プロローグ〜決意〜
「男はゴムバンドのようなもの」
恋愛に関する名言。
ウチがその言葉を知ったのは二十歳そこそこやったかな。
男は束縛を怖れて、彼女から離れたくなるときがあるんやと。
でも、離れても伸びたゴムバンドみたいにまたびよんと戻ってくる。その度に彼女への愛情は深まって強くなる。
だから男が自分のことをほったらかしにしたことを責めず、戻ってくるたびに優しく迎えろと。
それが愛される女になる方法。
ジョン グレイ 先生の本を読んで、その言葉をウチは鵜呑みにしてもうた。
それを忠実に実行し続けて、もうそろそろ十年になる。
……アホやったわ。
でも後悔しても、もう過ぎ去った日は戻らん。
「女は波のようなもの」
グレイ先生は女のことをそう例えはった。
グレイ先生の言いたかった意味とは違うけど、それで例えるならウチは今が引き際やと思う。
そうや。思い立ったが吉日。
もう三十路目前やし。うかうかしてられへん。
いつやるの?
……今やな!
日本人の某先生の言葉を思い出し、ウチはケイスケにメールを送った。
「その日は用事があってあかんねん。しばらく忙しい」
送信を確認したあと、ウチは早速パソコンに向かって。
数分後には。
いわゆる。
「結婚相談所」に入会した。――