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77.問題なく

 帰還マーカーに飛び転移魔方陣を使ってサークリスへ、そして外に出て教会と繋いだ三つ目の起点転移魔方陣が敷いてある小屋へ行くとみんながそこで待っていた。


「お待たせ」

「ユキト殿? どうしてそちらからやってきたのでござる?」

「途中で父神と母神に捕まったから帰還マーカー使って帰って来た」

「なるほど、そうでござ……何言っちゃってるんでござるか!? え? 父神と母神にあったでござるか!?」

「あぁ、んで閉じ込めて来た。ミリエットの加護ってどうなってる?」

「色々ツッコミたいでござるが、ちょっと待つでござるよ。……まだ母神の加護がついているでござるな」

「それなら向こうの使徒もまだ加護つきか」


 俺はそういいながらミリエットの髪を撫でた。さてどうやったら上書きできるかね? 最悪おそうという手もある。記憶がどうなるかわからないけど、おそらく許してくれるだろう。最終手段なので使いたくはないけどな。


「……だからユキト殿。もう少し常識というものを……」

「ん? どうかしたか?」

「加護の上書きを撫でるだけでしないでほしいでござる」

「……俺としても予想外だよ」


 二人を閉じ込めた事で加護の上書きややりやすくなったのか、俺が上書きしたいという想いが強かったのか、はたまた最初からだいぶこちらよりだったが、俺と距離を置こうとしてた為に少し離れていたのが災いして加護をギリギリで向こうにつけられたのか……。

 まぁ、気にしない事にしよう。とりあえずミリエットを俺が背負い直して家へとみんなで飛び、そこから歩いて屋敷へと帰るのだった。




 いつものようにカヤが出迎えてくれた。しかし、エリナ達やアルル達はダンジョン攻略も兼ねた訓練に行っているとの事でとりあえずシーリアにまずは紹介をしておく事にした。

 ミリエットは未だ眠っているので俺の部屋に寝かせ巫女に様子を見てもらっている。


「紹介してもらったのはいいけどこれからどうする?」

「人数も多くなったし、じいちゃん達は向こうの屋敷が完成次第、里の方に移ってもらうよ。じいちゃんなんかは里の方がいいだろ?」

「当然じゃな。あそこならちゃんとした刀を打っておるしな」


 刀鍛冶という名前ではこちらの世界ではどうなのかと聞いたらじいちゃんでいいと言われたのでじいちゃんと呼んでいる。名前からもわかる通り元々刀鍛冶をしていたが、一度倒れてからはまともにできなくなり、VRMMOで再び刀を打つべく始めた人だ。

 この世界において刀を打っている場所は里くらいしかない。じいちゃんがそこに行きたがるのは当然だと思う。


「とはいえじいさんも材料が無きゃ作れないんだから、俺達と一緒に森に潜るだろ?」

「そうじゃな。わしら三人じゃとちとどうなるかわからんから、嬢ちゃんも付き合ってくれるか?」

「いいですけど私、索敵は苦手ですよ」

「それは私が引き受けよう。魔物をかいくぐり素材を採取するのに鍛え上げたからな」


 ゴッツさんが言っている森はもちろんサークリス南の森だ。三人は純粋な生産職だが自力があるので問題ないと思う。きつそうならコウシロウでもつけてやれば問題ないだろう。


「でも、屋敷を提供してもずっと面倒を見る訳ではないだろ?」

「腕いい職人だから問題ないよ。アルル達の方が問題ではあるんだけど、俺達が中間に入って素材をギルドに売ればいいかなって思ってる」


 武器や防具、道具は商業ギルドを通して売ってもらえばいいと思ってる。問題はアルル達で下手に冒険者登録してしまうとその実力で目立つことは確実だ。そうなるとせっかく逃げて来た意味が薄れてしまうので登録はお預けだ。

