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107話

 揺れの影響をモロに受けたのがシュナリであった。

 ただひとり立っていたからである。

 

「た、た、助けて!」


 左右に体を揺らされ不安定になる。

 見ていて危なっかしいと思うも、俺自身も揺れてしまうからシュナリをかばう余裕がない。

 するとどうなったか。

 シュナリは体のバランスを無くしてしまった。


「ああーーー!!」


 無くしたら当然なことに倒れるのが人であろう。

 しかも倒れる方向にあったのは、俺の席。

 つまり俺に体を預けるように倒れてきたのだ。


「!!!」


 もちろん俺は倒れてきたシュナリを支える義務がある。

 とっさに両手を差し伸べた。

 

「……」


 よし、支えるなは成功した。

 怪我はないと思う。

 しっかりと俺の両手の手の平で支える感触はあるからだ。

 あんまり大声を出さないように、叱りつけなきゃな。

 支えきって安心しきっていたのが、少したち妙なことになっていた。

 

「ご、ご主人様。あんまり強くされると……」


「えっ!!!」


 俺の掴んた両手の中にはシュナリの胸がすっぽりと入っていた。

 しかも全体重を支えているのだから掴む力は自ずと強くならざるを得ない。

 その為、俺は胸を鷲掴みしていた。

 気持ちいいなこれ、て言ってる場合ではなかった。


「ごめんごめん」


 胸から離してまた席に座らせた。

 それを見たトカチが今度は言いたくなったようだ。


「シュナリさん、あなた今わざと進な方に倒れたでしょ?」


「いいえ、そんなわけない。ご主人様がたまたま居たのよ」


「そうかしら、私と進君の仲を引き離したくて、倒れたように見えましたけど」


 トカチは今の一件をシュナリの演技だと主張する。

 俺には演技には見えなかったがトカチは苛立っているようだ。

 

「演技なんて汚いまねできませんし、必要もないですから」


 対するシュナリはというと、きぜんとした態度で答えた。

 演技などしなくてもトカチには負けないとばかりに聞こえた。

 シュナリも気が強い。

 トカチ相手に一歩も引く気配はない。


「なら聞きますが、進君に胸を掴まれて普通なら嫌がるはずです。しかしその時の顔は嬉しそうな顔でした。なぜかしら?」


「えっ……」


 返事に詰まるシュナリはみるみる間に顔は赤く変わった。

 余裕があったのはなんだったんだろうか。

 

「あなたは本当は進君に抱かれたい。違う?」


「なっ!! 何を言い出すの。私はご主人様の下僕なだけですわ。それに冒険者パーティーの仲間。だ、抱かれたいだなんてそんな淫らな考えはありませんから!」


「あら、じゃあ何でお顔が真っ赤に変わってるの?」


「……そ、それはその……」


 返事に困った様子が露呈してしまった。

 最初にトカチに言い出したのはシュナリではあったが、その言い出したのが最終的にはシュナリ本人に倍返しのごとくはね返ってきたのだ。

 自ら招いたピンチにたじろぐしかない。


「トマトのように真っ赤になったぞ! あはは」


「うるさい!!」


 トマトみたいと馬鹿にしたのはチユであった。

 真っ赤になったシュナリを見るや笑い声を出した。

 だがこうなるキッカケはチユの余計な一言であったのを俺は忘れてない。

 シュナリに言われてチユは反省するだろう。


「シュナリの方こそご主人様ご主人様ってうるさいの!」


 チユは立ち上がり言った。

 予想とは違い、反省するどころか逆に反抗的な態度に出てきたのだった。

 俺はこの時に脳内で警告音が発生した。

 その直後だった。

 騎竜車がまたもぐらぐらと揺れた。

 チユが立って声を出したので、驚いたのだ。

 俺は座っているので耐えられたが、立っているチユは足元がふらふらとしだした。

 車内は手で掴めるような取っ手はない。

 

「あわわわわ!」


「おい大丈夫かよ」


「大丈夫じゃない!!!」


 チユは慌てて手をバタバタさせて掴む物を探す。

 しかし空中を探るだけでなにも掴めない。

 そうなると、支えがないので倒れるのは時間の問題となる。

 結局チユは車内で倒れてしまった。

 

「……」


 倒れたまではいいが、倒れた先にはトカチが居たのだ。

 そして倒れたままチユは動かないのだが、倒れる間際に掴んでいた。

 何を掴んだのかというと、俺は目が点になる物であった。


「チ、チ、チユ、あなたどこを掴んでんのよ?」


「!!!」


 トカチは座ったままキョトンとしていた。

 ただ、胸がベロンと表に出ていた。

 たわわな胸が見えてしまっているのを俺は見てガン見してしまう。

 チユが掴んだのはトカチの胸にあった衣装だった。


「だ、だって掴めそうな物といったらこれしかなかったのよ。私は悪くない」


 倒れたまま悪くないと弁解するも、まだ手は掴んたままだ。

 謝るより先に、普通なら手を離すだろうが。


「ご主人様の前で、はしたない行為は止めて欲しいものです。脱ぐならひとりの時にしてもらいたい」


 シュナリは俺がトカチの胸を直視してる様を見て、ムッときたようだ。

 だからトカチに早く胸をしまえと言いたかったらしい。


「昨晩はこの胸で楽しんでもらったのよ。ねぇ進君」


「えっ……」


 なんたる事態になっていくのだ。

 この場で暴露することはないだろうに。

 恐る恐るシュナリの方に目線を向けてみたら、どんな顔をしているだろうか考えた。

 笑顔ではないだろうな。

 考えてても仕方ないので、覚悟を決めて見てみた。


「ご主人様……」


 おや、なんで笑顔なの?

 不思議と笑顔を俺に向けてきた。

 しかしその笑顔がヤケに不気味な気がするのだが。


「な、なんだい……」


「楽しんだのですか?」


「楽しんだといえば楽しんで……いや違う話せばわか……」


 シュナリの笑顔は徐々に変化していく。

 額に血管が浮かんで来てますが、もう話せばわかる状況ではなさそうだあった。


「むぅー」


 口を尖らせて怒りたいが我慢している感じになっていた。


「私と進君があなたには許可を取る必要ないわよね。進君の間には正式に婚姻関係があるのよ。怒る必要もないのになぜ怒るのかな。羨ましいのでしょ?」


 トカチは胸をさらけ出したまま言った。

 せめて胸を隠して言うべきだろう。


「な、何を言ってるのよ!! 羨ましいなんてないわ! トカチと一緒だったのを知らなかったから……驚いただけなのよ」


「じゃあこれからも進君と楽しんでいいわよね」


「そ、そ、それは困る……かな」


「困るなら、あなたも脱いでみせなよ。どっちの胸が好きか決めてもらおうじゃない、どう?」


「い、い、いいわ、脱ぐ。ご主人様が望むなら……」


 ち、ちょっと待てて。

 そんな望むならなんてあり得るかよ。

 俺の王都への道のりは、なんだか変な方向へ向かい始めた。

 たどり着けるのか心配になってきた。

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