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75.予想通りに進まない

 その後、今後の住む場所とかの話もして、準備もサクッと終えてやってきました聖教国。


 相方が猿の字と言う事でこの世界で初めて全力全開というのをやってみた。その結果猿の字がまったく追ってこれなかったので背負って移動する事になった。男を背負うというのは正直あまりやりたくはないが、助けを待つ四人の為、帰りを待つ嫁の為、ちゃんとお留守番してるねと気丈に言うカヤの為速度を重視した。


 当然のように関所は無視した。ある程度離れた所から空中を走りながら突破した。移動速度の事もあって道中何か問題にあたる事もなかった。もちろん聖都にはいるのも無断侵入である。


「拙者一ヵ月以上かけて王都に行ったのでござるが、三日で聖都に戻って来れるとは思ってなかったでござるよ」

「猿の字が休憩とか言わなければギリギリ昨日にはついてたんじゃないか?」

「何時間も男に背負われ続けるというのは精神的苦痛が計り知れないでござるよ!?」

「俺は逆の苦痛を味わってたんだ。それくらい我慢しろ。しかし、聖都まで来たのはいいけど転移魔方陣敷くならどこがいいかな? 神のお告げすら誤魔化せるとはさすがに思えないしやっぱり外に小屋を建てて偽装して自爆装置でもつけておくべきかな?」

「それなら聖都内でも問題ないのではござらんか?」

「町中だと契約とか色々しなきゃならないだろ? それとも教会のどっか使われてない部屋でも探して占拠するのか?」

「それなら拙者が一つ占拠して隠れ家に使っている部屋があるでござるよ。むやみやたらに権力の象徴として増築してるようでデットスペースがや空き部屋がいくつもあったでござるよ。そこを使われるといいでござろう」


 さすが忍者、そういうのは得意なようだ。元々離反する気満々だったとしたらその準備くらいはしておくといったところだろうか? しかし、よりにもよって教会の中か……。

 魔石は十分すぎるくらいある。エリナ達がダンジョンに潜り三割をギルドに売っているがそれだけで市場に影響が出ないギリギリの量に抑えてるという。

 今回の事でとんでもない移動速度を確認できたので、連合国や帝国にあるダンジョンにも転移魔方陣を敷きに行ってもいいかもしれない。

 アルル、コウシロウ、猿の字、アルテミアの四人組でパーティ組んで行ってもらえば魔石や素材の稼ぎは飛躍的に上がるだろうし、さらに上位のダンジョンにも潜れるかもしれない。


 思考が遠回りしたがつまりどういうことかといえば、今までこれくらいあれば十分だろ? と思っていた所を全力で魔道具を作ろう。消費魔力がおそらく跳ね上がるけど魔石大量投入してやろう。

 乗り気ではなかったけれどだからこそ、色々と収穫のある旅になりそうだ。


「ユキト殿? 邪悪な笑顔が浮かんでいるでござるよ?」

「いやいや、もう色々なものが揃って来たしいつでも回収できる環境もできたし自重する必要はないかなってね」

「ユキト殿が自重? 自重でござるか? 拙者でも感知できない魔道具による隠ぺいができるユキト殿が、あのジェットコースターなど目じゃないようなとんでも速度で移動していたユキト殿が自重でござるか?」

「家の魔道具ってあれでも、魔石の消費を考慮して作ってるんだぞ。今回は神のおひざ元に敷くんだ。神をも欺く魔道具が必要だろ? 出来るかどうか知らないけど」

「おそらく使徒程度なら今までのものでも十分欺けるでござるよ」

「とはいえ全力で挑む所存」

「……お任せするでござる」


 そんなわけで日はまだ高いが宿に入り魔道具を作る事にした。今までは効率の為にこれは切ろう。ここをこうすれば効果が高くなるけど消費量も多くなるから切ろう。そんなことばかり考えていた。

 しかし今回は逆だ。ひたすら効果を高める事をする。それでも限度はあるだろうけどはたしてどこまでできるか。

 終始ニヤニヤしながら俺は魔道具を作っていた。


「ユキト殿の顔がどこぞの悪代官のような笑顔になってござる……。情報収集にでもいってくるでござるよ……」


 俺は猿の字がいつ出て行ったのかも気づかない位、目の前の魔道具作りに没頭していたのだった。




 翌日、出来上がった魔道具を見て俺は思った。


「すごいとは思うけど効果を実感できない」

「すでに拙者が気がつけない魔道具でござるからな。それがグレードアップしたからと言っても誰もわからないでござるよ」

「言われてみれば確かに……」


 手持ちの中で質のいい魔石を使って、複数の魔石に分散させていたものを集約、一つの魔道具としてみれば魔石の消費量は多いが、複数使ってた物が一つになったという点で全体の消費量は多少増えた程度だ。


