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64.国からの指名依頼

 翌日、朝食の後にやってきた巫女達を家の人達に紹介した。突然屋敷の中に現れた巫女達に驚いてどのように入ってきたかと言われたが、秘密のルートとだけしか言わないでおいた。


 転移魔方陣を隠しておきたいなら巫女達をここに呼ばない方がいいのはわかっているが、彼女たちは俺の為に働きに来てくれている。その彼女たちを住む事のなくなったあの家の管理だけをさせるというのはどうしてもできなかった。

 特級にも上がったし、相手の実力も見てしまったので脅威には感じない。もちろん身内に手を出すという手段もあるが、それができないように手段も講じているしなんとかなるだろうと思っている。


 セルスなどはそれでもしつこく聞いてきたが、


「気にするな。何かするなら彼が動いた方が早いんだ。それに……」

「……承知しました」


 それに、の後はセルスの耳にシーリアは口を寄せて呟いた。あれはすべて失敗したんだろ? もしかして私がああいうものに気が付かないと思ったのかい? 先をこされてしまったがね。と、言っていた。

 シーリアは聞こえているとは思ってないだろうけど、こっちはばっちり聞こえる範囲だった。


 シーリアもあれらには気が付いていた訳だ。それをどうにかする算段をつけてるうちに俺がやってしまった訳だ。そうなると別の問題が出てくる。


「シーリア」

「どうした?」

「セルスの紹介元は?」

「父だな」

「なるほど、帰ってきたらゆっくり話をしようか。狐人族は耳がいいからね」

「盗み聞くのは趣味が悪いぞ?」

「聞こえてしまったんだから仕方がないだろ?」

「仕方がない旦那様だな。私も色々気になるしゆっくり話そうか」

「あぁ、それじゃ俺達はギルドに行ってくるよ。いってきます」

「いってらっしゃい。……ふ、こういうのも悪くないな」


 シーリア達に見送られながら俺達は冒険者ギルドへと向かった。さてさて、特級の四人パーティへの依頼とはいったい何だろうね? 出来ればあまり家を離れないで済むものにしたいけど、特級の依頼だし難しかもしれない。移動速度もスイナに合わせるから遅くなるだろうしな。




 ギルドについた俺達はスイナのお勧めの受付嬢の所へ行き、依頼内容を聞いてきた。

 なにがどうお勧めだったのかはすぐに分かった。


「特級へのカード更新三人分に国からの指名依頼。これだけの事を笑顔のまま淡々と有無を言わさず手続きを終えるってすごいなぁ」

「誰に対してもあの態度で鉄壁の笑顔って言われてたよ」

「そうなのか」

「それよりユキトくん」

「どうした?」

「こっちって冒険者区画の家の方向だよね?」

「そうだけど?」

「こっちでいいの?」


 まだ向こうの屋敷になれてなくて帰り道間違えたとでも思われているんだろうか? まぁそう思われるのもしかたがない……のか?


「依頼の事を話すならこっちの方がいいかなって思って。一旦屋敷に帰ってから移動してもいいんだけど、そんなに急いでるわけでもないし、のんびり散歩がてらと思ったんだけどどう思う?」

「咄嗟の言い訳?」

「道間違えてこっち来ちゃったわけじゃないから……」


 やっぱり勘違いされてた。私はわかってるからねみたいな顔してるスイナは確実に勘違いしてる。ミヤビは苦笑してる。どっちだ? どっちの意味だ?

 そんな風にして家へと向かって行った。




 家の中に入っていくと中で巫女が寛いでいた。


「こんにちは」

「ふぇ? こんにちは~……ユキト様!?」

「お邪魔させてもらうよ」

「ど、どどどどどどうぞ! あ、お茶! お茶をご用意しますね!」

「四人分頼むよ」

「お任せください!」


 勢いよくお茶を取りに行く巫女を微笑ましく見送る。そうするとエリナが質問して来た。


「あの子は?」

「こっちの家は基本巫女達の休憩室代わりに使っていい事になってるんだよ。向こうじゃ一休みするのも大変だろうと思って。説明してなかったっけ?」

「されてないと思うよ」

「そうだったか。悪いちゃんと言っておくべきだったな」

「気を付けてね?」


 ウメさんへの話をしに行ったミヤビには話しておいたがすっかり忘れていたようだ。さっきの巫女がお茶の用意をしてくれて、そばに控えた。

 それでは依頼について話をしようか。


「それで依頼の話をしようと思うんだけどまさかアルバーザルダンジョンに潜って到達階層の更新をして、情報を集めて来るなんて依頼が来るとはな……」


 アルバーザルダンジョンはよくある小説ネタっぽいダンジョンで五階毎に誰でも使える転移用の石碑があり、十階毎にボスが居るダンジョンで素材などを回収できるために都市が出来上がってるダンジョンだ。


