表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/79

62.里の案内

 翌日俺はカヤとスイナを連れて里にやってきた。スイナはこれから俺達の仲間として里に来ることになるのでウメさんや長に紹介しておこうと思ったのだ。

 それにウメさんには巫女の派遣の事で更にお世話になるので挨拶しておこうと思った。


 それが終わったらカヤに案内をしてもらいながら里の中を歩く予定だ。家の中ばかりはやっぱりよくないのでカヤを連れ出す口実にもなるし、俺とスイナが歩く姿を見せておいてスイナが俺の関係者であることを少しでも多くの人に知らせておくつもりだ。

 基本、外からの人が入って来ない場所なので誰の関係者かわかっていた方が安心してもらえるのだ。


 まずはウメさんに挨拶するために通された部屋で待っているとウメさんがやってきた。


「おはようございます。ウメさん」

「おはようございます! おばば様」

「おはようございます。ユキト様。そちらの方は?」

「嫁の一人でして、スイナ」

「初めまして、スイナと言います。これからお世話になる事も多いと思いますがよろしくお願いします」

「こちらこそ、ユキト様の妻となれば受け入れない訳がありません。私は巫女達をまとめているウメと申します。以後よろしくお願いします」


 これで簡単に挨拶はすんだ。後はあっちに派遣する巫女のお礼は必要だろうとその話をする事にした。


「ミヤビから返事は聞かせてもらっていますが、あちらの屋敷にも巫女を派遣してもらえる事になってホッとしてます。本当にありがとうございます」

「いえいえ、ユキト様のお役に立てるのでしたらどうと言う事はありませんよ。ただ、出来れば数人に手を出していただいて子を生ませていただければと」

「それをすると無秩序に嫁が増えそうで怖いのですが……」

「巫女達に関しては嫁にとってもらう必要はありません。ユキト様の血を引く子として里で大事に育てますので」

「神狐になるのに血は関係ないですよ。ミヤビのように進化をしていったさきにあるものですから」

「そうだとしてもですよ」


 つまり古事記から繋がる歴史みたいなものを作り上げていくのだろうか? そうすると子供たちは難しい生き方をさせられる気がするな……。


「生まれた子供たちはそれで幸せになれますかね……」

「全ては育て方次第です。それにユキト様がまったく近寄らないならまだしも、すぐに来られる場所にいるのに、早々変なマネはできませんよ」

「そうかもしれませんけどね……。まだしばらく待っていてください。ただ、どの巫女の子なら喜んで受け入れてくれそうかをウメさんの判断でいいので順位付けしたものを用意しておいてもらえるとありがたいです」

「謹んでお受けしました」

「ユキト君もなんだかんだでやる気満々じゃない」


 ちょっとムッとした表情でスイナが言った。俺としてはやる気というかどちらかといえばもう諦めてる感じだ。


「断ってもなんだかんだでけっきょく抱く事になりそうな気がするんだよね」

「……私もそう思うけど」

「なるべく増えないように努力するので勘弁してください」

「エリナちゃん達にも報告しておくからね」


 むしろ事態を悪化させかねないと思うのだけどと言ってみたが、報告しなければいけない事として報告しないというのは却下された。報告して実感してもらおうと思う。エリナとミヤビが嫁を増やすの推奨だという事実をだ。




 ウメさんの所で挨拶を終え、長の所でも挨拶を終えた俺達は屋敷の建築現場へと向かっていた。だが移動速度はたいして早くない。先導がカヤというのもあるがそれ以上に俺に挨拶してくる人が多いので簡単に返すにしてもどうしても歩くのが遅くなってしまっているのだった。


「話には聞いてましたけど、ここでのユキト君の知名度はすごいですね」

「宴会やった時にかなりの人が挨拶に来たし、来れなかった人の所には俺が直接出向いたりしたからね」

「お兄ちゃんが来てくれたからお母さんは助かったんだよ!」

「確かにそんな話をしてたね」


 そうやってスイナとカヤと話してる間にもあいさつしてくれる人がいるので手を振って軽く挨拶をかえす。だけど、近づいて来て握手を求められたりはしないのでそういうところは楽だ。


