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交流5

 星の王子さまの「キツネ」……!


『泣いている王子のところに、キツネが現れる。悲しさを紛らわせるために遊んで欲しいと頼む王子に、仲良くならないと遊べない、とキツネは言う。キツネによれば、「仲良くなる」とは、あるものを他の同じようなものとは違う特別なものだと考えること、あるものに対して他よりもずっと時間をかけ、何かを見るにつけそれをよすがに思い出すようになることだという。……』


 ウチはウィキぺでぃあで調べた星の王子さまのあらすじを思い出した。


 そして、エッセイの感想欄にてウチがコメントした内容も思い出した。


『薔薇を彼氏に置きかえて、キツネを知らない誰かさん、というようなマディソン郡の橋的なシチュエーションを想像してみました。(こらこら、ですね)

 ……ちょっと切ない感じが理解できたように思いました(笑 )』



 ――遊んで・・・ほしいと頼む王子に「仲良くならないと・・・・・・・・遊べない・・・・」とキツネは言う。「仲良くなる」とは、あるものを……特別なモノだと考えること……。――


 ……つ、つまり、カーネリアさんは、ウ、ウチと「仲良く」なりたいとお、おっしゃって……。


 な、な、なんと破廉恥な!!


 ウチはボンッ、と頭が噴火して、思わず持っていたスマホを寝ころんでいたベッド上に投げ捨てた。


 小説家になろうじゃないかの規約14条7にて『面識のない異性との性交、わいせつな行為、出会い等を主な目的として利用する行為』は禁止されてますぜ、カーネリアさん!


 混乱したウチは布団を頭から被り、スマホを汚らわしいものでも見るように身構えて眺めた。


 今まで人畜無害の草食系男子代表、文学少年のようなイメージやったのに。作品も童話とか児童文学系で。

 キツネじゃなくて、むしろヒツジやったじゃないですか。それを……。一体、どうしちゃったんですか、カーネリアさん。

 それに、星の王子さまがキツネに言ったように「遊んで欲しい」なんてウチはカーネリアさんに一言も言うてませんけど……!


 ……ホンマに?


 ウチは自分とカーネリアさんのやり取りを思い返してみた。

 割とくだけた内容の話(R18 カジキストレート先生の文学作品についても)をしたし、彼氏のケイスケの愚痴も言ったような気もするし。

 気が付かへんうちに、ウチ、そう思われても仕方がないような対応してたのかも。


 ……あ、あかん。落ち着くんや。

 そうと決まった訳やあらへん。

 せや。カーネリアさんのただの冗談かも。


 そう思いながらも、ウチはなかなかスマホに手が出せへんかった。

 五分後、ウチはおそるおそるスマホに手を伸ばした。

 赤文字でメールが一通。


「すみません。ヘンなこと言いました。……忘れてください」


 また、それか!

 反対に忘れられへんやろが!


 ふー、ふー、とウチは深呼吸して冷静になろうと必死に務めた。

 今までにカーネリアさんから来たメールを読みなおしてみる。

 冷静に冷静に。解読してみるんや。



『僕みたいに小さい胸が好きな男もいるはずです。……なに、言ってんですかね、僕は(笑)』

『……すみません、話が変な方にそれました。忘れてください』

『necoさんはああいうタイプの男性キャラが好きなんですね…………そうですか』

『詩のランキング、載られましたね! 僕もなんだか嬉しいですよ。今夜はお祝いですね!…………………………………………………ふふ♪』


 ウチは現代文のテストの文章を読むように何回も読み直してみた。

 わ、わからん。この文章から相手の気持ちを汲み取れと?

 それにしてもこの三点リーダーがなんかやたらに気になる。気になるぞ。


 せや。三点リーダーの匠、青龍シンジ先生に聞いたら分かるかも。

 いや、それよりも男女の機微を知り尽くしてそうなカジキストレート先生なら、行間にこめられた感情までこと細かに解説してくれそ……って、聞けるわけないやろが、そんなこと!


 あ、あかん。ウチ、相当動揺しとるわ。


 ウチは落ち着こうとベッドから立ち上がり、台所で麦茶を一気飲みした。

 心持ち、カッカしていた頭が冷えたような気がした。


 戻ってきて、スマホをチェックしたら、また赤文字でメッセージが一件。


 カ、カーネリアさんから……?

 ドキ、として開いてみると。

 どうやら違うユーザーさんからのようでホッとした。


『この間、投稿された詩を拝読しました。情熱的かつ煽情的で、それでいて透明感と淋しさに彩られた詩でした。異性からすると、無性に庇護欲がかきたてられるような、そんな詩でしたね。

 今までのnecoさんの詩とはうってかわって、非常に艶っぽい詩だと感じました。


 最近、何か心境の変化でもおありだったのでしょうか。


 ジジイの杞憂であれば良いのですが。一言をば。


 ……necoさん。


 おイタは、ダメですよ(笑)


 それでは失礼いたします。


 OLDTELLER』



 ええええ!?

 ウチは驚いた。


 な、なにを言うてはるんですか、OLDTELLERさん。


 ……そ、そうなんやろか。

 ウチ、自分では気がつかないうちに変わっとったんやろうか。

 オカンに言われた言葉に気持ちがぐらついて。

 なんというか、男のひとに向けて、かまってかまってオーラでも出しとったんかな。

 それが詩にも滲み出るほどやったんか……?

 そして、そんな自分でも気が付いてへんかった心境の変化をOLDTELLERさんには見透かされてた……?

 それに気がついたOLDTELLERさんって……。


 OLDTELLERさん、貴方、一体何者なんですか……?



 ウチはその後、もちろんカーネリアさんには返事は出せんくて。

 OLDTELLERさんには、悩んだ挙句。


『いつも、感想をいただきましてありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします』


 という、無難な返事を出すので精一杯やった。





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