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40話 手料理

 シュナリが大喜びしたのを見てパンナオは慌てて言う。


「あのー。私はどこで寝ればよろしいですかね」


「そうだな……俺も個室を持つから、余った部屋を使ってくれ。それに腹が減ったので晩ご飯をよろしく」


「えっ」


 驚いた様子のパンナオ。

 部屋はともかく、晩ご飯までといった顔をした。

 

「普段はパンナオの部下に作らせていたのか」


「はい。日替わりで部下が作っており、私は一度も作ったことがないのです」


「作らせてたのか…贅沢な生活。今日からは俺達のご飯を頼むぞ」


 そうと決まるとシュナリが注文をつける。


「私は肉料理が食べたいな」


「ほぅ…シュナリは肉料理が好きなのかい」


「肉は大好き。といっても贅沢に肉を食べれることはなかったので」


「そうか、よし今日は肉を食べよう。パンナオよ、肉はあるのかい」


「……あります」


「それなら、今すぐ作ってくれ。任せたぜ」


「あ……はい」


 パンナオは困った様子をみせるも、俺には逆らえない。

 逆らう素振りもなかった。

 全部の言いつけをのみ、調理場へと行った。

 この屋敷に住めれば宿屋代を払わなくて済む。

 毎日かかるトパーズがその分浮くのは大きい。

 しかも料理付きとなれば美味しい話だ。

 パンナオを殺さなくて良かった。

 迷宮で部下とともに殺してしまおうと思えば殺せた。

 殺さなかった理由は使い道があるのではと、ひらめいたからで間違ってなかった。

 利用できるだけ利用してやろう。

 俺に敵意を向いた罰として。

 今頃は俺に出会ったことを後悔して肉料理の下ごしらえしてるのだろう。

 この屋敷に済むといった時にした顔は、俺に対して服従しますと見事に表していた。

 絶対に逆らいませんと。

 言葉にしなくても理解できた。

 何と言ってもシュナリが喜んでいるのが見れるのが最も俺にとっては何よりも嬉しい。

 迷宮で傷ついたのは回復してるのか、きいてみたい。


「傷の方はどうだ」


「回復薬を飲んで楽になりました。思ってるよりもよく効くのですね」


「良かった。地下3階は魔物の数が多い。十分に注意していこう」


「私はちょっと慌ててしまい、うろたえてしまいました。もう少し冷静になれれば魔物1匹の能力は低かったのだし」


「1匹なら倒せても複数になると難しいのが今回わかった。いい経験になったよ」


「回復薬は必要ですね」


「できるだけ買っておこう」


 5匹はキツかった。

 さらに増えると苦しい戦闘が予想される。

 戦わずに避けて通れるのなら避けるのも必要かもな。

 目的は最深部のボス。

 そこまで行くことを優先していくのを心がけたい。

 全て遭遇した魔物と戦ってきたのは、経験値を上げたいのもあった。

 ゲームならば生き返る方法はあるのが一般的。

 教会で復活したり、しかしその分のペナルティーで金を減らされる場合もあるが、ここでは生き返るのはないと思っていい。

 死ねば終わり。

 そのつもりで冒険しないと失敗する。

 そこに肉の良い匂いが鼻を刺激してきた。

 シュナリを見ると、すでに理解していたようだ。


「肉です」


「さすがに早いな。俺より鼻が効くのも困ったもんだな」


「美味しそうな匂い」


「待つんだシュナリよ」


 もう我慢の限界なようだ。

 しかたなくパンナオを呼びに行こうとしたら、彼の方から皿を両手にやって来た。

 そして皿をテーブルに並べていく。

 

「お待たせしました。今あるもので作っておりますので」


「ありがとう。食べていいぞ」


 肉料理は何の肉かわからないが、豚肉に近い肉に思える。

 別の皿には野菜炒めとベーコンが添えてあり美味そうだ。


「いただきます」


 シュナリは木製のスプーンで肉料理を口に運んだ。

 皿も全て木製であった。

 俺も腹が減ったので、さっそくちょうだいする。


「うん、この肉は美味いぞ。こんな良い肉を毎日食ってたのか?」


「はい、私も肉は好きなもので」


「まぁありがたく頂いておくよ。他にも料理はあるのかい」


「ええと、パンとワインなども」


「よし、持ってこい」


「お待ちください」


 パンナオにキッチンに行かせて、他の料理も持ってこさせる。

 ワインもあるのか。

 俺は酒は弱いがシュナリはどうだろうか。

 年齢的には俺よりも年下なのは間違いないはずなので、酒を飲んだことはないだろう。


「ワインは初めてだろ」


「ワインなんて飲ませて貰えませんでした。村では男の人は酒の強さで競って飲み合うのが風習でした。飲んでみたい」


「そうかい。じゃあ試しに飲んでみな。俺は酒に弱いんで少しにする」


 再びパンナオが来て、ワインにパン、さらにチーズやハムまで出てきてご馳走になった。

 ワインは木製のコップに注がれていた。

 シュナリはコップを持つ。

 ひとくち、そしてふたくち……。

 初めての酒。

 そんなには飲めないだろう。

 あれ!

 ごくごくと飲んでますね。

 本当に初めてですか?

 おいおい、大丈夫すか。

 止めようとして。


「その辺で止めたら……」


「もう飲んでしまいました」


「はぁ……」


 どうやら酒好きな体質のシュナリ。

 新しい発見であった。

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