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78.それぞれの道

 その日の夜、予想通りの展開になりました。即ち嫁が増えた。速攻受け入れでした。

 むしろアルテミアも引き込もうとしたようだったが、アルテミアはやっぱり恋愛は一対一がいいと言う事で断られた。英断だと思う。よくやった。




 そして、今現在。ミリエットを伴って里の屋敷建築現場に来ている。

 他のメンバーは今日は全員で森にアイテム採取に行っている。アルルや猿の字は無限倉庫持ちだし、他のメンバーも日々、無駄にある魔力で成長させ無限倉庫を目指しているらしい。


 それで俺達がなぜここに来たかと言えば、屋敷の完成を早める為だ。向こうの屋敷だとたまに王が遊びに来る。いきなり男が何人も増えてると何事かと思われそうだしな。

 だから、一気に完成に持って行く為にここに来た。そしてミリエットはすでに出来上がっている場所からエンチャントを施してもらう為に来ている。


 ミリエットの腕は俺よりも劣るが、他のメンバーよりも優秀で、こっちの世界においては最高峰らしい。使徒の中でも? と思ったが、どうやら基本的に生産職系はこっちにあまり来ておらず、その中でもトップの実力者をみんなまとめて今回俺がかっさらってきた訳だ。


「親方にも挨拶したし始めるか。ミリエットも頼むよ」

「はい」


 やらなきゃならないことはまだまだたくさんある。もっとのんびりもの作りをしたかったはずなのにやらなきゃならないことに追い掛け回されてる。


 まずはこの屋敷を完成させてプレイヤー組を移住させる。

 戦闘用の服を用意する。猿の字からは忍び装束や、特殊な忍び道具の製作依頼も来ている。

 それからサークリスで家を建てる。あくまで屋敷はプレイヤー組にとっては仮の宿なのだ。あの屋敷は関係を持った巫女と俺の子供たちの家になるのだ。

 愛着を持たれる前に追い出そうと思う。それになんだかんだで人の家に居候してるよりも自分だけの家があった方が落ち着くだろう。


 ……一人暮らしの大変さから屋敷に住むのを希望する人もいるかも? そうなったらそうなったらでめんどくさいなぁ。


 そこまで出来たら一段落つくけどサークリスで生活するのはまだまだきついから王都の家を玄関にしてサークリスと行ったり来たりって生活にプレイヤー組はなるのかな?


 そんな事を考えながらガンガン仕事をした結果、この日屋敷は完成してしまった。

 おかしい。少なくても俺が手伝っても終わらないと踏んでいたのだけど……。


「いやぁ、ユキト様がいらしてからなんだかすさまじく仕事が捗りまして。完成してしまいましたわ! ははは!!」

「俺がいたから気合でも入ったんですか?」

「それもあるんですが、こう、何と言えばいいんですかね? 体をこう包まれて力が湧いて来るって言えばいいんですかね? で、ユキト様がいますから、やってやるぜぇ! って感じですよ!」


 ……そういえば向こうではほとんど意味がなくて忘れてたスキルがあったっけ。一緒に仕事してる人にプラス補正を与えるってスキルなんだけど、一人仕事が多かったし、農業関係も基本人任せになってたからなぁ。


「それでこの仕事が終わったら今度からどうします?」

「でかい仕事が終わりましたからなぁ。しばらくどかっと休むんじゃないですかね? 細々とした仕事は受けなきゃならんでしょうが」

「なるほど」


 この仕事が終わって次の仕事が決まってないなら幾人か借りてサークリスの家の建設を依頼しようと思っていたのだが、これはしばらく間を空けてからの方が良さそうだ。

 たぶん、ここで俺が依頼すれば受けてくれるとは思う。だが、それでなくてもこの仕事にかなりの人数を投入していたし、建物の修理とかの仕事がたまっている可能性もある。

 ここは静かにしておいてまたある程度時間がたったらお願いしてみよう。

 しばらくは俺一人で家を建てますかね。




 こうして屋敷も完成して色々と搬入やらを行い、引っ越しを行った。

 だが、引っ越しをしてすぐ屋敷を出ると言いだした人物がいた。それはじいさんだった。


「それでどうしてすぐにここを出るなんて? 世話になれんとか言わないよね?」

「むしろ別の所に世話になりに行くんじゃからそんな事口が裂けても言えんわい」

「どういう事?」

「ほれ、ワシらはそれぞれ紹介してもらった所で場所を借りて仕事をしてるわけじゃがな。そこのじじいに一緒に暮らさないかと誘われたんじゃよ」

「老老介護?」

「ばかいうんじゃないわい!!」


 相手はどうかわからないけど、じいさんは姿かたちは確かに爺さんだが中身はまったく違って健康そのものだ。それに相手もおそらく鍛冶師なんだと思う。


「ちょっとした冗談だって」

「まったく、相手のじじいも毎日鍛冶をやっとるから元気じゃよ。で、その家の息子と孫も鍛冶を同じ場所でやっておるんじゃがな。ワシも色々教えてやっているんじゃよ。そうしたらぜひ家にって誘われてのぉ。最初は断ったんじゃが相手方の嫁さんらも賛成してくれたらしくてな」

「元々うちに縛り付ける気なんてサラサラないから好きにしてもらっていいよ」


 それに家も一軒建てなくて済むしとはさすがに言わないが、こちらに馴染んでるようでなによりだ。それに気になる事もある。


「それにしてもじいさんが色々教えるか」

「ワシだって恩くらい感じるからの」

「本当にそれだけ?」

「……最初はそれだけじゃったがな。教えるというのも中々楽しいもんじゃな」

「何人ものプレイヤーを蹴りだして弟子を取らなかったじいさんもついにか」

「なんじゃい。何が言いたいんじゃ」

「いい事だと思うよ。特にこっちなら尚更ね」

「そうじゃな。ワシらは元々この地の人間ではない。人と人との繋がりは大事じゃよな」

「あの刀が打てればなにもいらないって言ってたじいさんが丸くなって俺は嬉しいよ」

「お前はワシの親か何かか」

「状況的には保護者だったんじゃない?」

「誰が保護者じゃ」


 住む場所を提供して、仕事の仲介をして、お金もある程度渡していたのは間違いなく保護者だと思うんだけどね。

 でも、刀だけ作って作って作ってという人生で終わるんじゃないかと思ったけど誰かを大事に思えるようになったならいい事だと思う。

 どっかでぷっつり糸が切れて屍みたいになるんじゃないだろうかと心配していたのだ。でも人と人との繋がりがちゃんと出来ればそんな事もなくなるだろう。


「じいさん」

「なんじゃい」

「仲良くやれよ」

「当然じゃい。ワシは居候だぞ?」

「いつまでそう言ってられるかね」


 じいさんが大人しくなんてできるはずがない。むしろあれか? 仲良くケンカしなって感じなのかな?

 他のメンパーも早くこっちに根付けるといいんだけどね。


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