39話 屋敷の中
まず最初に迷宮で稼いだ分の魔石を換金しに行く。
換金は迷宮屋で行うことにした。
「あら進さん。もうエハロ迷宮を攻略してしまったの?」
「いや、まだ途中でした。換金だけお願いしに来たんです」
「換金ですね。私ったらつい早とちりしちゃって。でも応援してますからね」
「ありがとう」
応援してますと言われて、思わず興奮していた。
「では、こちらがトパーズです。あれその縄で巻かれた男性は?しかも砂だらけですね」
「この人なら気にしないで。別に悪い人じゃないからさ」
どう見ても怪しいだろうな。
縄で巻かれた上に全身砂だらけ。
そりゃ尋ねてくるだろ。
パンナオも黙っている。
叫べば俺は問答無用に国王軍の者に差し出すといってあった。
受け取ったトパーズを見てまずまずの金に納得はした。
迷宮屋を出ると俺には行きたい所があった。
パンナオにそれを確かめる。
「よく生きてたな。楽しかったかい?」
「楽しくなんかないですよ。本当に死ぬかと…」
「そりゃ悪かったよ。それよりも砂だらけだろ。水をかける必要がある」
「ご主人様、ここで水をかけると。町の人も大勢見てます」
シュナリの言う通り大勢が買い物なのか、歩いていた。
「ここでパンナオに水をかけるのも悪くないが、俺はそこまで悪趣味じゃない。恥をかかせて楽しむような趣味はないんで、場所を代えてかけようと思ってさ」
「パンナオに優しさがいるでしょうか。こんな悪党に対してご主人様は優し過ぎる」
「いやいや、私は砂漠を引きづられて来たのですが……」
パンナオは泣きそうな声でシュナリに言ったが、シュナリには聞こえていないようであった。
「心配は無用。取っておきの、おしおきを用意してある。俺は良い子には優しい男だが、悪い子には厳しい男だと分からせてやろう」
「ご主人様、まさか後で私の体に水をかけると。水びたしにした体を見て透けてしまったのを楽しむと。迷宮では役に立てなかったとはいえ、そんなおしおきを考えていたのですか」
「シュナリひかけるなんて言ってないだろ! 勝手に俺を変態扱いするな! それにシュナリは十分役に立ったさ」
「ありがとうございます。ですが、ちょっと残念な気分」
「残念がるな。むしろ喜ぶところだろ!」
「そうなると、おしおきはパンナオに決定と」
「決定だ。砂のままだと気持ち悪いだろ」
パンナオにこれから罰を与える。
本人はまだわかっていないようた。
「ええ。気持ち悪いです」
「あんたの自宅で落としましょう」
「私の自宅ですか…」
パンナオは一瞬ためらったが、気持ち悪さには勝てないようだ。
結局はパンナオの自宅に向かうことに。
家はこの町にあるのは聞いていたので、期待上げ。
そこからパンナオを先頭に少々歩いていくと、商店が並ぶ通りから、やや離れた場所まで歩いていき、門がありそこでパンナオは止まる。
ここが自宅と紹介した。
「ここが自宅なんです」
「けっこう広いな。庭も付いてるぞ」
門の外周は高い壁に覆われており普通の人が住む家ではない。
金持ちなのですと、見せびらかしてるとしか思えないのだ。
こんな豪華な家に住んでのかよ。
贅沢しやがって。
うらやましくなってきて、ムカついてきた。
シュナリも見るなり驚いた様子で。
「お屋敷ですよね、これ」
とシュナリは、あきれる口調で言った。
「さぁ入ろうか」
俺が言うと、パンナオは門の扉を開けて家に招いた。
嫌々ながらではあったのだが、断ることは出来ないと観念したようだ。
庭は綺麗に手入れされていて、美しく緑の芸術品のよう。
シュナリもため息をついている。
「庭の手入れは誰がしてるのかしら。パンナオだけでは無理よね。それも腕のたつ職人じゃなきゃ」
「それは専属の庭師を雇っております。とても私には手入れは無理です」
「潤ってる証拠だこと」
「……」
パンナオは申し訳なさそうに頭を下げる。
この庭を維持するのも大変な労力をかけてる。
たぶん1人ではなく複数人の庭師を雇ってるな。
まぁそれは放っておこう。
そこから家につくと中に入れてもらう。
玄関口はまるでリビングかと思わせるほどに広い。
ここで気になって。
「この家屋にはパンナオ以外に誰か居るのかな……。例えば手下がまだ居るとか」
「いいえ、誰も居ません。嘘ではありません」
首を横に振り否定した。
一応確認しておいた。
「中を案内して欲しいんだ」
「どうぞ……」
誰も居ないというのは本当だろう。
嘘をついても勝ち目はないとわかっているはずだし。
案内された部屋はテーブルがあり周りに椅子が配置されていて、俺とシュナリは座る。
座り心地もとても良い。
リラックスできそうだ。
その間にパンナオは風呂に入り砂を落とすとのこと。
「私は風呂に入ってきます」
「俺とシュナリはここにいる」
風呂か……。
この世界に来て風呂に入った記憶がない。
宿屋の部屋は風呂なしであった。
まぁ格安というのもあるだろうな。
ぜひとも入らせて、もらいましよう。
シュナリに腹が減ってるかときく。
「腹が減っただろ」
「もう、ペコペコです。この家なら食べ物はありつけそうな気がする。欲張りかな」
「そうだな。でも晩飯はこの家で頂いていこう」
「嬉しいです。誰が作るのでしょうね。料理人が待機しているのかな」
「さぁどうかな。材料があれば何とか俺でも作れるさ。簡単なものなら」
「あら、それも食べてみたいけど」
家の中を見て回ると部屋数も多くあるようだ。
部下のメンバーもここに住まわせていたに違いない。
護身用にもなるし。
そうなると今は部下は全員俺が消したので、空き部屋になっているよな。
俺とシュナリに使わせてもらうのもありか。
「この家に住むのはどうかな?」
「ご主人様が住むなら一緒に住みたいです。宿屋ですと宿賃も掛かりますし。ここなら負担も無くなるのでは」
「無くす予定さ。ここを俺の物にする。もちろんシュナリと一緒に住みたい本当にだ」
「嬉しい言葉です」
シュナリは嬉しそうにしている。
俺だってないが、貧しい生活をしてきたシュナリには夢のような生活に映るのかも知れない。
そこに風呂からあがったパンナオが登場した。
「……あの、私はこれからどうしたらよろしいですかね」
「その件か……今決めた」
「どのように……」
「俺とシュナリはこの屋敷に住む」
「……はぁ?」
「問題はあるか。ここを俺の物にする。お前は料理、洗濯、掃除をしてもらう」
「3人で住むと……」
「シュナリも住みたいだろ」
「ぜひ住みたい。自分の部屋も持ってみたい」
「好きな部屋を1つシュナリの個室に使っていい」
俺の独断で決定する。
それに俺の個室も作れるだろう。
シュナリは嬉しそうにした。
パンナオという邪魔者がいるが、シュナリとひとつ屋根の下に暮らすのは楽しみである。
「やったー!」




