30話 国王軍騎士
朝になり目が覚めると嬉しいことに、ベッドの中でいつに無い温もり。
シュナリが俺の横で寝ているからです。
服は着ていない。
肌と肌が合わさり気持ちがいい。
とても気持ちのいい朝をむかえられました。
「おはよう」
「おはようございます」
「起きようか」
「着替えを見ますか?」
「見せてくれるなら、見ていたい」
「私の着替えを見ていて面白いの?」
なんて質問をするのだ。
面白いに決まっています。
これを見てつまらない理由ありませんから。
シュナリはスッとベッドから起き上がる。
服を着るようで、背中からお尻にかけて丸見えになり、衣服を着ていく。
「恥ずかしい…ですね」
「そうか…なら見ないでおくよ」
もうちょっと見ていたいけど、そうも言ってはいられない。
理由はひとつ。
迷宮に行きトパーズを稼いでサイームに返す必要があるのだ。
眠いなんて言ってるヒマがあれば1匹でも魔物を倒そう。
シュナリは服を着ると俺が着替えるのを待っているよう。
とっとと着替えをしてしまおう。
それから宿屋を出ると昨日と同じくエハロ迷宮を目指す。
「今日もエハロ迷宮だぞ」
「昨日は地下2階まででした。もっと下の階へ行きたい」
「そのつもりさ。まずは迷宮屋へ行く」
「今、ちょっとニヤけました」
「俺は迷宮を降りるのに楽しみながら降りるんだ。だからだろう」
受付けのお姉さんを想像してニヤけていたようだ。
シュナリの視力はとてもいいので迷宮では役立つが、使い方しだいでは困ってしまう。
「そうでしたか。迷宮屋といえば騎竜ですね。また会えるのは楽しみ」
昨日と同じ騎竜に乗るのかは、わからないけどな。
俺にはどれも区別できないし。
シュナリは案外気に入ってるようだ。
乗りごこちは良いとは言えないが、速いのは嬉しい。
歩きながら、色々と考えていた時だった。
人の声がして騒がしいな。
人通りの多い通りの方で声はした。
人の数も、いつもよりも多く感じるのは気のせいではないだろう。
「何か騒がしいよな」
「祭りでしょうか」
祭りがあるとは聞いてないが。
祭りなら面白そうだ。
行ってみたい。
ウチの地元では出店が出る祭があった。
女性は浴衣を着て歩く姿が妙に大人っぽく感じたものです。
シュナリも浴衣を着せてみせたいけど、きっと似合うだろうことは想像しただけでも、楽しくなります。
この世界に浴衣があるのかは、わからないですが。
「面白そうだな。行ってみるか」
「ワクワクします」
シュナリも楽しそうに言う。
ワクワクするとしっぽも機嫌が良い。
少し歩いていくと、人だかりがあり混雑している。
何だろうな。
これだけの人をひきつけるなんて。
よほど凄い見せ物なのかな。
「何か見えるか?」
「いいえ。人が多くて何も見えませんね。悔しいです」
シュナリは背伸びをして見ようとする。
しかし背伸びをしても俺より少し高くなるけど残念でした。
見たいーと、あがいているのもキュートでいいです。
人混みの中に入って行けば見えるだろう。
すると人混みは輪の形になっていた。
輪の中に人が居るようだが。
あれは…。
輪の中に居る者を見るや驚いた。
それは昨日借金をした相手。
商人サイーム。
なぜ…。
「サイームだっ」
「忘れもしませんあの顔」
にらみつけるシュナリ。
嫌いなのねサイームが。
それにボディガードのフォダンまでも。
ここに居るのは不自然です。
闇市に出てる段階でひと目につくのは避けているはずであり、この人だかりに現れるはずがないのである。
しかし目の前には確実にサイームが居る。
「フォダンもいる」
「アイツはもっと嫌い」
よほど嫌われたようだな。
そして気がかりなのはまだあった。
「2人に対して立っている人は…誰だろう」
「防具は立派な物を装備してます」
「名のある冒険者か」
「いいえ。冒険者ではありません」
「どうしてわかる」
そこまで言いきるからには、知ってる人なのかな。
確かに防具は良い物と見た目でわかる程ではあるけど。
俺の防具とは段違い。
高そうな感じしてます。
ちょっと嫌な感じだ。
以前から俺の着ていた服は激安で買った服でバーゲンもよく利用した。
だから高価な服装とは無縁な生活をしていたので、値のはる高価な服装を着た男には嫉妬していた。
だからからか、この男はどうも好きになれないです。
「胸に付けた印。あれは冒険者でも盗賊団でもありません。国王軍の印です。国王軍の方であることは間違いありません。国王軍は冒険者の味方となっていますから、治安維持のためにターヤに集まっだとも考えられますね」
「国王軍…どうしてサイームが」
国王軍が現れた。
初めて拝見する部隊です。
サイームの前に…。
とすると理由は決まっている。
「闇市が国王軍の耳に入ったのでしょう。サイームを捕らえるはずです。サイームがどう出るか見てればわかります」
国王軍なのは確かなのだろう。
たった独りで捕らえるつもりなのか。
相手はサイームとフォダン。
まぁサイームはレベル1なので戦力外だとしても。
フォダンとの勝負になる。
しかしフォダンはレベル20超えしてる、決して弱い相手ではない。
相当な強者といえる。
国王軍を対しても脅える気配はみせないのは、自信の現れでしょうか。
俺の見た感じだといい勝負になりそうだな。
国王軍の騎士はまだ若い。
俺と変わらない17、8才だろう。
まだ見習いの国王軍騎士の感じが否めないな。
フォダンの方が年齢も高く戦闘経験を積んでいるはず。
いくら国王軍とはいえ、勝てる確証などないよな。
「フォダンの方が強そうだ」
「みんなこれを見たくて集まったのでしょう。凄い熱気です」
「俺も見物客として見させてもらうよ」
俺自身も興味深い戦いが予想できる。
どんな展開になるのか。
高レベル者の戦いである、見ておいて損はない。
今後の戦いに活かせるかも。
多くの見物客が見守る輪の中でサイームが笑う。
なぜ…笑う?
