26話 パンナオの居場所
エハロ迷宮の入り口へと到着した。
外に出るとまだ日はあり、夕日に差し掛かっていた。
ターヤの町に帰るには騎竜がいる。
来る時に乗ってきた騎竜です。
夕日が落ちるまで待つと言っていたけど、待っててくれているのか心配。
居なければ、文句を言ってやろう。
果たしているかな。
入り口付近をグルッと探すと3匹の騎竜はしっかりと待っててくれてました。
よかった、感謝します。
「おい、ターヤまで頼む」
「あれれ、お嬢さんは?」
「俺…独りだ。急げっ」
「はいっ!」
魔物使いは大急ぎで準備しだす。
そこで盗賊団の連中が飲んでいた飲み物を騎竜に飲ませた。
騎竜はのどがカラカラに乾いていると思って。
ごくごくと飲み干してしまった。
これで少しでも速くターヤに帰れればいい。
俺ものどが乾いているけど、我慢します。
騎竜を優先させました。
魔物使いは俺に言われると慌てて騎竜に乗り手綱を引いた。
「行きますっ」
騎竜は勢いよく走り出した。
頼むぜ、騎竜ちゃん。
全速力で行ってくれよな。
走り出すと速い。
何度も落っこちそうになった。
ターヤに帰る途中に夕日は落ちていった。
「もっと速く行けっ」
「これが全速力ですぜ」
魔物使いにゲキを飛ばす。
1秒でも速く着きたいから。
しばらく走り、ターヤに着いた。
もう日は暮れていて暗くなりつつあった。
騎竜は疲れたようで、舌を出して息を荒げていてお礼を言っておきます。
「ありがとう」
ターヤに着いたはいいが問題はパンナオの盗賊団が、どこにいるのかということ。
住まいなど知ってるわけないし。
ヒゲを生やしている人なんて大勢いる。
わかってる情報からは闇市でシュナリを売買するとか言っていた。
となれば闇市に行けばパンナオは居る。
闇市について、誰にきいたら教えてくれますかね。
なぜかききにくいよな。
いけない事をしてるみたいで。
いつ、どこで開催するのですか…なんて。
そうはいっても、俺にも心当たりは全然無い。
町の人にきいてみる以外はなさそう。
ちょうど通りすがりの女の人がいた。
「あのー…パンナオって人で…こんなヒゲを生やしていてて、いかにも俺は強いぞってのを知りませんか?」
「ごめんなさい。知りません」
女の人は首を振って知らないと…。
いきなり知りませんかと尋ねて知ってるわけないですよね。
きくだけ時間の無駄なのかな。
「そうですか…」
「冒険者なら…迷宮屋にならお知り合いがいるんじやないかしら…」
「迷宮屋か…行ってみます」
迷宮屋になら他の冒険者もいるし、情報を収集できるかもな。
盗賊団の情報も教えてくれときけば、迷宮の攻略に邪魔な存在の盗賊団の情報を知らせるだろう。
迷宮屋の後ろにいる国王も同じのはずだしな。
盗賊団は迷宮攻略よりも魔石や金にしか興味無い。
まさに冒険者の足を引っ張るだけ。
最初に迷宮屋に行ってみよう。
手がかりがあるといいが。
迷宮屋にたどり着くと、店内には冒険者が数人椅子に座っていました。
これといって変化はない。
同じ光景。
カウンターに行くと、お姉さんは会釈してくれます。
「パンナオつていう盗賊団について知りたいのです」
周りを意識して、少し小さな声できいてみた。
「パンナオ盗賊団のことでいいですか。以前から冒険者を何人も殺して評判の悪い盗賊団です。このターヤにも出没してる噂はあります。ですが、現在どこに居るかはわかりませんね。国王軍からも追われてる身ですから、表を歩いてはいないでしょう」
国王軍から追われてるのか。
よっぽど悪い奴らなのだな。
4人も殺してしまい罪悪感がかなりひどくて辛かった。
追われてる身なら気にする事は無いよね。
この際、忘れていこう。
むしろ町の人からも感謝されてもいいくらいだな。
場合によっては残りの者も殺したっていいくらいか。
「どうしても居どこをしりたいのです。エハロ迷宮で仲間を連れ去られて…」
「あら、それは大変です。今後はエハロ迷宮に行く冒険者にお知らせします。しばらくは進さんも近づかないで下さい」
もっと早く教えてくれー。
今となっては遅いのです。
迷宮屋でも居どこまではわからないよぅだ。
本人も知られない所に隠れているに違いない。
これは、探すとしたら大変になったな。
ターヤの町も大勢の人が暮らしている。
この中に潜んでいたら、わかりゃしない。
ヒゲをした男なんてヒントにもならないよ。
でも、シュナリのことは諦めたくない思いにかられて、もっと町中を探すと決めた。
お姉さんにはお礼を言っておく。
「ありがとう。探してみます」
「見つかるといいですね」
優しく声をかけてもらうと、カウンターから離れた。
そして店を出ようとした時に俺の名前を言う者が。
「進……」
俺はその声に聞き覚えがあった。
振り返ると声の持ち主はミート。
エハロ迷宮で出会った冒険者。
彼も迷宮から帰っていたようだ。
「ミートさんか。もうエハロ迷宮から帰ってたのですか」
「ああ、結局は1階で経験値をあげるに終わったがな。ここに座りなよ」
ミートは座っている席の向かいに俺を呼び寄せた。
何で俺を席に座られるのかと疑うも、もしやパンナオについて知ってるのかと思い座ることに。
何でもいい。
知ってることなら何でも教えて欲しい。
「今の会話を聞いていたよ。進の言う連れ去られたのは一緒にいた獣人だよな」
「そうですね。パンナオについて知ってるのですか」
「まさか、悪いが俺が知るわけないよ。気の毒だと思う。俺が逆に襲われていてもおかしくなかったのだし。パンナオは冒険者の間では知られた盗賊団でな、冒険者を襲撃しては金を奪い、金品を売って儲ける酷い奴さ。これは進には言いにくいことなんだが…」
ミートは周りを気にするようにして俺を見る。
言いにくそうなのは、おおっぴらに言えない内容の話と理解した。
それでもシュナリの居場所の手がかりになるなら知りたい。
どんな内容でも。
「教えてくれ。知りたい」
「ここだけの話なのだが…盗賊団は冒険者から奪うのは何も物だけではない。獣人も奪い去る。進の獣人のように。そして獣人を売買する闇市がある。闇市では1番高い値をつけた者が買い取る仕組みだ。恐らくはパンナオは闇市に出すはずだ」
闇市か…。
殺した盗賊団の奴らも言っていた。
間違いない。
パンナオは闇市に出る。
そこに行けば出会うチャンスはある。
シュナリも居るはずだ。
「闇市はいつ、どこで開催するのだい?」
「…今日だ。俺は参加しないが今日だと聞いている。もちろん国王軍が禁止しているので非公式だがな。もし行くなら場所を教えてやる」
「お願いします」
「気をつけな。どんな奴らがいるかわからない。他にも盗賊団が参加してるだろう」
「ありがとう」
ミートに闇市の開催地の詳細を教えてもらい迷宮屋を出る。
早足で闇市に向かいます。




