29話 尻尾
これで話は決着しました。
やっとシュナリが手に戻る。
「シュナリをかえしてくれ。もう話はついただろ…」
「おい…その獣人を渡せ」
サイームがフォダンに言いつけた。
言われた通りにシュナリを呼び寄せる。
「ご主人様…」
「シュナリ…無事でよかった」
俺の胸に飛び込んで抱き合う。
震えている。
きっと怖かったんだよな。
貴族とかに渡されたら不安になるのは当たり前さ。
そうはさせません。
不安にさせてごめん。
「私にそこまでしてくれて、でも来てくれるなんて…」
「当然さ。金は稼げばいい」
「嬉しいです。なんてお礼をしていいか、わからないくらいに。大金ですよね…」
「心配ない。よし、帰ろう」
「はい」
「では、次の月にお会いしましょう。お待ちしておりますから」
サイームは満面の笑みで俺とシュナリを見送る。
闇市で80万で落札し、それを175万で取り引き成功したのだから笑みは絶えないのは当然です。
よくよく考えたら腹は立つ。
それとパンナオ盗賊団の連中には出会えなかったのが、気になる。
仕返しをしたいところ。
それも、今日は無理ですし、シュナリを安心させたいのが優先ですかね。
シュナリが無事に戻ったし、宿に帰るとしよう。
「宿に帰ろうか」
「はい」
「お腹は空いたかい」
「空きましたね…何か食べたいです」
「よし、食べに行こう」
あり金は無くなったので防具屋でパンナオ盗賊団の防具類を売り払いました。
ある程度の金になったので、いいかな。
その足で定食屋に行き、いつもの焼き肉定食を2人分注文します。
迷宮で探索して、その後色々あったおかげでメチャ腹は減ってます。
テーブルに運ばれたと同時に食いついた。
シュナリも同じ。
「美味いか」
「美味いです。助けていただいて、ご飯まで…。こんなにしてもらえるなんて…」
美味しそうに食べてくれて俺も嬉しい。
「金が要ることになったんでな、また明日から迷宮に行くぞ」
「エハロ迷宮は地下2階より下に行きたいです」
「だが盗賊団には要注意だな」
「私が先に階段を降ります。そうすれば人の臭いに気づけます」
パンナオの奴ら…。
またエハロ迷宮にいたら、今度こそこの借りを返してやる。
「そうしよう。やはりシュナリは探索に必要だ」
「だけど…1つ不安が…」
不安になってるのか。
他に何か不安になることといえば。
思いつかないです。
「何だ。言ってみな」
「それは。私の服装が…」
服装…。
そう聞いて俺はハッとなった。
何で今まで気づいてあげないのだ。
シュナリは闇市で薄い素肌が透けそうな服を着させられていた。
そのままずっと同じでした。
そりゃこの服装で迷宮には行けないよね。
着替えないとな。
「ごめん。宿に戻ったら着替えよう。アイテムボックスに盗賊団から奪い取った服がまだあるから」
「そうしてもらえると嬉しいです」
俺的にはこの服装のシュナリも悪くはないけど。
悪くないどころか、とてつもなくエロいです。
迷宮にその服では俺の集中力が魔物から服にいってしまい、とても戦えない。
可愛い過ぎるのも困ったものですよね。
店内には客が何人も居て、シュナリをチラチラと見ていた。
そりゃ見るだろうな。
この顔で下着に近いかっこうをしているのだ。
あまり長く見せたくないので店を出よう。
定食屋を出て宿屋に。
部屋に入りベッドに腰掛ける。
シュナリも座ると心配が消えてホッといた表情に戻っていて安心。
「商人のところにいった時は不安だったろ」
「不安で死にそうでした。どうなるのか先が見えないのは嫌。まだ魔物と戦っている方がいいですね」
戦っている方がいいとは、さすがに人狼族の本能なのかな。
疲れただろうから、早めに寝るとしよう。
「疲れただろ。寝ようか」
「初めての迷宮に行き、楽しめました。明日も迷宮頑張ります。寝ます」
「そうだな」
ベッドに横になろうとしたら、その時シュナリが驚きの行動を。
着ていた服を脱ぎだしたのだった。
上半身は完全に裸に!!
