27話 闇市
闇市てのは話の流れからオークションだと思っていいかな。
売りたい者と買いたい者とがいて、初めて成り立つ場のこと。
盗賊団が売るのはわかる。
買うのは誰かです。
獣屋も居るのかもな。
あれだけの獣人を扱うくらいだ。
闇市にいる可能性は高い。
表通りから奥に入ったとこに獣屋の店を構えているのも納得がいきます。
俺も行くのに気が引けたから。
ミートから教えてもらった場所は、やはり人の寄り付かない通りでした。
行ったことのない方向である。
なるべく見られたくないので、周りを気にしつつ向かう。
歩くたびに、人の数は減っていった。
完全に歩く人は居なくなると、淋しい廃墟ばかりが並ぶ通りに出くわした。
ここだよな。
そこは確かに人も寄り付かない建物。
中の明かりもついてないので暗い。
誰もいなくねえ?
闇市とはいえ、本当に行われるのか不安になる。
扉があるので入ってみます。
音を立てずに、扉をそっと開いた。
思っていた通り暗くて誰もいない。
むしろ幽霊が出るんじやないかしら。
俺はこういうお化け屋敷的な物は苦手なんだよな。
昔からダメでした。
お化け屋敷好きな人なんて理解できません。
奥に行くと部屋がある。
中にはやはり人どころかネズミ1匹いない。
もっと奥がありそうだが、罠も考えておく。
無駄だったか。
ミートが俺を騙したとか。
それは考えにくい。
騙してミートが特になるわけではないし。
かといって、他には行くあてもないです。
引き返すより、奥に進もう。
家屋は広く、いくつも部屋があった。
進んで行くうちに、人の声らしき物を感じた。
誰かな。
声の方向に進んでみると、明らかに人の声だった。
それは下の階から聞こえたように思えた。
下があるのかな…。
辺りを見渡すと真っ暗であるが、ほんの少し明かりが見える。
これは…。
その明かりの元に行くとフタの仕組みになっていて開けられるようです。
よし開けてみよう。
簡単に開けられた。
見ると、下に行ける階段が現れた。
この下で行われてるに違いないね。
ずいぶんと手がこんでやがるな。
まぁ無理もない。
国王軍から禁止されてるのだから、見つかれば痛い目にあうのだろう。
違法賭博で警察に逮捕されるようなものかな。
俺もうかうかしてられない。
早いとこパンナオを見つけ出した方がよさそうだ。
下には広い部屋があり、かなりの人で混み合っていた。
すでに闇市は開催されていて、声があがっている。
「50万」
「50万500」
次々と声が聞こえた。
競い合う人の熱気。
少しでも安く買いたいと値段は釣り上がっているようです。
司会役の者が何か持ってるのが見えた。
あの品が競われてる物だ。
全員が競売品に注目していて、俺が部屋に入ってきたのは誰も気にもしていない。
その方が好都合である。
今はシュナリの番ではないです。
これからなのか、もう終わったのかわからない。
知りようもないけど、まだであって欲しい。
どうやら購入者が決まったようで男が納得し手を叩いている。
落札って感じだな。
みんな金を持ってそう。
服装もやや派手に見えるし。
司会役が次の競売品を持ってきた。
「次の品はこちら。天使の首飾りです」
スタートしたと同時に声があり、金額は増えていく。
恐ろしいな。
シュナリが登場してこの勢いで増えていかれたら、たまったものじゃないです。
金額は止まらずに増えていく。
場違いなとこに来たって感じだな。
ようやく金額は決まったようだった。
どうしよう…。
このままここに居て闇市を見物してても、問題は解決しないよ。
司会役は後方の部屋から競売品を持ってきていた。
そう考えると司会役の後ろには控え室があって、そこに物や人が順番待ちしているのでは。
シュナリもそこに居て待機している可能性がある。
パンナオもここには見当たらないところをみるとシュナリと一緒にいるのだろう。
それがわかったのなら、今すぐに控え室に向かいたい気持ちが湧いた。
この人だかりに紛れて、何とか控え室にはいれないのかな。
入り口は司会役の後ろにしか無いようですね。
とすると、この入り口へ向かうのは難しい。
すぐに誰かしらに見つかる。
お前、どこに行く気だと。
ここに居るしかないなんて…。
俺は何のためにここまで来たんだよ。
グズグズしていると司会役は控え室に向かっていた。
そして再びこちらに登場すると、俺は目を見開いて驚いた。
シュナリだったからだ!
「シュナリ……」
それも俺といた時とは、だいぶ違う姿で。
俺の知ってるシュナリは皮でできた防具を身に着けていた。
しかし闇市で競売品となったシュナリは、今にも脱げてしまいそうな薄での服1枚の状態で現れた。
観客や商人はドッと歓声をあげた。
俺の声など聞こえるはずもない。
シュナリは恥ずかしそうに前に来て立ち止まる。
これから始まるのか。
誰にも買われたくない。
しかし俺には落札するだけの金は…。
入札が始まる。
金額は俺の予想より高い。
始まっちゃった。
「60万」
「60万1000」
次々と声があがる。
前の品よりも人気があるのは、俺にもわかります。
止めたい。
この入札を中止させたい。
1番いい方法は俺が落札する。
でもそれだけの金はない今、無理です。
他には方法がある。
ここに居る者をバジリスクで全員瞬殺してしまう。
いやいや…さすがにこの選択肢は無いよね。
盗賊団なら殺したっていい。
でも無関係な人を殺めるのは、無理です。
こうしてる間にも金額はあがり、シュナリを不安にさせている。
悪い…シュナリ。
俺にはここからお前を救えない。
申し訳ない。
許してくれ。
シュナリの見えない所から、謝るようにつぶやいた。
しばらくして歓声が聞こえた。
司会役が落札金額を言った。
「この獣人の落札金額は80万です」
80万かよ。
俺が獣屋に支払ったのが100万だ。
このくらいの金額の価値はあるてことだろう。
シュナリは不安からか酷く怯えているように思えた。
待ってろよな。
必ず俺が救いに行くから。
それまで待っていてくれ。
俺はシュナリを取り戻す決意をした。




