子供の時間
あなたの時間が止まればいいのに
そうすれば
僕があなたの歳に近づくまで
待たなくていい
僕が一日歳をとっても
また一日あなたとの距離があく
僕が知っているのは
ほんのひとかけら
そんなもの繋ぎ合わせて
「あなた」をつくるのは
僕のお遊びだとあなたは言うけれど
下から見上げるあなたは
お日様に照らされて眩しいから
その小さな涙すら
僕は一つも見逃さない
だけど
僕が一日あなたに近づいても
あなたは一日僕から遠ざかる
子供の僕は
短い手であなたを掴もうとするけれど
あなたの長い足は
するりと大きな一歩を歩み出す
あなたを追いかける僕に届くのは
柔らかな残り香
その背中が
遠くて 遠くて
見失いそうになる
マッテ マッテ
オイテイカナイデ
僕の時間だけが早まればいいのに
そうすれば
僕があなたの歳に近づくまで
待たなくていい
優しい笑顔
触れたいのに
遠くて 届かなくて
苛立ちが胸一杯に溢れてしまう
子供の僕は
簡単にあなたを傷つけそうで
ハヤク ハヤク
大人ニナリタイ
あなたと肩を並べ
その同じ高さから
同じ景色を見たいのに
僕は子供
あなたは大人
僕の手足が伸びて
あなたより背が高くなれば
きっと僕は
その背中に追いつける
きっと僕は
その笑顔を守れる
だから
マッテイテ
僕が大人になるまで
どうか
あなたの時間を進めないで