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67.順調に開花中

 九月二日、俺達は百階に到達し百一階の様子を見て戻って来た。


「一階にいた魔物の上位種ばっかりだったな」

「これからはこういう感じなのでしょうか?」

「いや、たぶんほとんど進化済みで新しく生まれても喰われるだけなんじゃないのかな?」

「そうだとしてこれからどうするの? 依頼はすでに達成されてる訳だけど」

「ん~……ここまでたどり着けるパーティはしばらくはないよな?」

「スイナさん達が九十階止まりで五十年以上更新されてないんだから誰もたどり着けないんじゃないかな?」

「そうすると……ここに転移魔方陣を敷いて直接来れるようにしておくのもいいかもしれないな。魔石の確保もしやすくなるし」


 俺の使ってる魔道具は省エネ設計とはいえ元々が強力な魔道具なので魔石の消費量はどうしても多くなってしまう。だったらここで集めやすい環境を作っておくのもいいかもと思ったのだ。


「ですがそれは危険ではないのですか? もしもカヤがここに飛ばされたりしたら……」

「もちろん今使ってる転移魔方陣とは別系統で新しく道を構築するよ。具体的にはサークリスの小屋の横にもう一棟小屋を建ててそことの直通にする。万が一もないとは思うけどこうしておけば確実だろ?」

「それなら安心ですね」

「でも、ケルピーネアで転移魔方陣を敷かなかったのはなんで?」

「あそこは偶然たどり着ける場所だし、さすがに安全地帯以外には敷きたくないからね」

「そうするとここは丁度いいって事?」

「六十階以降は上位種がちょくちょく出てくるから、一旦全滅させてリセットしておいた方がいいと思うし、経験値稼ぎにもいいと思うしな」


 そうと決まればと手持ちの道具でちゃちゃっと新規の転移魔方陣を作ってしまう。そしてそれを敷き第二ルートの転移魔方陣の元に設定しておく。元はいくらでも変更できるのでとりあえずこれはこのままでいい。


 俺がこうして仕事してる間にも三人は戦闘訓練をしていた。今現在の戦力で言えばミヤビがおそらくこの世界出身者で頭一つ抜け出た強さを持っている。

 エリナはパワーレベリングの影響で他の人から見ると色々と不自然に見える尖った存在だ。

 スイナは地道に重ねて来た物があるとはいえあくまでもこの世界の中の常識で育った人だ。知識と経験でエリナの上に立っている感じだ。


 それでも単独の魔法の威力だとヴァルキリーを使えるエリナの方に分があるんだからとんでもないと思う。お忘れかもしれないがエリナは回復が本来の役目だ。忘れてはいけない。


 全てが一通り終わった所でいい時間になってたので夕食を済ませてそのまま寝る事にした。このまま王都に帰るのはさすがにまずいのでここのギルドに顔を出すのだ。

 解体もあるし明日は挨拶と解体のお願い。そして明後日には王都に帰るというのが俺達の間で決めた事になる。




 翌日俺達は石碑を使って町に戻りギルドへと顔を出した。


「おはようございます。到達階層の報告に来ました」

「生きて帰って来たんですね! 良かったですよぉ」

「あれくらいなら死んだりしませんよ」

「何日潜りっぱなしだと思ってるんですか! 普通は二日か三日で次の石碑のある場所に行くか戻るかするんです! それをそれを……」

「あぁ、ごめんごめん。とにかく進む事しか考えてなかったからさ。でもほらこれ見てよ」

「どれを見ろと……えっと……百一?」

「とりあえず様子見で階段降りてすぐに戻ってきたけどね」

「ど、どんな様子でした?」

「一階にいた魔物の上位種が混ざってたかな」

「……詳しいお話を聞かせていただけますか?」

「とりあえず解体場に行きたいかな? 俺達が確保して来た魔物を出すから話はその後でもいいだろ?」

「そうですね……。わかりました。ご案内します」


 俺達は解体場に案内されてそこで魔物を出した。俺はそのまま解体場に残り追加と解体の手伝いを、エリナ達は別室へと案内されてダンジョン内の様子を報告する事となった。


 予定は狂い、一日で終わらせる予定だった作業は向こうの要請により二日ほど伸びてしまった。向こうとしては更なる調査を依頼してきたがそれは断った。

 帰れる準備ができてるのに帰れないというのはかなりストレスがたまるのだ。元々自分勝手に動いていたし、早く帰ってカヤの頭を撫でてやりたいし、屋敷を空けた間の事をトウカやシーリアに聞いたりしたい。


