37話 スピアの使い方
デビルバードは俺達の頭上から見下ろしてくる。
待っているのか攻撃は仕掛けてこない。
なら俺から先制攻撃と討つべき。
先手必勝ていうしな。
パールスピアを構える。
スピアの特性は剣よりも長いことだ。
その特性を活かす戦いをすれば有利に運べる。
デビルバードとの距離はまだスピアも届かない距離なのでスピアが届く範囲まで詰めてみる。
2匹いるので慎重に距離を縮める。
1匹のデビルバードが近づいたのでパールスピアを突き出してみた。
もうちょいで当たる距離か……。
スピアの先はデビルバードの体をかすった程度に。
やや遠かったようで、もう少しだけ距離を縮める。
スピアを同じ感じで突いてみた。
スピアの先がデビルバードの羽根に当たり、羽根を串刺しの形にした。
スピアなら楽にやれるなと好感触を得た。
しかし好感触を得たと喜んでばかり要られないのに気づいた。
それは突き刺さってくれたのはいいが、羽根から取れなくなったということ。
スピアを引き抜こうと前後に揺らした。
ぜんぜん抜けない!
デビルバードにはダメージを与えられても、これでは次の攻撃に移れない。
俺は悪い予感がした。
今の俺はスピアを使えない。
となれば、もう1匹のデビルバードにとって絶好の攻撃チャンスになるだろう。
マズイかなこの状況。
予想とおりにもう1匹のデビルバードはこのタイミングで飛びかかってきた。
鋭いくちばしが視界に入る。
どうしたらいい?
頭の中を整理し、いい方法を考える。
盾…。
そう…片手には盾があるではないか。
すかさず盾を前に出しガードする。
これでとりあえず防げるだろう…と思った。
それがさらに俺の甘さであった。
デビルバードは盾をかわして、俺の脇に移動する。
盾の届かないポイントを見つけるや、一直線に俺の体をくちばしが!
「ぐわぁ!」
防具の上からでも痛みが。
いや…防具のおかけで助かったのかも。
デビルバードはまた空中に逃げていった。
ちくしょう。
「大丈夫ですか…ケガは?」
「大丈夫だよ。この程度なら。シュナリはそちらの魔物に集中していてくれ。俺なら自力で何とかするからよ」
「………はい」
シュナリは、ためらいつつも首を縦に振る。
自力で何とかする…とは言ったものの、果たしてどうにかなるのかな。
スピアは先が長いので遠くからでもヒットできた。
剣の時よりも有利だと思った。
しかし万能ではないのがすぐにわかる。
スピアはいわば、串のような物。
串なら突き刺すように攻撃する。
剣のように斬る使い方はしない。
いや…できないのだ。
よって、敵を突き刺したはいいが、運悪く引っかかってしまい抜けなくなると、武器としての効力は激減。
価値すら無くなるのだ。
その点、剣ならば刺すわけではないので心配はいらない。
デビルバードにはスピアは不向きであったのかな…。
そうしている間にも、くちばしが襲ってきた。
クソッ……。
これでは展開が開けない。
いつかは、俺の体力が尽きて死ぬわな。
幸いにも、くちばし攻撃は威力が弱かったのですぐには死なくて済みそうだ。
何度も耐えられるかと言えば、無理。
痛いに決まってる。
今まで食べた焼き鳥の呪いじゃないかと思い始める始末に。
それよりも先端に引っかかっているデビルバードを取り除こう。
こっちが先決だ。
スピアを地面に置いてデビルバードを手で摑んだ。
激しく暴れだすのを無理やりに。
よしっ…取れた。
引き離したデビルバードを遠くに向かって投げた。
壁に激突して、変な鳴き声をあげた。
意外にもそれが結果を良くしたのは、そのまま死んでしまった。
まぁ、ラッキーと思いたい。
もう一度スピアを拾い、残りの1匹と向き合う。
今度はヘマはしないぞ。
敵の方から先制攻撃。
盾にくちばしがぶつかる音。
ガード成功。
そう何度も同じ手を食らう俺じゃないぜ。
俺をあんまりナメんなよな!
頭上に逃げていく時に大きなスキがあるのは、気づいていた。
今だ!
背中の辺りにスピアを伸ばす。
確実にヒットした感触を得る。
フラフラと飛んでいても、ぎこちない飛び方に。
ここが勝負!
もう一撃おみまいした。
完全に撃沈。
けっこうな苦労しましまが、倒せました。
後はシュナリがどうなってるのかな。
俺は自分のことで手一杯で気にかけられないでいた。
シュナリのことだ、上手く戦っているよな……。
しかし俺の期待とは一致していなかった。
「シュナリーー!」
「……」
シュナリはスノーシュリンプ1匹とサンドネズミ2匹に囲まれていた。
まだ1匹も倒していない状態で。
やはり3匹も独りで相手にするのは無謀だったんだ。
俺のミスだ。
シュナリっ!
俺は自分のことしか考えてなかった。
自分の身の安全が第一と。
最低だよな。
許してくれ。
怒りをスピアに込める。
すぐさま、駆けつけサンドネズミにパールスピアを脇腹な刺した。
その勢いのままもう1匹のサンドネズミにも続けて刺した。
後は夢中でサンドネズミを攻撃し続け倒した。
スノーシュリンプはその間にシュナリが倒してくれた。
5匹の魔物の討伐は終了。
でもいつもとは違う。
シュナリのもとへ行く。
「悪かった……」
「ご主人様。心配かけてすみません」
「何言ってんだよ!こんなに怪我をしてんじゃないか!」
恐らくはサンドネズミの牙の跡だろう。
痛々しい。
シュナリはフッと倒れるのを、反射的に抱きかかえた。
「大丈夫か」
「はい。助けて頂いて嬉しい」
「当たり前だろ、今日は帰ろう。これ以上は危険だしな」
「私は歩けますので」
帰るのを決めて迷宮入り口まで戻ることにした。




