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28話 商人サイーム

 落札が決まった。

 落札した者がどんな奴なのか知りたい。

 様子を見ていると、シュナリはある男の方に連れていかれた。

 その男は太った男で宝石を指と腕、首にしている。

 いかにも金の臭いがする野郎だ。

 見ているだけで吐き気がしそうになります。

 そいつはシュナリを見ると満足そうな笑みを作る。

 その笑みを見て、気分が悪くなりました。

 それだけでなく怒りが込み上げてもくる。

 男はシュナリを連れて歩き出した。

 大勢の中を抜けて階段へと。

 どうやら階段を上がり闇市を出るようだな。

 俺も後をつけるようにして階段へと向かう。

 盗賊団のパンナオは見つけられなかったが、今はシュナリの方が大事ですから。

 司会役はまだ続けていたので、闇市は終わりではなく続いています。

 終わるのを待つよりもシュナリを見失ったら大変であり、闇市を出ることに。



 暗い夜道。

 闇市を開催している家屋から出た男はシュナリを連れていた。

 しかももう1人男が横にいる。

 先程までは居なかった男です。

 誰かは暗いのでわからないが。

 きっと家屋の前で待っていたのだ。

 そう考えたら落札者のボディガード役だろうか。

 体付きもいいので間違いないな。

 落札金額をポンと出せる金持ちなのだから、ボディガードの1人くらいは雇えますもんね。

 どこまで行くのか。

 ずいぶんと歩いてますよ。

 俺には選択肢は1つ。

 この男からシュナリを強引にでも取り戻すこと。

 場合によっては、瞬殺もあり得る。

 盗賊団以外には剣を振るいたくはないけど、最悪には仕方ないよな。

 しかし話し合いの余地もあるにはある。

 バジリスクはなるべく見せたくないので、まずは話し合いに持ち込むべきかな。

 歩く速度が止まり、ある家屋に入って行った。

 ここが男の家なのだろうか。

 窓から中を覗いて見た。

 シュナリは椅子に腰掛けている。

 落札者とボディガードも一緒に。

 手には武器は持ってはいない。

 俺も武器は持たないで行こう。

 剣を持って行けば、相手を刺激してしまうし。

 入るしかない。

 扉から男の家に入ります。

 すぐにボディガードが俺の存在に気付いたようだ。


「誰だお前?」


「待ってくれ。俺は怪しい者ではない」


「十分に怪しいがな…」


 落札者は疑いの目で俺を見る。

 ウインドウから落札者を調べる。

 

 サイーム 

 冒険者レベル1

 

 レベル1とあるので戦いの経験はないと見ていい。

 ボディガードはどうだ。


 フォダン 

 冒険者レベル20


 コイツは強そうだな。

 いくらで雇われているのだろう。

 けっこういい給料もらってるっぽい。

 シュナリも俺の姿を見ると。


「ご、ご主人様?」


 どうしてここに?という言い方で。


「ご主人様だと…。何のことかな説明してくれ」


 説明しろと落札者は俺に命令口調で言い放つ。

 お前の方こそ先に名前を言えと言いたかったが、我慢して説明することに。

 シュナリが俺のものだという説明をした。

 獣屋から購入したことも伝えた。

 そして盗賊団に襲われ、闇市に競売されたとも。

 俺はあるがままに説明した。

 すると男は首を縦に揺らして言った。


「私はサイーム。盗賊団に襲われたのはお気の毒です。それは酷い話です。本当ならあなたにお返しをしたい。しかしですね、私は商人なのでね、商売でやってるのですよ、闇市だって危険を承知で足を運んでる。このまま引き渡すわけにはいかないなぁ。わかるだろ私の言ってることが…」


 話し合いで理由を言えば素直に引き渡すのは無理でした。

 まぁそう簡単にはいかないか。

 他には引き渡す方法を考えた。

 何度も思考したけど、やはり金かな。


「金で取り引き…ですか」


「察しがいい」


 商人て、あくどいのね。

 80万で落札したのは事実。

 その金額よりも下回ることは絶対にない。

 予想では100万てとこか。

 俺が獣屋に支払った金額と同じだが。

 まずはもう少し低めで言ってみます。


「90万でどうだ」


 もちろん今の所持金はそこまでないのを承知で言ってみる。

 商人なのだから、何回かの分割払いくらいしてくれると思って。


「あっはっは。私を馬鹿にしてるのかな。そんな金額では取り引きはしない。もっと勉強してこいっ」


 サイームは急に高笑いして俺の金額を無効にした。

 じゃあ、いくらだよ。

 お前の方から金額を言ってみろ。

 おれか笑ってやるからよ。


「それなら金額を言ってみろ」


「180万だ。これ以上は低くしないぞ。なにせ貴族の方にならもっと高値で買い取るのだからな」

        

「!!」


 俺は金額を聞いて笑うことさえできなかった。

 そりゃ、ボッタクリだろ。

 ひでぇ商売しやがる。

 俺が冒険者で、そこまでなら支払えると見定めた結果の数字かな。

 人を見る鑑定能力は商人だけに俺よりもたけてる。

 実際に分割払いなら、迷宮で稼いで絶対に支払えない金額ではない。

 無理してでも支払うだろう。

 ちくしょー。

 完全にサイームのペースだよな。

 もう少し低めに話を持ちかけてみよう。


「150万ならギリギリ支払う。それより上は無理」


 30万低く目に提案してみる。

 相手がどこまで下げれるのか知りたい。


「そうですか…なら、この話は無かったことにしましょう。どうぞお帰り下さい」


 あっさりと却下されました。

 帰るわけにはいかない。

 ちょっと下げ過ぎたかな。

 かけ引きとかしたことないので、思うようにいきませんでした。

 もう少し上げてみる。


「待ってくれ。170万ならどう」


「……そうですね。175万で手を打ちましょう。今、支払えるのでしょうか」


 175万か…。

 たったの5万だけかよ。

 ホントケチ臭いな。

 俺が商売下手なのは、ハッキリとした。

 さすがに部屋に居るのが好きなので、交渉ごとは苦手でした。

 商人には向いていないのね。

 問題は…分割払いに応じてくれるかだな。


「今は手元にはない。分割払いにできますか」


「…分割払いなら、この場で5万は支払って下さい。あとの残りは分割払いにしましょう。月々の支払い金額は5万トパーズに。支払えますか」


 5万なら今日迷宮で稼いでいた分で足りるだろうか。

 アイテムボックスから出した。


「これで…」


「これでは足りませんよ」


 クソッ。

 足りねえかよ。

 それなら…盗賊団を瞬殺した際に奪い取っておいた防具やアクセサリーなら少しは金に。

 アイテムボックスからアクセサリーを出して。


「これで足りるだろ」


「よろしい、前金の5万とみなしましょう。残りは毎月支払ってもらいます。必ず来て下さい。さもなくばコチラから取り立てに行きます。逃げても無駄です。どこまでも商人のネットワークは広い。すぐにわかりますから」


 逃げても無駄か。

 確かに逃げる手もあったかな。

 でも面倒になりそうだな。

 仕方なくこの家に毎月通うようだ。

 まさかゲーム世界に来て借金を抱えることになるとは…。

 シュナリの為ならどんな苦でも、苦ではないと思いたい。

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