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74.出撃命令

「お兄ちゃん! おかえりなさい!」

「「「おかえりなさい」」」

「ただいま」


 カヤが飛び込んで来るのはすでにいつもの事だ。他の巫女も負けじと出迎えようとするが、何度かそのまま帰って来ずに空振りしてトウカに出迎え禁止を言い渡された。

 仕事を中断してやってるのだから当然と言えば当然と言える。

 そんな中なぜカヤはいつもしているのか? それは空振りになった時は必ずカヤは普通にお手伝いをしていた。そしてカヤが扉の前で待ってる時間は極めて短くすでに感知から予知の域に達してるのではないかともっぱらの噂である。


 そしてやはり、エリナ達も出迎えてくれた。大丈夫だと思っていても心配は心配だったのだろう。


「ユッキー……そんな小さな子にまで手を出してたなんて」

「うっさい、黙ってろ。蹴り上げるぞ?」

「師匠! 想像しただけで気絶しそうです!」

「お前も黙って様な?」

「イ、イエス」


 とりあえずバカ共は黙らせておいた。それとこの場で話すのは少しまずい。みんなは誰? と説明を求めてきているが、まずするべきは移動だろう。


「カヤ、トウカに言って緑茶を用意してくれるように言ってきてくれるか? 俺達は応接の方に行くから」

「うん、お母さんに言って来るね」

「ミヤビはシーリアを呼んで来てくれ。今回の事はここで話を止めておくのはまずいかもしれない」

「わかりました」


 こういう頼みごとをする時はいつもミヤビにするようにしている。ミヤビは屋敷の中においてお世話される方の立場に居る。しかし、ミヤビは尽くすことを基本として育ってきている。その為こうやって小さなお願いはミヤビにまわす。そうすると自分が必要とされているのがわかって安心できるし、嬉しいみたいだ。


「それじゃ俺達は応接の方で待っていようか」


 俺は三人を案内して応接へと向かった。エリナとスイナは黙ってついて来てくれる。聞きたい事はあるんだろうけど、全員が揃ってからと思ってくれているのであろう。できた嫁さん達である。




 シーリアもやってきてお茶も出そろった。さてそれじゃぁ自己紹介でも


「緑茶……おいしいでござるなぁ……」

「こんなおいしいお茶飲んだの初めてかも」

「師匠! おかわりもらってもいいですか!」

「わかったわかった。トウカついでやってくれ。それじゃ紹介するけど、そこの語尾ござるが猿造、女装がアルル、うるさいのがコウシロウだ。それで三人とも使徒になる」


 三人からもう少しまともな紹介はないのかと言われるが無視だ。そして周りは使徒と聞いて場に緊張感が生まれるが、それに気付いているのか無視しているのか使徒三人組はのほほんとしてる。一番戦闘力の低い猿の字ですらミヤビよりも強いのだから気にするほどの事でもないのは当然と言えば当然だ。


「ユキト……それは事実か?」

「もちろん。とはいえ他の使徒が母神と父神の加護をもらってるのに対してこの三人はどういう理屈か知らないけれど俺の加護があるらしい。だから安心していいと思うぞ。それに三人とも向こうでは知ってるから大丈夫だぞ」