ち、ちょっと、待ってくれ。
どうしたよ、脱がなくてもいいのだよ。
「どうした?」
「ご主人様が宿屋に帰ったら服を着替えろと言いいましたので…」
そう言えば定食屋で言った。
透けそうな服を着替えようと。
それじゃアイテムボックスから、盗賊団の服を取り出そう。
「はい、これに着替えるのだよ」
「着替えてもいいかしら?」
シュナリは堂々と服を脱いで盗賊団の服に着替えだす。
見ているだけで俺の方が恥ずかしくなる。
シュナリの裸を見ていて疲れが吹っ飛んだ感じだ。
また見れて嬉しい。
ジッと見ていていいのだろうか。
見られているのは知ってると思う。
「見ていても…いいのか」
「ご主人様は見たいのですか?」
「み、見たいといえば、見たいな」
本人に直接言われると困ります。
見たいに決まってます。
「では、このまま裸でいたらいいですか」
「そう…して欲しい」
見ていて抑えられなくなる。
胸はプリンのように膨らみプルンと揺れる。
お尻からは尾が生えている。
しっぽを触ってみたい欲求にかられた。
触りたいな。
触っても大丈夫かな。
「尻尾が生えているぞ」
「人狼族は全員生えていますね。私も生まれた時から生えていて邪魔にはなりません」
「触ってみたいな」
「触りたいの?」
「うん」
「…触ってもいいですよ」
えっ!いいのかい。
じゃあ遠慮なく触ります。
むにゅっ…。
毛がフサフサしていて犬の尻尾のようだ。
しかも触られて感じたのか左右に動いた。
「触られてるのが、わかるかい」
「くすぐったいです」
くすぐったいのか。
俺にはわからないです。
尻尾の感覚なんてないですし。
もうちょっとだけ掴んでみる。
ギュッと握った。
「あっ」
シュナリは小さく声を出した。
可愛らしい声で。
どうやら、尻尾は掴むと感じるようだ。
敏感な部分なのかもしれない。
「くすぐったいのか?」
「掴まれると、ちょっと恥ずかしくなりますね」
「それならもっと掴むぞ」
「あっ、ご主人様…」
もう少しだけ強く握ってみたら、面白くなりそうと思った。
そしたらシュナリはビックリしたようで、バランスを崩してしまう。
フラフラと足元が揺らいで倒れそうに。
「あっ、た、倒れま…す」
「!!!」
倒れますと言ってシュナリは何と俺の方に体を傾けて倒れてきた。
俺はとっさにシュナリを守らないとと思って支える。
その時に思いがけない事態になりました。
こ、この感触は…。
ぷにゅぷにゅした感触は…まさか!
そのまさか!であった。
俺はベッドに倒れた。
シュナリもまた、倒れ俺の上に重なってしまう。
そうなると…どうなるかというと…。
「ご、ご主人様…大丈夫ですか…」
「大丈夫だ。まったく問題ない」
「今すぐに、起き上がりますから」
「い、いや…あせらなくていいぞ。俺なら構わない。そのままでいい」
せっかく密着できたのだ。
もう少しこうしていたい。
偶然とはいえ、ラッキー。
何という胸の感触。
胸のマシュマロのようです。
「ですが…この体勢だとご主人様が苦しくなる」
「苦しいことは苦しい。しかし楽しい」
「苦しい、楽しい…のですか」
「そうだ。もっとこうしていてくれ」
「こんな体勢でいいの?」
「いいんです」
「はい。ご主人様が楽しいと言うのならこの体勢でいます」
ありがとう。
本当に楽しいぞ。
商人サイームから救ったのは正解でした。
どんなに借金を抱えてもこの楽しさになら、我慢できるな。
俺はそのままベッドでシュナリと朝を過ごした。