「到達階層が九十層って言ってたっけ?」

「懐かしいな。それ私がいたパーティが五十年くらい前に到達した階層だよ。そこから誰も更新してないんだね」

「九十層か……」

「ちなみにユキト君の知識だと何階まであるの?」

「向こうと同じだと三百階まであるんだよなぁ」

「「「「三百!?」」」」


 巫女も一緒に驚いてた。あのダンジョンの深さはあっちでもみんな驚いてたからなぁ。ただ、正直イマイチだった。百階以降はけっきょく期待外れだったし。


「向こうと一緒だと百階以降は降りる意味がないんだよなぁ」

「どうしてですか?」

「また一階とまったく同じで魔物の強さだけ上がってずっと同じ、二百以降もまた同じなんだよ。だから素材はあまりにもおいしくない」

「それは……」

「まぁ、手間が少ないと思えばいいかな? 俺の知識がそのまま使えるかもわからないし、今日はこのまま食料の買い込みをして屋敷に帰る。明日からアルバーザルに出発するって事でいいかな?」

「ユキト君、馬車とかはどうするの?」

「え? 走るけど」

「普通は馬車に乗せてもらったり個人で持ったりして移動するんだよ?」

「でも、スイナさん。私達いつも走ってるよ?」

「……ユキト君?」


 そんなに睨まれても困ります。必要性を感じなかったのだからしかたがないし、元々鍛える目的もあるのだ。魔物は俺が寄せ付けないしな。


「いや、必要なかったし」

「必要ないって……」

「スイナさんスイナさん、私達の依頼達成の仕方覚えてる?」

「それは……そういう事なの?」

「うん」

「……私ついていけないよ?」

「がんば」

「気合じゃどうにもならないよ! ここは大人しく……ね?」

「ダメそうなら背負うからがんばろうかスイナ」

「私! 後衛だよ!?」

「私もそうだよ?」

「……逃げ道がないよ」

「諦めも肝心だよ」


 スイナには悪いと思うけど鍛えてもらわないとこれから俺達の行動について来れない。がんばってもらおうと思う。


「そうだ。トウカに伝言頼んでもいいか? 俺達はこれから食料買いながら帰るからトウカには……おにぎりとかお願いしたいって」

「は、はい! 必ず伝えます!」

「よろしく」

「はい!」

「それじゃ俺達は俺達で買い物しようか」

「はい」

「はーい」

「がんばらないと……追いつけない」


 スイナ一人だけ黄昏てるけど無視して手を引っ張って町へと繰り出した。まだ正気に戻らないがついてくるので問題ないと判断した。

 けっきょくそのまま買い物をして屋敷に着くまでそんな状態だった。




 屋敷についた俺達を出迎えてくれたのはシーリアだった。


「おや、おかえり」

「ただいま、でもなんで玄関に?」

「まだ屋敷に慣れていないからな。こうして歩いてたのさ。やれることも少ないしな」

「暇になったのか」

「そうとも言うな」

「だったら、メイドにでも頼んで刺繍とか教わったらどうだ? 俺が教えてもいいけど時間がないからな……」

「ふむ、そうだな。そうやって出来る事を増やすのもいいかもしれない。でも、今はこうして話し相手が帰って来たんだ。相手してくれるな?」

「わかった。エリナとミヤビはスイナの事頼むよ。俺はシーリアと明日からの事話してくるから」

「うん、スイナさん。行こっか?」

「ええ、不足してるものがないか確認しないとね」

「おそらくは大丈夫だと思いますけどね」

「私はもう少し分散して持つべきだと思うよ」


 エリナ達は明日の準備で不足がないか確認するようだ。俺は俺でシーリアに明日からの予定を話すとしますか。魔道具の事も聞いておきたいしな。


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