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Lost Regalia  作者: ☆たか☆
第1部 新たなる希望
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第10話 パーティ結成

 1階へと降りた俺は早速パーティメンバーの募集を始めた。


「誰か一緒に俺とパーティー組んでくれるやつはいないか?火力には自信があるんだ。盾役と回復役、斥候役なんかもほしい」

 興味を持って話を聞きにきてくれる冒険者も何人かいたが、皆行き先がアルゲネロンの巣だと聞くと一言「無理、ゴメン」と謝った後、俺から去って行った。

 そういった冒険者達の反応を目の当たりにし、益々俺の不安は大きくなる。絶対に1人では行きたくない。

 誰か一緒に行ってくれないかと思い、冒険者ギルドを見渡してみると一際目立つ風貌をした男がいた。冒険者に似つかわしくないチャラチャラとしたホスト風の優男で、男にも関わらず、化粧を施し中性的な雰囲気を醸し出している。周囲には若い女性を3人ほど侍らして得意気に自慢話をしている。


「俺って何でもできちゃうからさ。難関ダンジョンによく誘われるんだけど、もうしょうがないなーって感じで着いて行っちゃうわけさ。まあ、当然ダンジョンでは俺のおかげ?みたいなもんでかなり稼いじゃうんだけどね!」


 若い女性たちは目がハートマークだ、そんな中の1人がその男に話しかける。


「エヌ様〜、じゃああのアルゲネロンの巣なんてとこにも誘われたら行っちゃうんですかぁ?怖くないんですかぁ?」


「余裕余裕、まあ汚ねーし、気持ち悪いけど俺にかかれば楽勝だよ!」


 エヌと呼ばれたその優男が俺にとても都合のいいことを口にした瞬間、俺は席を立ってその男の元へと歩いていった。


「ちょうどよかった。一緒にアルゲネロンの巣に行くメンバーを募集してたんだ。一緒に行こうよ」


 俺がそう声をかけると、その優男はギクっと肩を上下させて恐る恐る俺を振り返って訊き返して来た。

「え?今なんて?」


「いや、実力のある冒険者と一緒に行きたいと思っててね。ちょうどアルゲネロンの巣に自信があるようなことを言っていたから頼もしいと思って声をかけさせてもらったんだ」

 俺だって分かっていた。この優男が見栄であのようなことを言っていたことくらい。だが、俺とて1人で行くなど絶対に嫌だ。旅は道連れ世は情けと言うじゃないか、この男には犠牲になってもらう。


「あ、ああそうだな。確かに俺は実力がある。だが、こちらにも予定があってだな」

 それでもその男はなんとか逃れようとする。しかし、俺の援護は思わぬところから来た。


「あれ?エヌ様、さっきしばらく暇だから一緒に過ごそうって誘ってくれたじゃないですか。忙しかったんですか?」

 男の取り巻きの女性が不思議そうな顔をして男に問う。


「いや、忙しくはないんだ。うん。ただ、準備がな」

 しどろもどろな言い訳を繰り広げる男に女性も不審に思ったのか追求を始めた。


「あれ?実はアルゲネロンの巣が怖いとか・・・」

 熱い視線がジトーッとしたものに変わりつつあるのを感じたのか、焦ったようにその男は弁解した。

「いや、行くよ?俺誘われたら断らないし!アルゲネロンの巣攻略してくるよ!」

 

