目覚めたとき 3
「この山を越えれば、街があるんだよな?」
俺は荷車の中でぐるぐる巻きになっている女の子に尋ねた。
女の子が「うん」と答える。ずいぶん不服そうだ。
彼女は、俺が彼女を殺そうとしないことが、
気に入らないらしかった。
『私たちは、同族で殺しあう呪いを受けているの。
私の先代の《探索者》だってそうだったのに……
なのに……なんであなたは……』
彼女の言葉が思い出される。
知ったことではない。
誰かを殺すとか、殺されるとか、そういうことはどうも苦手だ。
「……ん!?」
山を越える道中、山向こうから地響きのような音が聞こえてきた。
俺は馬を止めると、馬車から降りて近くの木に登った。
巨大な機械人形が、街を踏みつぶしながらこちらへ向かってくる。
「ガーディアン……」
口をついて出た言葉に、俺は息をのんだ。
地響きは徐々に大きくなっている。
「ダメだ、このままじゃ間に合わない!」
俺は木の上から一気に降りると、馬車の荷車に飛び込み、
女の子を縛っていた縄を次々に切ってほどいた。
「逃げろ。ガーディアンがこっちに来る」
女の子は俺をにらみつけ、
いまにも食って掛かろうかという様子だった。
だが、さすがにこの異常な事態を察したのか、
ただ黙って、コクリとうなづいた。
次の瞬間、ガーディアンのこぶしが、荷車を粉砕した。
傷ついた馬の鳴き声が山に響き渡る。
機械人形は大地からゆっくりとこぶしを引き上げ、
馬車のあった場所を見下ろした。
「……大丈夫か?」
そこには、鋼の剣を持ち、薄い緑色に輝く髪を持つ男が立っていた。
その足元には、白い肌の女の子が頭を抱えて震えている。
「安心しろ。俺があいつを倒してやる」