 姿に関してはアクアにかけていたような幻術で姿を変える魔道具をすでに渡してある。渡してなければ好きに外を歩けないしな。


 その後帰って来たみんなにまた紹介しなおしたりしていた。

 そして夕方ごろにようやくミリエットが目を覚ましたと報告があったのでとりあえず俺が様子を見に行く事にした。




 ノックして中から声が返ってきたのを確認してから中に入る。そこにはベットのふちに所在なさげに座っているミリエットがいた。


「目が覚めたみたいだな」

「ユキト……さん? でも年齢が……」

「死んで転生したから今は十五だよ。こっちに来てからどこまで覚えてる?」

「死? 転生?」

「それに関してはまた後で説明するよ。それでどうかな?」

「えっと……一日中言われた通りに魔道具を作ってた……と思います。なんだかボーっとして夢を見てたような気分ですけど」

「そっか、体に何か問題はある?」


 俺はミリエットの横に座る。見た目はお色気お姉さんだが、実際にはその見た目のせいで人の視線を気にするしぎる事のある、少しおどおどしてる所のある子で、気弱な所もあるのだ。

 昔の事を考えると少し躊躇う気持ちもあるが、今はそばに居てあげるべきだろう。


「たぶん、大丈夫だと思います。でもいったい何が?」

「アルル達に頼まれて数人を教会から連れ出してきたんだよ。その途中でミリエットを見つけてね。母神の加護で洗脳状態だったけど放っておけなくて連れて来たんだよ。今は特に何事もなく俺の加護がついてるからもう大丈夫だよ」

「ユキトさんはまた私を助けてくれるんですか? 勝手に言いたい事だけ言って受け入れてもらえなかったからって勝手に出て行った私を……」

「嫌いだから振った訳じゃないからな。困ってるなら手を貸すさ。今回はだいぶ強引だったし、最終手段も強引以外の何物でもない加護の上書きを考えてたし」

「そうなんですか?」

「色々試してダメだったら抱いて無理やりでも寵愛つけて上書きしようと思ってた」

「抱き!?」


 実は向こうで出会って三ヵ月くらいの時に告白されていた。ただ、年齢差もあれば収入も少なく病気持ちってのもあって断ったのだ。

 いや、そんな風に自分に自信がなかったからこそミリエットに変な目を向けなかった訳で、それが好意をもってくれた理由だというのは皮肉というかなんというかと言った所だろうか?

 今現在は環境が満たされ過ぎているのでそういう目をわざわざ向けなくてもいいという感じだ。


「あくまでも最終手段だし、仮にも告白してくれた子がよくわからない連中に捕まってるくらいならいっそって感じでな。とはいえけっきょく軽く撫でたらそれで上書き出来たけど」

「……胸を撫でたんですか?」

「いや、髪をなでただけだから、夜になれば誰かしら一緒に寝るからむやみやたらと触る必要もないし」

「……もしかして、もう、彼女が……?」


 ミリエットは少し俯き悲しそうな声でそう言った。ちゃんと俺の言葉を聞いていたなら彼女がという一人を指す言葉を使わなかったと思う。それは向こうでの価値基準があり、一緒に寝ると言ったインパクトに流されたんだと思う。


「現状で嫁が四人、嫁候補が一人、それと俺の子種提供って事で他に数人いるかな」

「え……。え?」


 嫁は言わずと知れたエリナ、ミヤビ、スイナ、シーリア。候補はトウカ。他は巫女だ。この他に候補予定者でカヤが入っているが気にしてはいけない。

 そしてミリエットの困惑してる様子もわかる気がする。惚れてた男に助け出されてみたら、抱こうと思ってたと言われて、さらに複数の女性と関係を持ってると言われれば当然の反応だろう。


「その色々と納得できない事はあると思うけど、その……異世界ですし」


 むこうの常識がある状態では受け入れられないのは分かるが何か反応がほしかった。おそらく今色々な事を考えているか、もしくは本当にただ真っ白になっているのか……。

 しばしの沈黙が降りた。その沈黙を破ったのはミリエットだ。


「増えても大丈夫ですか?」

「えっと、何が?」

「お嫁さんにしてくださいとは言いません。そばに置いてもらえますか?」

「えっと、そこは不潔! とかの否定的な意見が出てくるものではないのかな?」

「ダメ……ですか?」

「ダ、ダメじゃないダメじゃないけどとりあえずみんなで相談しようね? ね?」


 もう泣くよ? って感じで目にいっぱいの涙をためて見られたらこう答えるしかないじゃないか。いったいどうなることやら、いや、結果は見えてるけどね。

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