110話
「お、お疲れ様でした」
「まぁこんなもんかな。ちょっとは朝の運動にはなった」
「あれが運動ですか……」
シュナリはかなりのショックを受けていたが、俺はもっとショックだった。
なにしろトカチと戦った経験のあるのは俺なのだ。
今更ながら恐ろしい強さに鳥肌がたった。
よくこの化け物、いや嫁に勝てたな。
レベルは50となっていたが、魔力量が強烈に多いのだ。
魔族の魔力はまた人族と違ったおびただしい魔力であった。
「さぁ騎竜車に戻りましょうか」
「はい……」
なんだかシラケてしまったが、勝てたのだから文句はない。
ていうか、オオトカゲが可哀想になるほどであった。
軍の方の手当てもちょうど終わったようだ。
「手当ての方、ご苦労様」
「怪我は深くはなかったから、大丈夫だと思うな」
軍の方が俺の所に来た。
「進さん、どうもかたじけない。本来なら私達の仕事である魔物を倒してもらい、さらに怪我まで直してもらってお礼をしたいくらいです」
「礼なんて要りませんよ。まぁ俺が倒したのではありませんし……」
「こういっゃなんですが。とんでもない人を嫁にしたのですね。今の戦いは全て見させてもらいました。あんな化け物をよく嫁に……」
「化け物?」
「違う違う、化け物を倒した、ありがとうってさ」
話しがトカチに聞こえたみたいで、即座に訂正した。
会話の内容には気をつけることにした。
軍の人も、不味いことを言ったと反省していた。
さもないと軍の人の命だって保証はない感じだった。
見た目はキュートな女の子なので、婚姻したい男は無数によって来るだろう。
だが普通の男だと婚姻してところで一日持たないだろうことも判明。
俺もこのまま婚姻関係を維持できるのかが、はっきり言って自信がない。
「うん、礼なら別にいいよ。早く出た方がいい。また魔物が集まるとも限らないしな。王都まではあとどれくらいかかる?」
「は、は、はい、明日には着くかと思います」
トカチの質問にビビりながら返答した。
もはや死を覚悟したかのような返答である。
明日には着くようなので、夜は騎竜車で寝泊まりってことか。
意外とかかるものだな。
単独の騎竜と比べると、車が付いてる分重くなり速度も遅くなるようだ。
これだけの車が付いてれば、騎竜も大変だろうな。
喉も渇くだろうし、あまり無理は言えない。
むしろペースを落としても良いくらいだ。
「俺達なら問題ないので走るペースは任せます。騎竜も疲れたのではないかな?」
「はい、少々疲れと魔物の遭遇で緊張もあったので休ませたい。少し走ったら一泊する予定ですがよろしいでしょうか」
「構いませんよ一泊。車内だと寝づらいかもな」
座席に座っての状態で寝るような形か。
電車で寝るようなものだと思えばいい。
「それならテントがございます。テントを張って休んで下さい」
「なるほどテントがあるのか。助かります」
テントなら足を伸ばして寝れるので楽になれそうだ。
魔物が生息している地で安眠はないとは思うが。
話しが終わり騎竜車を出発させた。
外は日が落ちかかっていた。
チユは回復魔法の浪費でお疲れのようだ。
「回復魔法を使うと疲れはあるみたいだな。魔法は使用すると魔力が減るのだから疲れを伴うよな」
「そうよ、三人の傷の回復に魔法を費やしたのよ。魔力はかなり使ったわね。私の魔力量だと限界に近いかも。もう魔物と戦うのは避けて欲しい。あっ…でもトカチが居るから問題ないか」
「魔力量は回復するのは時間がかかるよな。俺の場合はバジリスクを使用したケースだと回復に一泊する必要がある。使用後は疲労感がハンパないんだ。グッタリしてしまう」
「私も時間経てば魔力は元に戻るよ。もちろん一泊すれば戻るし、もっと早く回復するかな。私の魔力量の上限が少ないのもある。進の上限値がどれほどなのか知らないけど、多ければそれだけ時間がかかるわね」
やはり俺の場合は特殊なのだろう。
特殊なだけに最強だとも言える。
あらゆる武器の中で最強種に属するバジリスク。
この世界で最強のクラスに俺は位置していると考えていいだろうな。
魔力量は教えてないがチユの数値とはケタが違うので、言わないでおこう。