えていて、息が出来ない。


「飲ませてくれるまで離れませんよ」


「息が……」


「飲ませて」


「ほれ、飲みな」


「飲みます」


 コップを手渡した。

 大喜びすると、またグイグイと飲んだ。

 どうせ俺はもう飲めなかったから、良いとした。

 出された料理は、ほぼ食べてしまう。

 これだけ食べればお腹はいっぱいになった。

 日本でこれを外食したらかなりの金額になる。

 ご馳走さんでした。

 シュナリもスプーンを置いて満足した様子。


「お腹はいっぱいか」


「ええ。もう食べれません。こんなに食べれたのは生まれて初めて。ふー」


「俺も満足した。スマンなパンナオ。ご馳走さま」


「そうですか私の分は……」


 パンナオはテーブルを見渡して物欲しそうに。

 だが、残念なことに皿にはほとんど残っていない。

 

「悪いな。もう残ってない」


「ええー!」


「2人で食べてしまった」


「美味しかったです。どうも」


 シュナリがお礼を言う。

 シュナリはひどいことをされたのだ。

 これくらいはしてもらうのは当然だろう。

 パンナオは諦めたのか、残念そうに肩を落とした。

 腹が減っていたのが伝わった。

 本音を言うと、もし料理が残っていてもパンナオには食わせる気はなかったのだが。

 料理が終わり皿が邪魔になった。


「この皿を片付けてくれ」


「あ、はい」


 もちろんパンナオに片付けてもらう。

 テーブルの上が片付いた。

 ひと息ついて休んだ。

 休んでいたら、日本人の習性が現れる。

 風呂に入りたくなった。

 風呂があるならぜひとも入りたいと思うのは日本人なら皆そうだろう。

 パンナオを呼ぶ。


「おい、パンナオ!」


「はい」


「風呂に入りたいんだよな。用意してもらいたいんだ」


「ええ……」


 パンナオは俺に風呂に入りたいと言われて固まった。

 俺の言ってる意味が理解できないようだ。

 なのでもう少しわかるように言ってあげる。


「風呂を洗って新しくお湯をためておいてよな」


「あ、はい」


 パンナオはやっと俺の言う意味を理解した。

 すすっと風呂場に洗いに行った。

 この屋敷にも風呂がある。

 ということは、この世界には風呂に入る習慣があるのがわかる。

 シュナリはどうなのか。

 風呂の文化があったとしても人狼族は、また違う文化かもしれない。

 猿は温泉につかっているのを映像で見たことがある。

 しかし犬や狼が風呂に入るのは見たことも聞いたこともない。

 気持ちいいというより、水を怖がるのが犬だからな。

 たぶん入りたがらないとは思うけど、きいてみよう。


「俺は風呂に入るけど、シュナリはどうするかい。無理に入らなくていいぞ」


「風呂には入った経験はありませんね。でも入ってみたいという気分です」


「気分?まぁいいか、入りたければ先に俺が入るからその後に入りな」


「ご主人様の後に、ですね」


 気分?と聞いて、ちょっと気になってしまう。

 どんな気分なんだろうか。

 よくわからないが、少し酔っているかも。

 あれだけ飲めば普通は酔います。

 そこへパンナオが戻ってきた。

 風呂の準備が終わったようだ。


「風呂の準備ができました。どうぞ」


「遠慮なく入らせてもらうよ」


「風呂場はこちらです」


 パンナオに案内されて風呂場に向かう。

 浴室に案内されるなんて、まるで温泉の旅館にでも来た気分に。

 パンナオも完全に旅館の従業員にしか見えない。

 ぷぷっ!

 笑ってしまった。


「今、笑いましたか?」


「いや、何でもない。気にせず案内してくな」


 聞こえていたようだ。

 誤解せれるので気をつけたい。

 今後も従業員教育をしていくつもりだが。

 ようやく風呂場に到着。

 案内をしたパンナオは帰っていく。


「どうぞ、ごゆっくり」


「ご苦労」


 もう従業員以外に見えない。

 では、異世界の初風呂に入らせてもらおう。

 浴室に入る。

 浴室は家屋の材質と同じ砂を固めた石で作られていた。

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