 勝った。この男を巻き添えにすることができた。俺はある種の達成感を感じていた。そしてこの男は自身の名誉を守ったのと同時に地獄行きの切符を手にしたのだろう。


 これから出発するということで取り巻きの女性たちがその男に別れを告げて、ギルドから出て行くと、その男は俺を睨みつけてきた。

「面倒なものに巻き込んでくれたな。最悪だよ」


 さすがに申し訳なさを感じていた俺は頭を下げて謝罪した。

「ごめんな。俺も無理矢理やらされてて、どうしても仲間が欲しかったんだ。あのダンジョン行くって言ったとたんみんな俺から離れていくからさ」


「行くって言った以上俺は攻略するつもりでいく、俺の名前はエヌ・ド・エムだ。エヌって呼んでくれ」

 エヌはそう言うと、俺に握手を求めて来た。潔い対応に好感が持てる。きっと根はいい男なのだろう。


「ああ、俺はタカ・メグミスキー、タカって呼んでくれ」


「タカ?お前第3騎士団長じゃないか!いつ冒険者になったんだ?」

 俺の名を聞いて何かに気付いたかのような表情を浮かべたエヌは俺にそう尋ねてきた。


「あぁ、前にニドリウムに行ったときについでで登録してね。アルゲネロンの巣の攻略も実は総帥からの無茶振りなんだ。これ秘密にしといてくれよ」

 頭を掻きながら俺はエヌに説明をすると、うわーっという顔を浮かべて、エヌはもう1つ質問をしてきた。


「それで?俺以外の面子に当てはあるのか?」

 痛いところを突かれた俺は一瞬言葉に詰まり、一拍置いていないと答えた。


「じゃあ、適当に俺の知り合いに声かけてみるわ」

 コミュ力が高いとはエヌのようなやつを言うのだろう。知り合いが多そうなエヌはそう言うが否やギルドの奥へと消えて行き、しばらくすると2人の女性冒険者を連れてきた。


「紹介するよ、ギョーウちゃんとシエラちゃん、どっちも僕の可愛いエンジェルさ」

 紹介された2人の女性は女性と言うよりは女の子といった見た目で王国の高等学校に通うような年齢に思える。

 ギョーウと呼ばれた女の子はボーイッシュな女の子で心が病んでそうな暗い雰囲気を醸し出しており、対照的にシエラと呼ばれた女の子は明るく、エヌに誘われて嬉しいですといった気持ちを隠そうともせずニコニコと笑っている。

 さすがに学生のような女の子をアルゲネロンの巣へ連れて行くのは不味いだろうと思った俺はエヌに苦言を呈した。


「学生は不味い。なにかあったときに俺の立場が危うくなる」

 その発言を聞いたのかギョーウと呼ばれた女の子は俺に反論をしてきた。


「別に、私もう卒業してるんで。悪かったね学生じゃなくて」

 何やら地雷を踏んだようだ。俺の発言を聞いたエヌが冒険者ギルドの補足をしてくれる。


「王国の騎士団じゃあ知らないが、学生のうちから冒険者登録をしてお金稼ぐなんてのは珍しくない。ギョーウちゃんはもう学生じゃないが、シエラちゃんは将来有望な学生だよ」


「わかった。学生を連れて行っても問題がないのは分かったが、実力面でも大丈夫なのか?」

 倫理的な問題がないのは把握したが、それでも不安は残る。贅沢なことを言えば、戦力になる者を連れて行きたい。


「大丈夫だ。2人はこの若さで既にCランク、半年もすればBランクに上がるんじゃないかな。何より、アルゲネロンの巣に行くならパーティに若い女の子がいると凄く戦いやすくなる。行ってみればわかるよ」


「わかった。アドバイスに従おう。後1人ほどメンバーがほしいが・・」

 俺が周りを見渡すと、新人に絡んでいたあの冒険者がいた。

「なあ、ディムさん。俺達と一緒にアルゲネロンの巣に行ってくれないか?」

 

 その男、ディムに声をかけると彼は俺を一瞥して口を開いた。

「俺に声をかけるなんて珍しいな。冷やかしか?」


「そういうわけじゃないが、あんたの実力がBランクに留まらないと見込んで頼んでるんだ」

 値踏みするかのように目を細めると彼はわかったと小さく頷いた。


「お、ディムを誘うのか。見る目あるなタカ」

 意外なことにエヌはディムに対して好意的な意見を述べた。てっきりギルド内では嫌われ者かと思いきやそうではないのだろうか。エヌに尋ねてみた。


「まあ、実力ないやつからは嫌われてるわな。でもある程度実力がついてディムと同じパーティを組む機会があれば嫌でもわかる。あいつが優秀な冒険者だってな」


 俺達はパーティー登録を行うため、ギルドに来たときに対応してもらった受付嬢の元へと向かった。


「パーティー登録をしたい。ギルドマスターから聞いていると思うが例の件だ」


「はい、アルゲネロンの巣の攻略ですね。確認のためメンバーのお名前を伺ってもよろしいですか?」


 エヌ以外のフルネームを知らなかった俺はエヌにその役目を任せた。

「タカ・メグミスキー、エヌ・ド・エム、ギョーウ・ヤンデレダー、シエラ・ナナビッチ、それとディム・バーク・ターンだ」

 ん?ターン?もしかしてディムは・・・ふと浮かんだ疑問を遮るように受付嬢が俺達に確認がとれたと話しかけて来た。


「はい、確認が取れました。Aランク1名、Bランク1名、臨時Bランク1名にCランク2名でのパーティ申請を受理しました」

 おそらく臨時Bランクが俺と見ると、エヌはAランクなのだろう。口だけではなく、実力もあるようだ。これならアルゲネロンの巣もなんとかなるだろう。


 このときの俺はアルゲネロンの巣について、ただの変態の巣窟としか思っていなかった。そこに秘められた闇の深さに出発のときに気付くことはできなかったのである。

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