 そんな訳で断った後はさっさと町を出て帰還マーカーに向かってみんなで飛んで王都へと帰還したのだった。




 屋敷に着くと門番をしてる人が驚いていた。


「おかえりなさいませ。ずいぶんとお早いお帰りですね。途中で何か問題でもおこりましたか?」

「いや、問題なく済ませて来たよ」

「え……? そ、そうですか。おつかれさまでした!」


 普通なら馬車で移動していたら今頃ついただろうか? そんな事を考えながら中に入ると小さな影に突撃されたので、それを黙って受け止める。


「おかえりなさい!」

「「「「「おかえりなさいませ」」」」」

「ただいま。よくわかったな」

「あっちにいたのがこっちにピョンってなったから待ってたの!」


 周りを見ると巫女達がずらりと並んでいた。そう言えば巫女には神狐特化の感知があるんだったっけ。……あれ?


「ミヤビ、もしかしてカヤはすでに巫女なのか?」

「おそらくユキトさんの影響を強く受けて巫女としての資質をすでに開花させているようですね」

「私も巫女なの?」

「修業はしてないからまだ巫女ではないけど、がんばればなれるよ」

「ならがんばる!」


 もっと遊んでいいんだけどなぁというのが俺の意見だ。というかこっちの人って目標があるとけっこう突き進む傾向にある気がする。

 もっとゆとりを持っていきましょうと思う。出来れば普通のデートに俺と出かけてくれるくらいの余裕をもってほしい。

 しかし、がんばります! は感染でもするのかスイナすら鍛え直している。エリナがすぐ後ろにいる状態じゃのんびりできないのも理解できるけど、いつも休もうね? って言ってたのはスイナじゃないか。と、思わないでもない。


「ずいぶんにぎやかだと思ったら帰って来ていたのか。おかえり」

「ただいま。問題はなかったか?」

「父が一度来たけどそれくらいだな」

「それはある意味大問題だと思うんだが」

「少し世間話に来ただけだ。気にする事はない。だけど君の冒険譚は気になるから後で話をきかせてもらえるかな?」

「わかった。だけど明日な。今日はこのまま休みとして妹とのんびりさせてもらうよ」

「妻より妹か。それもまぁ仕方がない事か。エリナ、ミヤビ、スイナも彼以上に疲れているだろう? ゆっくり休むといい」


 そう言ってシーリアは部屋へと戻って行った。王が訪ねて来た用件は緊急性はないけど話しておくべき事と思ったんだろうと思う。


「えっと、お兄ちゃん?」

「俺達はこのまま休みに入るけど、俺の相手をしてくれるか?」

「うん! あ、でもまだお手伝い中だった……」

「なら部屋に居るからお手伝い終わらせてトウカに報告してくるといい。部屋で待ってるからな」

「うん!」


 そう言ってカヤは走って行った。巫女達もその場を離れそれぞれの仕事に向かった。


「ユキトくんは、カヤちゃんには甘いよね」

「孤児院でも年下の子の面倒はよく見てたしな。年上の面倒も見てたけど」

「想像できるような気がするよ」


 そんな訳で今日はこのまま休むことにした。依頼の関係で一度王都のギルドでも報告しておかないといけないが、確認作業があるので達成と認定されるまで時間がかかると思う。

 明日はシーリアと話をしてギルドにも行く。時間があったらサークリスで小屋も建てて転移魔方陣もやっておきたいなと思った。

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