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9.仲間

「そっちの子が泣いてる所悪いとは思うんだけど話聞かせてもらってもいいかな?」

「わかりました」


 状況がわからないから説明をしてもらおうと思ってたのに更にその状況が加速してるのなら聞きたいのも当然だろう。

 泣き続けるエリナを撫でながら話すことにする。


「この子の名前はエリナって言います。今日森の奥でゴブリンに運ばれてる所を助けたんです」

「エリナ……。ゴブリン……。帰って来たパーティが仲間がゴブリンに連れていかれておそらく助からないからってパーティからの除名申請があったんだけどもしかして……」

「おそらくそのパーティに所属してたのがこのエリナです。それでギルドから出て来た時にパーティから外せたことを喜ぶような発言をしてそれを聞いてしまって」

「あの屑どもが」


 今まで聞いた事のないドスの効いた声を出したスイナさんに驚いてしまった。スイナさんも思わず出た声に少し慌てていたが、実際俺もその場で殴ってやりたかったから理解はできる。


「ごほん、彼らの対応をしたのは私だったんだけど、どうも仲間を攫われた悲壮感というものがなくて、心配してるように見えてもどうも演技くさい。しかも女性までそう言う感じだったから気になってたんだよね。むしろ気分が悪くなりそうだった」

「スイナさん、これ以上はやめましょう。誰の為にもなりません……」


 俺はエリナに視線を向けながら言った。頭に血がのぼったのが冷え切っていなかったとは言え、エリナに聞かせるべきではない。その事に気が付いたスイナさんが慌ててる。


「え、あ、ご、ごめんなさいね。そのつい……」

「いいんです……。私の事みんなが良く思ってなかったの知ってるから……。みんなリックの事が好きでパーティ組んでるのに、私だけ幼馴染でリックのお母さんが学校の先生で私の事ずっと可愛がってくれてたからパーティから外せなくって……。だから、きっと……ちょうどいい、って」

「丁度いい訳ないだろ。エリナが悪い事なんてないんだ」

「でも」

「エリナが悪い訳じゃないよ」

「う、うぅ……」


 少し落ち着いたように見えたけど、まだまだ胸につっかえていたものがあったのだろう。また泣き出してしまった。泣ききった方がいいと思うから泣かせているけどこれはどうするべきかと思う。

 学校に行ってたなら王都に家はあるはずだ。一度冒険者になってから様々な理由から実家に帰る事は珍しくない。回復魔法が使えるとなら治癒院で働くという手もある。冒険者を続けるにしても回復魔法の使い手なら少し探してもらえばパーティなどすぐに見つかるだろう。

 しかし、このまま放っておいていいのだろうか? 可愛いなぁと思ったとはいえちょっと深く踏み込み過ぎて情が移ってる。むしろお持ち帰りしたい。

 エリナが泣き止むまで俺は優しく頭を撫で続けるのだった。スイナさんはそれを静かに見守っていた。……仕事はいいのだろうか?




「その、ありがとう」


 俺から離れるように動いたので勿体ないとは思いつつも彼女を離した。これで最後かもしれないと思うと本当に勿体ない。


「少しはすっきりした?」

「うん、これからどうしようかな? って考えようと思えるくらいには」

「それではどうなさいますか? 申請からすぐに亡くなっていないのがわかったのであればパーティへの復帰もできますが」


 さすがにそれはどうだろうと俺は思った。そしてエリナも首を横に振った。それはそうだろう。自分が死んで喜ぶような奴らの所には帰りたくないだろう。返したくもない。エリナに対応してるからだろうかスイナさんの言葉使いがしっかりしたものになっている。


「そうですね。仲間をないがしろにするような連中の所に戻る必要はないと思いますが、規則ですので一応聞かせていただきました。不快な気分にさせてしまっていましたら申し訳ございませんでした」

「いえ、規則ならしかたないですよね」

「ご理解いただきありがとうございます。それとこれからどうなさりますか? すぐに決められるものではないので、ここで答えをもらおうとは思いませんが手持ちも少ないのではないですか?」

「少しなら実家で面倒見てもらえると思うので実家に帰って、ユキトくんにお礼しながら考えてみようと思います」

「ん? お礼しながらってどうするつもりなんだ?」


 お礼に関してはまだ特に決めてない。むしろここまで精神的にやられた子に更なる負担を求めていくような事はしたくない。それにしながらって事は一回で終わらないって事か?

