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Lost Regalia  作者: ☆たか☆
第1部 新たなる希望
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第12話 アルゲネロンの巣②

 一般的な建物のように、2階へと続く階段が3階にも続いていることに気付いた俺はエヌに尋ねた。

「これ、2階攻略しなくてもこのまま5階に行けるんじゃないか?」


 エヌが首を横に振ってそれは不可能だと答えた。

「5階までは確かにいけるんだが、そこにあるボス部屋には鍵がかかっていてね。2、3、4階から鍵を集めていかなければならないんだ」


「アルゲネロンにもプライバシーがあるもんな」

 なんとなく納得した俺を、エヌは変な物を見る様な目で見たあとにこう答えた。


「違うよ!危険過ぎて昔の冒険者がここのボスを封印したの!」

 なんだそんなことか。見た目のせいか思わずアルゲネロンを人間扱いしてしまった。あまりにも不快なダンジョンにいるせいか俺も大分おかしくなってきたな。


 2階へと上がった俺達は封印を解くべく1つめの鍵を探し始めた。


「アルゲネロンの巣の2階にいるアルゲネロンは1階にいる奴らとはヤバさが違う」

 唐突にエヌが俺達に向かって語り始めた。


「アルゲネロンの巣には1階から4階にかけてそれぞれに司るものがあると言われている」

 司るもの?なんだそれ。あいつらにそんな役目があったようには思えない。何を司っているのかを聞くと彼は嫌そうな顔をして続けた。


「1階は言葉責め、2階は放置、3階は縛り、4階はスパンキングと言われている。5階のボスに至っては想像もつかない」

 そっそうか、凄いものを司ってたんだな・・アルゲネロン・・


 昔の刑務所の食堂だった場所だろうか・・2階で鍵があると思われる最奥に向かっていくと300体ほどのアルゲネロンが食事をしている現場に遭遇した!


「くるぞ!構えろみんな!」

 俺がみんなに声を張り上げて、まずは一撃とばかりに火炎魔法を放つ。さて、放置のアルゲネロン、一体どれほどの強さか。ん?放置?


「バカ野郎!この階のアルゲネロンは放置しないと集団で襲ってくるんだよ!なに目合わせて武器構えてんだ!」

 エヌの絶叫が響き渡った。

 え?・・・・・


「オンナ、オンナ、イッショニアソボウ!オトコイラナイ!」

 300体のアルゲネロンの大合唱が響き渡る。

 背筋が凍った。


「取りあえず、1度1階へ戻れ!そこまでは追ってこない!」

 オンナ・オンナと叫ぶながら追ってくる300体のアルゲネロンたちから俺たちは必死に走って上がってきた階段を2段飛ばしで駆け下りた。


「放置を司るって言っただろうがーー!」

 エヌの怒りが俺に炸裂する。気まずい俺は一言悪いと言ってしょげた。


「俺達は殺されるだけかもしれないがな、エンジェルたちは捕まったら大変なんだ。慎重に頼むよ」

 エヌの注意が俺の心に深く刺さった。


 リベンジとばかりに、再び食堂へとやってきた。今後は万全の注意を払い、そこにいる300体ほどのアルゲネロンをまるでそこには何もいないかのように振る舞う。だが、考えてみてほしい。50メートルほどの距離を左右150体ずつのアルゲネロンがみんな俺達に注目してジッと見つめている。いないかのように振る舞うのも中々の精神力を要した。

 と、アルゲネロン達の何体かが食事をしていた椅子から立ち上がり俺達に近づいてくる。


「何があってもなにもいないものとして振る舞え」

 エヌが俺達にだけ聞こえるように小声で指示を出す。


 アルゲネロンたちはギョーウとシエラの周りに群がり、肩をトントンと叩いたり、背中に指をツーッと滑らしたりと悪戯を始めた。彼女達も内心怒り狂ってるだろう。俺達男性陣は怒るなよ、怒るなよと天に祈りながら歩き、5分が1日にも感じられる時を経て食堂を抜けることに成功した。食堂を抜けた後に振り返ると、全員満足そうな顔をして床で仰向けになって昇天し光となって消えていくところだった。シエラはすすり泣いてエヌに慰められており、そして・・