「知ってるとか他人行儀な。私達は幼馴染じゃない」

「弟子も知ってるという軽い関係ではないかと思います!」

「はいはい、そうですね。そういう訳で警戒しなくても大丈夫だぞ」

「……そうだな。ユキトが警戒すべき人をここに招くことなどするはずがないな。過保護なくらい皆を守っているものな」


 なんだかんだでシーリアも俺の事をわかってきている。それに過保護は俺だけではない。王様も色々と手を回しているのでこの王都で俺達に手を出せる存在は今のところ居ない。


「はい、ユキトくん質問です」

「エリナどうした?」

「アルルさんの事、女装って言ってたけど男の人なの?」

「見た目も話し方も声も女性だと思うだろうけど、正真正銘男だぞ」

「しかもこれで好みはノーマルだからね」

「だから危険なんだろうが……それはともかくこちらの紹介もさせてもらうよ」


 そう言って俺はエリナ達や同席していたトウカやシーリアのお付きのメイドも紹介した。ちなみにシーリアやメイドにも俺の前世の事は話してある。

 ついでに三人がなぜやってきたのかも説明した。


「つまり、ユキトが本人かどうかを確かめて助けを求めたが、住む場所は提供してやるから自力で逃げてこいと言われたと言う事か」

「逃げの手段を用意したんだから十分だと思うんだけど」

「今後の事を考えるとあちらの国に一瞬で行ける転移魔方陣があるのは非常に魅力的なのだが、どうだろう?」

「先手を打っておくのは確かにいいかもしれないけど、あんまり長い事離れるのは正直嫌だ」

「今回は救出が優先だとすれば行く人数は少ない方がいい。むしろユキトとそっちの使徒の誰かとで二人で行くのが一番いいだろう」

「そうしたら俺と猿の字で決定じゃないか。出来れば行きたくないんだけど」

「なぜそんなに嫌がる? 普段ならしょうがないとか言って行きそうなのに」


 シーリアにはきっちりばれてるようだ。むしろ使徒以外の全ての人がうんうんと頷いていた。メイドさんまで俺の事を理解し始めてるらしい。


「どういうことですか?」

「何か私達には言っていない理由で行きたくない事があるのだろう? ほらさっさと言ってしまった方が楽になるよ」

「いや、ほら、聖教国は母神と父神のおひざ元だろ? なにか起こるんじゃないかなぁと……」

「そう感じるのかい?」

「いや、そう俺が思ってるだけだけど」

「それなら行くだけ行けばいいじゃないか。感じ取っているなら能力で危機を感じてる可能性はあるけど、思っているだけならただの思い込みだろ?」

「そして、転移魔方陣を敷いてこいと」

「出来たらお願いしたいけどね。出来なければ救出だけしてくればいい。君が直接乗り込んだ方が成功率は上がるだろうし、相手方も安心できるんじゃないか?」

「まぁそうだけど」


 いつも嫌な予感がするときはそういう風に感じるのだが今回は、なんといえばいいのだろうか。ケンカしてちょっと顔を合わせにくい人がそこに行くといることが多いからあんまり行きたくないなぁという程度のものだ。


「ユキトくん、行って来たら? 今回は私達は待ってるから」

「エリナ」

「行ってきてください。私達は私達の出来る事をしてお待ちしてます」

「ミヤビ」

「ユキト君なら無事帰って来るって思ってるから、行ってきて」

「スイナ」


 ……誰も引き留めてくれないのがちょっと寂しいと思うのは俺のわがままだろうか? 今後あれば便利だろうとは思うけど、使徒として誰が来てるかによっては逆に乗っ取られたりしそうなのが怖い。接地は出来なくてもアルル達は使えた。そうなれば乗っ取りは可能かもしれないし。

 ……転移魔方陣に関しては置いておく事にしよう。とりあえず今は行くか行かないかだ。そしてこれだけ後ろから押されてしまっては行かざるを得ない。


「わかった。行って来るよ。その代わりアルルはエリナとスイナを、コウシロウはミヤビを鍛えてあげてくれ。魔法の知識や腕はアルルの方があるだろうし、ミヤビは俺以外との対人戦闘経験をもっと積んでおくべきだろうし」

「ユッキーが行ってくれるならそれくらいはお安い御用だよ」

「けっきょく連れ出すのは猿造さんの役目になってしまい、俺達じゃ役に立ちませんもんね!」

「私は帰還マーカーに飛べるから役に立つでしょ? 役立たずはコウシロウだけだからね」

「ひぃ!? す、すみませんでした!」


 なんかコントやってる二人がいるけれど、行くとなれば全力を尽くす所存。猿の字が同行者だし多少の無理は問題ないよな?


「……ユキト殿? 悪い顔をしてるでござるよ?」

「猿の字なら大丈夫だよな?」

「何がでござるか!?」

「攻撃力をそこそこに足の速さと頑丈さを取った猿の字ならきっと潰れないよね」

「昔ならいざ知らず、今のユキト殿の能力は拙者には見えないくらい上位にいるのでござるよ!? む、無茶を言わないでほしいでござる」

「そうなのか? レベルが五十相手の方が上だと見えなくなるんだっけ?」

「そうでござるよ。拙者とて五百カンスト組でござるよ? それが見えないとなるととんでもないでござるよ……」


 おそらく、元もレベル五百にプラスして現在のこの体のレベルもプラスされている為だと思う。それに神様補正も入っている。でもそうだ。ちょっと見てもらおう。


「猿の字。このスライムのステータス見れる?」

「ふむ……ユキト殿の眷属でござるか。レベルが四百近くまで上がってるとか頭おかしいでござる」

「うるさい。それで種族は?」

「フォックススライムでござるな。それに七十以上のステータス補正がされているでござるよ? これはいったい……」

「ちなみに彼女らにも何かしらの加護はついてる?」


 猿の字達についているのであればエリナ達にも当然ついていると思うのだけどどうなのだろうか?


「そちらのメイド殿達はユキト殿の加護がついているようでござる。他の方々は寵愛でござるな。加護持ちが補正値が七、寵愛で五十もの補正……とんでもないでござるな」


 これは色々と猿の字に見てもらうと捗りそうな気がしてきた。とりあえずまずは刀鍛冶さんら四人を連れてきますかね。


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