 俺の方を向いて微笑みながら言った。なんとなく見てると不安になる微笑みだ。


「助けていただき、本当にありがとございました。今の私にはお礼できるようなものが何もありませんし、命を助けていただいたお礼になるようなものを今後提供できないと思います。だから……私の体でよければいくらでも使ってください」

「本気で言ってるのか?」

「はい、好みじゃないかもしれませんけど、遊び相手くらいにはなれますよね?」


 お礼の中でも最悪の部類に入るものが来たと思った。魅力的な提案ではある。こんな美少女を好き勝手にしていいと言われてるんだから。とはいえそんなお礼を望んでいた訳じゃない。助けないと気分が悪くなりそうだったから助けただけだ。これでお金を受け取ってもらえるならそういう商売として受け入れられるけど絶対そうはならないだろうし……。

 せっかくいくらでも使っていいと言ってるんだし、どう使おうと俺の勝手だよな? よくある? 手段だけどこれでいいかな。


「本当によろしいのですか? せっかくゴブリンから救われたというのに」

「助けてもらえなかったらひどい事になってただけですから、相手がユキトくんならどんなことされても平気です」

「そういう方法は感心できません」

「でも、私にはこれしか考え付かなくて……」

「そうかもしれませんが」

「スイナさん」


 俺はスイナさんを止めた。スイナさんもそういうお礼はどうかと思っているようで止めようとしてるけど、そうかもしれませんが。なんて言ってしまっては止める事は無理だろう。時と場合によっては言葉なんてものは便利に勝手に解釈して使ってしまえばいいのだ。

 しなくてすむならそれに越したことはないけどね。


「エリナ、本当に俺にならどう使われても構わない?」

「はい、好きなだけ使ってください」

「ちょっと! ユキト君!?」

「スイナさん、今の言葉聞きましたよね?」

「聞いたよ。でも、ユキト君!」

「スイナさん、俺とエリナのパーティ登録お願いします。いずれ弟子みたいなものをとって鍛えるつもりだったんです。どう使われても構わないなら実験台になってもらおうかと」


 それを聞いた二人がポカンとしてる。しかし、さすが特級冒険者。前線に出る事はなくなったけど立て直しは早い。俺の意図をくみ取ってくれたのだろう。


「なら二人のカード貸してくれる? 登録してくるから」

「え? でも……」

「エリナ早く早く」

「う、うん?」


 混乱してるエリナを急き立ててまともに考えられないうちに終わらせる事にする。カードをスイナさんに渡したので、これでもう正気に戻っても遅いのだ。


「えっと……ユキトくん。どういう事?」


 混乱からまだ立ち直りきれてないのか、話し方が元に戻っている。こっちの方が断然いいのでそのままを維持してもらいたいと思う。


「エリナは俺にどう使われてもいいって言ったよね?」

「うん、でもそれは、その、夜のって意味で……」


 夜のあれこれといのは俺もスイナさんもそう思ってた。でも実際そんな事は一言も言ってないのだ。そして夜のと言って想像してしまったのか赤くなってるのがまた可愛い。


「そうだったんだ。てっきり俺は冒険者としての依頼を受けたりして働いて返してくれるものだと思ったよ」


 自分でも白々しい事を言ってる自覚はある。なるべく普通に言ったつもりだが多少棒読みになってる自覚がある。


「でも、私じゃ邪魔に」

「アクアおいで、エリナよく見てほしい。アクアが俺の従魔だ。河原にいた普通のスライムを従魔にしてる奴が相手の能力を気にすると思うか?」

「でも」

「足手まといかと言われたら確かに足手まといだ。でも俺からしてみれば三級冒険者だって足手まといだ。二級や一級ですら足手まといの可能性がある。だから気にする事はない。それにさっきも言ったけど誰かを指導する為の情報集めの実験に付き合ってもらうわけだからそれなりに大変だぞ?」

「……ユキトくんは優しいね」

「そんな事はない。これだけの美少女と一緒にいられるし下心はある。お礼で一時の時間をすごすよりもよっぽどいいだろ」

「び、美少女ってそんなことは……」


 また真っ赤になった。この可愛い生き物の頭撫でてもいいでしょうか? さっきまで散々撫でていたので自重しました。それに俺達のやり取りをこっそり覗いてる人もいる。


「それでスイナさんはなんでそんな所で覗いてるんですか?」

「ばれた?」

「それはばれますよ……」

「それがそうでもないんだけど、やっぱり強くなってるね」

「それを否定するつもりはないですよ。それで登録は?」

「問題なくしてきたよ。ついでにエリナさんの死亡届の取り消しもね」

「あの……本当にいいのかな?」


 エリナは自信なさげに言った。言い方は悪いがついさっき捨てられてしまったばかりなのだから疑心暗鬼になるのも仕方がないと思う。だけどエリナが邪魔だった理由って実力がどうとかじゃないもんな。


「俺としても試したい事があるし問題ないよ。むしろこっちが合意に話を進めてる訳だし」

「私としてもユキト君と組んでくれるのは助かるかな。ほっとくとどこまでも行っちゃいそうなんだもの」

「…………あの、よろしくお願いします」

「あぁ、こちらこそよろしく」


 こうして俺にも仲間ができた。孤児院での先輩冒険者や後輩もいるけど俺だけ一緒に組める同じ歳の人がいなくてソロだった。結果的にその方が都合は良かったけど元々孤児院という人が多い生活環境だったのが一人になりそれなりに寂しくは感じていたのだ。クランは行動を縛られたくないので入りたくなかったし……。

 それが俺が振り回せる仲間ができたのは素直にうれしい。しかもこれだけの美少女なら文句もない。

 心の底から仲良くやっていけたらと思う。

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