「これは国王軍さまですね。へへへ」
「お前、サイームとフォダンだな。俺は国王軍騎士のチュトル。用があって来たんだよ」
「何の用でしょうかチュトル様。私はその様な用があることはありませんが」
「知ってるのだよ。お前が闇市で儲けてるのはな。違法な取り引きで捕えに来た。わざわざ来てやったんだ。おとなしく捕まれよ」
「その様な違法な闇市など知りません」
「本当かな。闇市の情報は得ている。おとなしく捕まった方が身のためだよ。痛いのは嫌いでしょ」
「軍の騎士のお方が、嘘に耳を傾けてはいけませんな」
「知りませんってなら、力づくで連れてくまでになる。いいのかい?」
「力づくとは…それこそ違法逮捕でしょう。それこそ問題ですね。証拠もなく逮捕するなら……フォダンに勝てたら捕まります」
「俺様を捕まえるだと…まだガキのクセしてひよっ子が調子に乗るんじゃねぇ」
そこでフォダンが苛立ってたてついた。
「あらあら、威勢のよい男だ。じゃあいくよ」
チュトルて言う騎士は戦う気だ。
その言葉に合わせて、フォダンが砂を持ったぞ。
砂丸を使うようだな。
「ワイルドハンマー!」
これは…ハンマーが現れたけど、大きい。
デカいハンマーだ。
あんな重そうなのを振れるのかよ。
打撃されたら痛いだろう。
ていうか、即死しますよねコレ。
ハンマーを見ても、チュトルは何もしない。
砂丸は?
武器無しで戦う気か。
そりゃナメ過ぎだろ。
それとも格闘機的な素手で戦うってのなら、あり得なくもない。
強力なナックルで倒すのは武闘家タイプだろうか。
「ふふ。武器無しかテメェ。俺様のワイルドハンマーで一撃であの世に送ってやるぜ!」
フォダンはハンマーを頭上に振り上げる。
マジか。
なんて馬鹿力。
あの重さを食らったら本当に一撃で死ぬぞ。
フォダンが豪快に振り下ろす。
「うりゃああああ!」
ハンマーはチュトルの頭上まで来ている。
まだチュトルは動かないのは、動けない理由でもあるのか。
どうすんだ。
怖くて足がすくんだか?
見動きすら取れないくらいに。
終わったな…。
いくら国王軍の騎士とはいえ、相手の強さが上過ぎたようです。
フォダンは、力だけでなく速さも持ってる。
と思った時にチュトルは何かささやいた。
「ウィードアロー!」
チュトルがようやく砂を手にしたら、砂は回転しだした。
砂は回転していくと、渦を巻くように大きく形を変えていく。
チュトルの周りから大きく広がる。
まるで砂嵐のように勢いよく。
砂嵐はハンマーを振りかざすフォダンを包み込んだ。
「な、何だ。この砂嵐は…ぐわぁ」
砂嵐は激しく回転してフォダンをあっという間に回転させてしまった。
フォダンは砂嵐の中で苦しむ。
ついには我慢できなくなりハンマーを放り投げてしまった。
遠くに飛ばされたハンマーは砂に戻る。
フォダンの姿はもう見えないくらいに砂嵐でかき消された。
砂でこんな技も出来るのかよ。
スゲェー。
砂嵐はさらに勢いを増し、見ている観客も帽子を飛ばされたり、髪の毛を押さえるようにしていなくては、吹き飛ばされそうなくらいであった。
やがて砂嵐は消えていくと、後には切り刻まれた姿のフォダンが倒れていた。