「それじゃ、今日の予定は昨日猿の字が言ってた部屋に行って転移魔方陣を敷いて、連れて来て逃げる訳だな」

「そうでござるが中々難しいでござるよ。アルテミア殿は休憩などで手が空く事もござろうが、他の三人は中々一人になる時間がないでござる」

「それに関しては考えてある。アルテミアだけはどうしようかと思ってたけど、先に確保できるならアルテミアを確保した後で、上空にフレスベルグの幻影を出現させて町中で暴れさせる」

「それは……ばれるのではないでござるか?」

「幻影の核にはフレスベルグの羽を仕込むし、暴れさせると言っても上空旋回してから大通りに急降下風圧で人をふっとばすくらいしかやらないよ」

「……幻影でござるよね?」

「神を冠する種族の使う幻術によって生み出される幻影だぞ? 幻でも人は殺せるさ」

「それとフレスベルグの羽はどうするでござる?」

「はい、これ」

「……すでに持ってるでござるか。どうやって倒したのでござる?」

「魔法で頭ふっとばした」

「ユキト殿はありとあらゆる常識を超えた場所に居るのでござるな」


 俺もあの時は引いたけどな。あのランクのボスが一撃で頭フッとばされるとか思ってもみなかったのだ。ステータスは上に行けば行くほど一上がった効果が大きかった。数字以上に俺のステータスは化け物じみてるはずだ。

 まぁそれはそれでいいとしてだ。


「それじゃ作戦開始と行きますか」

「承知したでござる」


 俺と猿の字は教会へと侵入するのだった。




 無事に転移魔方陣を敷くまではよかったのだが、少し予想外な事が起こっていた。


「猿の字……一人にならないじゃないか。しかも夜になればと思って待ってたのにけっきょく部屋にメイドが常駐してて連れ出せないぞ」

「さすがに拙者もこの状況は考えてなかったでござる」


 そう、アルテミアには常にだれかついていたのだ。表向きにはお世話なのだろうが、どうにも監視してる様な気がする。

 アルテミアの連れ出しタイミングを猿の字に任せて他の使徒の様子も見てきたのだが、愚痴すらなくひたすらに働いていた。

 第一目標がアルテミアたち四人なので他は放っておいているが助けてやるべきなのかな?


「どうする?」

「どうしたものでござろうか……」

「仕方がないプランBで行こう」

「初めて聞いたでござるが?」

「仮にうまくいかなかった場合にどうするか。さっき考えた」

「……と、とりあえず内容は?」

「昨日マークしておいた魔法抵抗の弱そうな使徒を幻術で派手な演出をして電撃で強制的に眠らせる。教会内がバタバタしてる間に被害者を増やしつつ、身柄を確保して撤退」

「強引でござるな」

「よくよく考えたら町の人って関係ないからわざわざ巻き込む必要ないかなって思ってな。それに教会が予想を遥かに超えてでかかったから、わざわざ外に誘い出さなくてもよかったかなって思ってな」


 当初外で騒ぎを起こすのは町の人には悪いが距離を稼がせてもらおうと思ったからだった。それが自分の中にある教会よりもはるかに大きな建物がそこにはあった。

 そういえば猿の字が増築してるって言ってたっけ? とそこで思い出した。だが時間もないし作戦を考えることは出来ないと思っていたらこれだ。

 ただ単純にこっちにいる使徒がどんなもんか確かめたかっただけだったが、予想外な形で役に立ってくれそうだった。


「やるでござるか?」

「訓練中だが問答無用派手に行くぞ。楽しい劇の始まり始まりって事だ」


 なんだか楽しくなって来たのでちょっと派手に楽しくやろうと思う。それにこっちの人が悪い訳じゃないが人を隷属させるような神にはちょっといたずらをしてやろうと思った。


「ユキト殿……何か悪い事を考えてるのではござらんか?」

「何バカな事言ってるんだ? 俺がこれからするのは悪い事に決まってるじゃないか」


 そして俺は劇を始める。


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