24話 盗賊団
ダイヤルを回そうとした時に新しい問題に直面した。
左右にどれだけ回せばいいのかということで、直感で回すしか思いつかない。
とりあえず1回転させてみるか。
結果がどうなるか、わからないが回してみた。
致命傷的なトラップは止めてくれよ。
お祈りしながら回すと。
特に反応は無し。
「何も起こらないな」
「何度か試してみたらどうでしょう」
「その必要があるな」
ちょっと緊張しながらトライしてみた。
しかし回しても結果は目に見える物は得られない。
情報が足りません。
きっと迷宮の謎と関係してる。
でも無限に近い解答を探しているのかも。
イタズラに時間だけが過ぎてます。
イライラする。
俺は性格的にこの手の物が苦手。
ぶっ壊したくなる。
さすがにぶっ壊すのは、控えますが。
心配そうに様子を見るシュナリ。
首を傾けて悩んでいる。
シュナリなりに謎を考えてくれてるようだ。
わからないようで、困った顔もキュートです。
おかげで、見ていて俺のイライラは減少した。
シュナリは癒し系なのだけど、本人はその事に気付いてない。
「ご主人様。変化はありませんね」
「そのようだな。どうするか、他に回せそうなものなど見当たらないしな。俺の読み違いだったようだ」
「ダイヤルがダメなら私のここは回してみたらどうでしょうか」
シュナリはなんと自らの鼻を指定してきた。
鼻がそもそも回る物なのかと不思議に思った。
「鼻を回してみていいのかい」
「回るかな」
「試してみよう」
軽く鼻にぶれてみてフニャッとした感触であった。
ゆっくりと右に回してみた。
「う〜ん、何か変化はありますか」
「いや何も起こらない。もう少し回してみるぞ」
「う〜ん。痛いです。それ以上は回すと壊れちゃいそうです」
「それは不味い。ここで止めておこう。優しく回したと思ってたけど加減が難しいものだな」
「優しくするのは難しいようです。ご主人様は手先が繊細なのが特技ですが、鼻は別のようです」
「俺が手先が特技って、勝手に決めるな!」
「これは言えます確実に。ご主人様の手先は本物です」
「何が本物だ。そんなことを人前で絶対に言ってはダメだぞ!」
「言いません。ご主人様の手先が本物だなんて言いません」
「もういい、黙ってくれ!」
恥ずかしいだろ。
こんなのを他人に聞かれたら最悪である。
「調子に乗りました。ダイヤルは後で関係してくるとすれば、今はまだ先に行くのはどうでしょう」
「ここで時間を使い続けるのは損だな。先へ行こう」
「異変があったら教えます」
「頼む」
シュナリの視力は俺よりも上。
俺の視力は決して悪い方ではなくて、視力検査でも評価はまぁまぁだ。
ただシュナリが異常なほどに良いのである。
けっこう遠くまでも見通しがきくので、信じられる目を持てた感じです。
魔物も会わなくて進んだ。
そこでシュナリが声を。
「ご主人様。階段らしき物が見えます」
「本当にか」
「はい。このまま真っ直ぐです」
「行ってみよう」
シュナリの言う通り進むと本当に階段を発見した。
俺には全く見えなかったが。
「やっと階段だ」
「あのダイヤルは無視しても大丈夫のようですね」
すかさずマップを出して書き記した。
ここまでの経過時間はどれくらいだろうか。
もう昼をとっくに過ぎているはず。
1階を探索するのに手こずったな。
それともこの位が普通なのか。
地下2階へと降りたとしよう。
2階の探索時間だって1階と同じかそれ以上かかる。
短い時間で探索できるとは考えにくい。
そうなると外には騎竜を待たせてあるので、夕刻の日が落ちるまでに入り口まで戻ることは至難。
このペースでは、3階までは無理だろう。
2階を探索途中でも帰る時を見極める必要があるな。
どこまで行けるかは迷宮しだいか。
階段を降りる手前でこの後の手順を頭で整理した。
「まだ続けられそうか」
一応きいてみる。
「はい。続けられます。体力もまだありますし、楽しみな部分もありますので」
体力があるのはいいこと。
あとは精神的なものが気になっていた。
楽しみなって、ずいぶんと余裕ですね。
でもその言葉が出るなら大丈夫そうだ。
安心しました。
そのまま階段を降りて地下2階へ。
地下2階。
降りると階段のある付近は広いスペースがあった。
油断した。
俺は完全に油断していた。
階段を降りた瞬間に数人に周りを囲まれたのだ。
「動くなっ!」
何者か知らないが1人が俺に対して言ってきた。
その言葉通り、動けば刃物で刺すようで見動きはとれない。
脅されてるのだから敵と判断していい。
何者かのかを知るため、きいてみます。
「誰ですか…あなたがたは」
「ふん、教える必要はない。この男と獣人を捕まえろ」
完全に無視ですか…。
リーダーなのかこいつが…。
即座にサーチを実行。
パンナオ
冒険者レベル18
レベル18かよ。
けっこう高い。
て言うか…今までで1番強いです。
ヒゲを生やしている。
偉そうにしてるのがムカっときた。
仲間は8人…。
ざっとサーチしてみると、全員レベル10以上。
明らかに格上の相手。
俺達をどうする気だ。
イーグルソードを構える余裕はなかった。
いや、イーグルソードを構えても勝てる相手ではなかっただろう。
今ならバジリスクを出すか…。
バジリスクなら瞬殺が可能。
無理か…。
この状況では間に合わないな。
出す前に刺されて死ぬのがオチか。
仕方なくパンナオに従う。
リーダーらしき男は指示するとその仲間が俺とシュナリを縄でぐるぐる巻にした。
参ったな。
待ち伏せか、ちくしょう。
「…シュナリ」
「すみません。下の階層だと臭いがわかりませんでした。不注意でした」
「お前のせいじゃない。気にするな」
シュナリの鼻は下の階層までは届かないようだ。
それをコイツラは知ってたのか。
戦い慣れてるからなのか、それとも俺の経験値が少な過ぎたのか。
いずれにせよ、勝負はついていた。
見のなりは、いかにも悪そうな面構えをしている。
盗賊団だな…。
すぐに理解できます。
それしか考えられないし。
黒死蝶なら厄介ですね。
この場で金品を取り、その後に俺を殺すのかな。
シュナリは商人に売るとして、殺しはしないだろう。
こんなに早く死ぬことになるなんて。
まだこの世界に来て数日。
数日で殺されるとは、最低の異世界生活でした。
抵抗できないほどに縄は強く巻かれた。
もっとレベルを上げて最強の冒険者を目指していたかったのに。
どうせ死ぬならシュナリの裸をもっと見ておけばよかったなぁ。
そんな時に、ゴツン……。
などと諦めムードの俺の後頭部は殴られたようだ。
痛みが来ると同時に倒れて行く。
意識がなくなってしまいそうだ。
俺はいい、たとえ死んでも。
でもシュナリだけは苦しい思いはさせたくない。
酷いことをされなければいいが…。
シュナリ…。
また会いたい…。




