25話 縛られてしまった
頭がもうろうとしている。
視界はボヤケてよく見えない。
生きてるのか俺は。
大丈夫、生きてます。
当然に殺されていると思ってた。
生かされてるのか…まぁ同じようなものだ。
そこに話し声が聞こえた。
「もうあの女はターヤに連れていかれてるころだな」
「いい女だったな。闇市では相当な高値で売れるだろうよ」
シュナリのことか。
話の流れからシュナリと断定していいだろう。
そして闇市…。
売れるといっていたのでオークションのような場で売り買いが行われると推測できる。
このままでは、またどこかの獣屋か金持ちの手に渡ってしまう。
クソッ。
俺は歯がゆくなって立ち上がろうとした。
だが予想通りに縄でくくられていて、ピクリとも動きません。
俺の今居る部屋はどこだろう。
この砂に覆われているところを見ると、まだエハロ迷宮内だな。
つまり俺は迷宮にまだ居て、シュナリは迷宮から出されて町に行ってしまった。
そう考えていい。
そっと部屋の内部を探ってみる。
部屋には盗賊団が4人。
4人いますね。
リーダーのパンナオの姿はないな。
シュナリと一緒にターヤに行ったのか。
俺をどうする気だ。
それが問題なのです。
盗賊団の1人が近づいて来た。
手には短剣。
それで刺す気かよ。
「おい、起きろ!」
「グッ…」
痛みが走る。
背中を蹴り飛ばしやがった。
蹴りで助かった。
短剣よりは増しですから。
それでも痛いけど。
「起きたか…お前にはまだ用がある。アイテムボックスを開け。持っている物を全て出せ」
アイテムボックス内の物は盗めないてわけか。
本人にしか取り出せない。
それで生かしていた理由がわかった。
アイテムボックスには魔石はかなりある。
魔物を狩った戦利品だから。
砂丸摩書が1つ。
回復薬が複数残っている。
これらは売却して金になりそうだな。
メモ帳。
こんなのはゴミだろう。
残りは指輪。
確か、ムライ迷宮でガイルを瞬殺した際に指にしていた物。
高価なら売れる。
どうせ渡しても渡さなくても結果は死んじやぅ。
別にアイテムボックスから出す必要があるかな。
全部素直に出せば楽に殺す。
出すのをためらえば、拷問をして殺すとも考えた。
それならアイテムボックスから全部渡した方がいいか。
俺は男に縄を取るように言う。
「縄を取ってくれ。アイテムボックスから出すから」
「それもそうだな。でも下手なことをすればあそこの3人も居るのだ。わかってるな」
「出します」
男は俺を警戒してるのか、忠告してきた。
忠告されても俺には歯向かう力はないのに。
残りの3人は砂の上に座っている。
何か飲み物を飲んでるようだ。
余裕だよな。
俺が殺されるのを楽しみに待っている感じか。
よく見ると、憎たらしい顔をしてやがる。
「全部だぞ」
「これで全部です…」
「おお!なかなかに魔石を持ってるぞ。金になるな。パンナオも喜ぶな。他には…」
アイテムボックスの物を全て出した。
まだ指輪だけ残して。
この指輪を使って逆転する秘策はあるのか考えた。
見ると高値がつきそうな品物。
盗賊団なら高価な指輪に反応するのでは。
しないわけないですよね。
盗賊団なのだから、金は大好物と断言できる。
そこである秘策が思いついた。
その内容はというと。
それはこの指輪に注意が向いた瞬間に短剣を取り上げる。
油断したスキに。
短剣でこの男を刺し殺す。
その後に男から砂丸腕輪を取り、俺の手首にはめる。
アイテムボックスから出した摩書からバジリスクを呼び出す。
ここまで出来ればいい。
しかし残りの3人も黙ってないでしょ。
俺の行動を見て襲いかかるのは必然である。
バジリスクを呼び出すのと襲いかかるのとで、どちらが速いのかが勝負になるな。
やれるか…。
このまま殺されるのなら、やってやる。
そう決断した俺は指輪を手に持つと地面の砂に転がした。
「ん…これは…指輪か!!」
思った通りに反応した。
わかりやすい野郎だ。
男は完全に俺から視線を指輪に向けている。
指輪が転がった方に。
「指輪まで持ってやがったぜ。見てみろっ」
男は俺に後ろを向けた。
そして仲間に指輪を見せるように頭上にかかげた。
この瞬間を俺は待っていた。
座ってる連中が俺の作戦に気づいたようだった。
「おい、油断するな!」
「……」
もう遅いです。
短剣は貰いましたので。
後ろを向いた時に短剣を抜き取った。
そして男の背中に短剣を突き刺した。
「ぐわぁっ!!」
男はたまらず倒れた。
ここまでは出来た。
次は砂丸腕輪。
男から腕輪を取り俺の手首に装着した。
砂丸が手に入りました。
摩書を開き最終ページを開く。
バジリスクを呼び出す。
だが思っていたよりも仲間の連中は向かって来た。
間に合うか!
「てめぇ。よくも殺りやがったな」
3人がいっせいに突っ込んで来る。
手には大剣が2本と槍が。
地面の砂に手をやりバジリスクを。
「バジリスク!」
「死ねーー」
俺のすぐ目前まで大剣と槍は迫っていた。
ほぼ同時にバジリスクは硬化した。
その時に3人の連中に異変が起きた。
まるで時が止まったようにスローに。
錯覚かな。
止まった武器に当たる事は無い。
俺はバジリスクを真横に振り抜いた。
「……」
3人を瞬殺に成功。
あぶねー。
間一髪だったぜ。
4人を殺す策は結果、成功と言えよう。
一瞬の出来事。
恐らくは俺に斬られたのを認識する間もなく死んだ。
死んだことに気付いてないだろう。
死んだ顔には痛みが感じられないので。
バジリスクには相手の動きが止まって見える効果があるのか?
確かに止まって見えた。
ガイルとの戦いでも同じ。
今後は検証してみたい。
砂に出した魔石らをアイテムボックスにしまう。
もちろん男の手から指輪も。
指輪に救われたかっこうになり、ガイルにお礼をしたい。
ガイルさんありがとう。
この部屋を出るとフロアに。
地下2階だろうか。
エハロ迷宮であることは間違いなさそう。
バジリスクを消しておこう。
この後も使用する可能性もあるので
魔力を温存した。
後は、やることは1つ。
シュナリのもとへ急ぐ。
場所はターヤと連中が言っていた。
パンナオとシュナリは居るはずだ。
俺は走って階段を探した。
待っててくれシュナリ。
今行くからな…。
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