「有名人とはいえ、信仰の対象だから人が群がって来ないのはいいよね」

「私は昔、男に群がられてみんな動けなくしてあげた事があるよ」

「スイナは美人だしそういう事があっても不思議じゃないね」

「スイナお姉ちゃんもキレイだけどお兄ちゃんのお嫁さんはみんなキレイだよ!」

「キレイどころが集まってパーティ組んでるからやっかみはすごそうだな」

「実際すごいと思うよ」


 ハーレムパーティだもんな……。やっかみはしょうがないと思う。それに周りに男がまったくいないものあるし……。ただ、今の状況になると男友達は非常に作りにくい。それはそれで寂しいんだけどな。




 そうして屋敷の建築現場までやってきた。現場を見るのは初めてだけどなんかすごいことになってた。

 今はまだ基礎をやってる最中みたいだが木材も次々と運び込まれているようで山積みになっている。威勢のいい声も聞こえるし、働いてる人の数も多く正直近所迷惑だと思う。


「お兄ちゃん……なんか怖いよ」

「そうだな……現状は見たし、別の場所を回ろうか」

「この光景は小さい子にはきついでしょうしね」

「うん」


 棟梁に挨拶しようかと思ったけれどこの中から探すのも大変だ。カヤも現場の迫力に負けてしっぽと耳がしゅんとしてるので足早にその場を後にした。

 しかし、こちらもかなり立派なものが建ちそうだ。なるべく利用したいけどどうやって使っていけば有効活用できるだろうか?




 里を散策する目的の一つにカヤが子供たちと会って遊びに行くという風に持って行こうと思っていたのだが、カヤは案内をしっかりするし、子供はたまに会っても速攻で逃げてしまった。


「なぜ逃げるんだろうか?」

「親に近づかないようにいわれてるんじゃないのかな? 近づいて粗相があったら困るし」

「せめて興味を持って見に来てくれているんならまだいいんだけど、今までの子供は全員偶然なんだよなぁ……。こっちに興味を持ってくれればいいけどそれすらないとは……」


 カヤに遊びに行けと言うのは簡単だがそうではなくてもっと自然な形で遊びに行ってほしかった。その為のきっかけになればと思っていたのだが完全にその目論見は外れたと言ってよかった。


「思い通りにいかないもんだ」

「お兄ちゃん大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だよ。カヤはもっと遊んだりしたいとは思わないのか?」

「お兄ちゃんの役に立つのは嬉しいの!」

「そうか」


 俺はカヤの頭を撫でた。カヤは嬉しそうだ。下手に色々しないでやりたいことをやらせてやってこうして構ってやればいいのかなぁと思った。

 それでもやっぱり子供は遊んでなんぼだと思うのは俺の我がままなのだろうか? 

 なるようにしかならなかなぁと思いながらも、そうなると仕事ばかりの生活をする子供になりかねない。

 こうやってたまに外に連れ出したり後は……エリナに勉強教えてもらうべきだろうか? 王都の学校に通えればそうするべきなのだろうか?

 ……どうして俺は子育てに迷う親のような状態になっているのだろうか? トウカとも色々話をしないとな。俺が勝手に決めていい話じゃないし……。




 夕方には家に戻った。俺とスイナが里に行っている間、エリナとミヤビとトウカでまだ必要そうなものを買い揃えに行っていた。行っていたはずだった。


「なんでトウカがダウンしてるの?」

「少し感を取り戻したいというので手合せをしたのですが……」

「それを言い出すトウカもトウカだけど、のるミヤビもミヤビだぞ」

「す、すみません。しかし、もう少し体を動かさないとと思いまして」

「少なくともエリナとミヤビに頼むのは間違ってる。その二人けっこうな訓練中毒だし」

「今日はそれを実感しました……」

「俺も面倒見るからゆっくりでいいからやっていこうか」

「よろしくお願いします」

「とりあえず今日はそのままゆっくりしてて、俺が作るから」

「何から何まで申し訳ありません」

「気にしない気にしない。俺も里の素材を使った料理作ってみたかったし」


 トウカにはそのまま休んでいてもらって久しぶりに料理を作った。

 そう……久しぶりだった。そして素材は里の物、ついでにそれなりにうまい魔物素材も無限倉庫の中には入っていたのでそれも投入した全力で料理を作ってしまった。


「感を取り戻す前に料理の腕を更に磨かないと」

「いや、無理しなくていいから」

「ユキトさん! 師匠として色々教えてください!」

「お兄ちゃん! 私もー」

「お、おう」


 やり過ぎたと思ったがもう遅い。美味い料理をつくってもらえるようになると割り切ってこっちの方面の師匠もがんばろうと思う。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