目覚めたとき 1
その女の子は口から血を流しながら、
俺をにらみつけていた。
深い眠りから覚めたばかりの俺は、
鉄のように重い体を引きずりながら、
その女の子へと向かっていく。
「来ないで! 言ったでしょう!?
私はあなたを、あなたを――」
殺したくて殺したくて、仕方がないんだ!
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俺は痩せ馬の荷馬車で鞭を振りながら、
穏やかな日差しの下を走っていた。
荷車の方からはぐるるる…とお腹が鳴る音が聞こえてくる。
そろそろ休憩の時間だなと、俺は馬を道辺の木につないで荷車を覗き込んだ。
荒縄で手足をぐるぐる巻きにされた女の子が、
さるぐつわをされて横たわっている。
「じゃあ、縄を少し外すからな~?」
俺は女の子のさるぐつわをはずそうと手を伸ばす。
そしてさるぐつわをはずした瞬間――
「ぐっ!! がぁぁぁ!!」
「わっ!? こら! 危ない!!」
女の子は手足を拘束されているにもかかわらず、
俺を噛みつこうと器用にとびかかってきた。
俺は両手で何とか女の子を押さえると、
荷車と女の子をつないでいる荒縄をぐっと引っ張って、
さらに強く女の子を縛り上げる。
「な、なんで…」
女の子は肩で息をしながら、つぶやいた。
「なんであなたは、私を殺したいと思わないの!?」
俺はどう言ったものかと、
うーむと腕を組む。