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交流6

 それから三日経って。

 ウチは日曜日の夜、ベッドの上でモヤモヤしとった。

 あれから、カーネリアさんからはなんも音沙汰なし。

 ウチも気になって、ポエムやらエッセイやらを執筆する気にならんくて、ずっとカーネリアさんのことを考えとった。


 も、もし、やで。カーネリアさんに。

 会いませんか、とか言われたらどないする……?


 なろうでは、オフ会したとか、出張ついでに他のユーザーさんと会ったとか。そういう活動報告をよく見かける。

 だいたい、同性ユーザー同士さんのお話やけど。

 たまに異性ユーザーさんと二人(そして既婚者同士)一緒にどこかに行ったとか、そういうのもちらちら目にしたことがある。(うーん、ちょっとびっくりしたで。いや、ヤマシイ目的じゃなかったら全然問題やないのか? ウチの考えが硬いのか?)


 カーネリアさん。実際会ったらどんな人か、少し気になるな……。


 ごろり、と仰向けからうつ伏せになったウチは、スマホを取ってなろうのホームに行った。

 すると、赤文字のメッセージ着信通知が。


 おそるおそる、ウチはメッセージを開いてみた。


『A-ha-ha! 仔猫ちゃん! 参ったよ!

 なんともsexyなポエムを書くくせに、仔猫ちゃん自身は男女のキビに関しては全く解してないようだね!』


 え、王子?

 ……どうしたんですか?何の話?


『参ったなあ、してやられたよ。A-ha-ha! すっかり、君は承諾してくれたとばかり思っていたからね!ここまで乙女だとは僕も思わなかったよ。


 Huuuu、しょうがないから、この前の僕のメールを詳しく訳すとね。


「仔猫ちゃん、キミとデートしたいんだけどキミはどうかな? この三つのデートなら君はどれが好みかな? わかった、3番のデートがいいんだね。じゃあ、日曜の朝九時に〇〇駅の行基前で待ってるね……」

 という実は少し遠回しなデートのお誘いメールだったんだけどね!

 A-ha-ha! いくら待っても来ないから、一人でSARUとモミジのTENPURAを味わってきたよ。A-ha-ha!』


 ……どぅわえええええええーーーーーーっ!!!


 ウチはびっくりしてスマホを取り落としそうになった。

 ホ、ホンマですか!?

 じゃあ、なんですか。今日の朝、九時に王子さんは一人、行基前に立って、ウチのこと待ってはったんですか?

 ええ? なんでウチの住んでるところ分かって……ああっ、一回エッセイに書いてしもたかも! プロフィールにも載せてるし。


『……一人でSARUと戯れながらね、僕は今日、考えてたんだ。

 実は僕、ジャパンに短期留学したときに出会った一人の女性の感触が忘れられなくてね……。彼女の感触を思い出すたび、胸が引き絞られるような切なさに耐えていたんだけど。……その彼女をキミとつい重ねてしまったみたいだね。……A-ha-ha! 本当にゴメンね! キミにはすでにステディがいるのにね。僕としたことが、YAMATONADESHIKOの真髄を忘れてしまうなんて。本当にキミには失礼なことをしたと思うよ、子猫ちゃん。許してくれるかな?……今回はご愛敬ということで、これからも楽しいフレンズとしていてくれるかな? A-ha-ha! 本当にゴメンね! キミとはこれからも末永く付き合っていきたいよ。よろしくね、子猫ちゃん。A-ha-ha!』


 感触・・って、なんやねん、生々しいな。

 突っ込んでから、しばらくして王子のメールの全容を理解した後。

 ウチは猛烈に怒りがこみ上げてきた。


 遠回し? いやいや、わかるわけないやろ。

 だいたい男女の機微? ……んなもん、分かるかボケ! ウチはケイスケしか知らんのじゃ!

 だれが、あの文を読んでデートのお誘いやと思うかい!


 とりあえず。

 会いたいなら「会いませんか」ぐらい、はっきり言えやあ!!!


 怒りにまかせて、スマホ画面を元のホーム画面に戻したら。

 もう一つのメッセージが。


『necoさん、すみません。

 この間は無節操なことを言ってしまって申し訳ありません。お許しください。

 さぞ、困惑されたでしょうね。反省しております。


 実は僕、昔から好きな女性がいてずっと彼女のことを思い続けているのですが。

 彼女はなんというかとても放縦な女性でして。決して、僕だけのものになってはくれないのです。

 自分でもバカだと思うのですがそれでも彼女が好きで彼女のそばを離れられずにいます。

 そんな時に、このサイトでnecoさんのような一途で清純な女性とお会いして。

 彼女と正反対のnecoさんに少し惹かれてしまいました。ああ、彼女がnecoさんのような女性だったら、necoさんのような女性を好きになったらこんなに苦しい思いすることはないのに。

 そんなことを思って、もしあなたと付き合うことができたなら、なんてことも想像してしまいました。


 隣の芝生は青く見える、というやつですね。エッセイにてあなたと彼氏さんの関係が垣間見えるたびにうらやましく思っておりました。

 しかし、この3日間考えて、やっぱり僕は彼女のことを愛してるのだと悟りました。

 彼女は僕のことを大勢いる男のうちの一人、だとしか思っていませんが、それでも僕はかまわない、と開き直ることにしました。


 今回、necoさんを不愉快にしてしまいまして、本当に申し訳ありません。メールだと相手の顔が見えない分、大胆になってしまうようです。

 それでもあなたとのメールでのやりとりは、僕の人生でとても楽しいひとときでした。

 ありがとうございます。


 こんなことが起こったあとで何を言うのか、と思われるかもしれませんが。

 これからもnecoさんとはなろうでお付き合いを続けていただけると嬉しいです。

 本当に申し訳ありませんでした。


 カーネリア』



 ふるふる、とウチはスマホを握りしめた。


 お、お前ら……ふざけんなや……!!!

 ヒトの気持ちを散々、揺さぶってからに……!!


「勝手に自己完結して終わんなやっ!! アホッ!!!」


 ウチは叫んでスマホをベッドに叩きつけた。






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