「ころすころすころすころすころすころすころす」

 ギョーウは堕天していた。



「ここが最奥かな?部屋があるな」

「おそらく、看守室だった場所だろう」

 俺の呟きにエヌが答え、俺達はその看守室の扉を開いた。


 机の上に木箱があり、その木箱に文字が掘られている。


『ここに封ずる鍵を求めるものよ、開くことなかれ。真の王の怒り、この地に吹き荒れん』


「なんかやばそうな感じだけど大丈夫なのか?」

 何かやばそうな文章を目にした俺が呟くと、口数が少なかったディムがその呟きに答えた。


「ダンジョンなんてみんなこんなもんだ。一々気にしてたら疲れるぞ」


 木箱を開けると銅色の鍵と共に一枚の紙切れが収められていた。

『封印を解くものよ。虚像に気をつけよ』


「どういう意味だ?これ」

「さあ?まったく」

 俺とエヌの頭の上には?マークが浮かんでいたことだろう。


「さて、3階へ行こうか」

 俺が明るくそう言うと、ディムが現実を突きつけた。


「あそこを通らなければならないぞ」

 ディムが指差す先にはあの地獄の間、アルゲネロンの食堂があった。時間も経ち再びアルゲネロンが出現している。



 結論から言えば、俺達はあの放置アルゲネロンを無視せず、ひたすら走った。鍵を取りに行くときと違い、ゴールが階段であるため、違う階に到達してしまえばやつらは追ってこない。とにかく必死で、それはもう必死で走った。後ろから聞こえる沢山の足音が怖かった。



「さて、次の3階だが中々厄介だ。縛りのアルゲネロンが待ち構えている」

 階段の最後の1段を前にしてエヌが忠告を発する。


「だとすれば俺が氷魔法か土魔法でやつらの動きを止めればいいのか?」

 バインド系の魔法ならいくつか習得している。やっと俺の出番だろうか。エヌはそれは違うと手を振った。


「忘れたのか?アルゲネロンは男と熟女のいかなる攻撃も受け付けない、お前が魔法で縄を用意して、一体ずつギョーウとシエラに縛ってもらうしかない」

 

「結構時間がかかるな。その間に他のアルゲネロンに襲われたりしないだろうか?」

 1体ずつ縛るとなるとかなりの時間がかかるだろう。その間に袋叩きにされては敵わない。


「大丈夫だ。あいつらは若い女性が縄を持つと列をつくってきちんと順番を待つ習性がある。ギョーウとシエラのどちらかが常に縄を持っているようにすれば常に順番待ちの列を作り大人しく待っているだろう」

 なんて気持ち悪いモンスターなんだアルゲネロン。お前達はそれでいいのか。

 エヌが提案した攻略法に従い、俺は時空魔法で保管していた縄を取り出し、ギョーウとシエラの2人に渡した。


「さて、ギッチギチにしてやんよ。ほら並べよ豚」

「うわあ、気持ち悪い。あんなの縛りたくないよう」

 階段の先にいた200体ほどの縛りアルゲネロンを前にしたギョーウとシエラの反応は見事に対照的だった。


「アー、イイー、キモチイイー」

 彼女たちにキツく縛られたアルゲネロンは気持ち悪い断末魔を残して光となって消えて行く。1体目を縛り始めて3時間が経過した。残りは5体だ。2人が2体ずつ縛り殺した後に変化は起きた。最後の1体が焦らされすぎたからだろうか。皮膚が赤黒く染まり、背中から黒い翼が生えて来る。


「まずい!アルゲネロンが進化した!」

 エヌの叫びに俺は困った。え?アルゲネロンって進化するの?聞いてないぞそんなの!


「ワタシ、インフィニットアルゲネロン、カギリナイ、シバリヲモトメルモノ」

 饒舌になったアルゲネロンを相手に俺は戦慄を感じざるを得なかった。限りない縛りを求めるということは、縛っただけじゃあ倒せないということじゃないか!


「エヌ、こいつはどうやって倒すんだ?」

「こうなったこいつは倒すことはできない。常に縛る刺激が加わるように縛り、その間に鍵を探すしかない」


「私、こいつ縛ります。任せてください」

 ギョーウが率先して縛り役に立候補したため、この場に残る対インフィニットアルゲネロン班にギョーウとディム、第2の鍵を捜索する俺とエヌ、シエラの班に分かれることになった。

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