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61.引っ越し準備

 家を引っ越すまで時間がない。翌日にまずみんなの要望を聞いた。それにあっちに移っても浴衣にするかどうかという問題もある。

 来たばかりで悪いとは思うが、トウカとカヤもあちらでの住み込みになる。その為にまた荷造りもしないといけない。


 要望を聞き終えた俺はサークリスへと飛び、森へ行き木を確保して加工を始める。

 ミヤビにはウメさんの所へ行って事情説明をしてもらっている。

 エリナとスイナには必要になりそうなものの買い出しなど細々した物を頼んでおいた。


 新しくベットを作り、クローゼットも作った。共用の場所は向こうで家財道具一式用意してくれるらしいが、個人個人の部屋は自分たちでということになっている。

 だから俺は作る。今まで見せた事のないくらいの速度でありながらもそんじょそこらの職人なんぞには負けない匠の技を使用したものだ。だたし、時間がかかる装飾関係は省かれている。


 テーブルにイスなんぞも作り終えた俺は魔道具も作り始める。転移魔方陣、人払い、隠ぺい、今回は家単位ではなく部屋なので魔石の消費が少ないのが嬉しい。

 だがしかし、小さい家一軒と屋敷二軒、うち一軒は現在建設中。後、最低でもサークリスに一軒建つ。

 こんなに家ばっかり持っててどうするつもりなのだろうか? そう思いながら誰もいない事をいい事に糸車や機織り機も作ってしまう。

 ついでとばかりに森へ更に木を追加しに出かけつつ、ロゲルフという魔物を狩る。

 ロゲホスのウルフ版なので毛が非常にいい糸素材になる。防御力はそこそこ、各種属性魔法耐性も中々のもの。弱点は属性魔法の耐性が強いだけなので無属性魔法だと簡単に攻撃が通ったりする。

 とはいえ普通は無属性魔法のマジックアローなどを育ててる人はいないので問題ない。


 素材のランクからすれば優秀な部類だったがあっちに居る時は人気のない素材だった。理由は簡単で汎用性より特化型が求められていたからだ。それに防御力も同じランクの素材より多少低くなる。

 そしてとあるクランが今ある素材を組み合わせる事で更に良質の汎用性の高い布を作り出していたので日の目を見る事が無かった。

 それをNPC冒険者に売ってぼろ儲けしてたのは内緒の話だ。


 そんな素材を糸車で糸を紡ぐところから俺が作れば、この世界における最高品質の布を足蹴に出来るほどの布が出来る事だろう。


 ロゲルフ以上の素材はダンジョンに潜らないと取りに行けないが、この世界の冒険者の実力ではとりに行けないだろう。

 ……聖教国なら使徒たちが水狼の毛や火炎鳥の羽毛を手に入れているだろうか? 風車草は里からそこそこ近い。問題は帝国にある土蜘蛛の糸だろうか?

 この四つの素材を一本の糸にする事で四霊の糸が出来た……。これは今はいいか。


 こちらで家を建てる木を確保しつつ、ロゲルフやメタルゴーレムを狩り、フォレストボアも追加してホクホク顔でその日は帰った。




 家に着き、食事をしながら今日の事をみんなで報告をした。


「おばば様の許可はとってきましたが実際どうするんですか?」

「転移魔方陣から出てきた人に対して戻る事ができるように認識させてそれ以外の人はすべて色々使って近づけないようにする魔道具を作ってみた」

「ユキト君、そんな細かな設定の魔道具聞いた事ないよ?」

「作れるかな? と思ったら作れたからなぁ」


 実際空いた時間にはちょこちょこ魔道具の製作、実験を行っている。とはいえ開く時間が少ない。そんな中でも成果は上がっておりこういう細かい設定もできるようになっている。


「ユキト君の技術はおそらく世界一だよ」

「使徒の中には上が居そうだけどね。実際あっちでは俺より優秀なのはいたし」

「ユキト君以上って想像がつかないよ」

「俺は万能型、向こうは特化型って考えればいくらでもね」

「そう考えればそうかもしれないけどね。それはともかくミヤビはお疲れ様」

「いえ、おばば様もユキトさんのお役に立てるのでしたらと言ってました。ただ、屋敷に住んでもらえなさそうなのが残念そうでしたが」

「それでも落ち着いたらちょくちょく行くつもりだよ。どうも俺が連れ出さないとカヤが家の中にこもりっきりになりそうだし」


 そう言って俺はカヤに目を向ける。カヤも名前を出されたからかこっちを見てこてんと小首をかしげている。


「お手伝いがんばってるよ?」

「向こうの友達と遊ぶのも大事だよ」

「ん~でも、お手伝い楽しいよ!」


 これである。友達は大事だ。ちゃんと作れる時に作っておかないと俺のようになってしまう。俺の場合はまとめ役だった為か友達と見てくれない。ほとんど交流もないしな……。


「この調子だから里にカヤを連れていきたいし、なにより畳の上でゴロゴロしたい」

「欲望に忠実?」

「基本、俺は自分勝手にやってきたからなぁ。実際今までそんな感じだったし」

「ユキトさんからしたらそうなのでしょうね」


 そう言ってミヤビは笑っていた。なんだかんだで人助けは色々してるからお人好しに見えるところはあるんだろうけど、それをするのも俺の我がままって言っても、だからお人好しなんですよとか言われそうだ。というかむしろ言われた事あるしな。


「それでエリナとスイナは?」

「ユキトくんが作る必要のなさそうな物を色々買ってきたよ。あと頼まれてた布関係も買ってきたよ」

「だけどユキト君? お金の使い方荒くない? ユキト君ならもっとお金あってもおかしくないと思うんだけど」

「里で屋敷建てるって事でお金おいてきましたからそのせいですね。ザッシュホールにでも潜ろうかな……」

「ザッシュホールって?」


 スイナがそれはどこだ? という感じで疑問を投げかけて来た。あれ? 比較的近いと思うけど知られてないのか? もしかしてないのだろうか?


「王都の南東にあるダンジョンなんだけど、もしかしてないのかな?」

「距離は?」

「えっと……おそらく隣町に行くくらいの距離ですかね?」

「そっち方面はアーマードボアとの遭遇率が上がるから誰も行ってないんだよね」

「アーマードボアとの遭遇率が上がるならそれだけでおいしいな。ミヤビ一人で戦ってみるのもいいかもしれない」

「それはさすがにどうかと思うのですけど」

「側面から攻撃を通せばおそらくどうとでもなると思うけど、最初から一人でやらせるような事はしないさ。安全第一だからな」

「アーマードボアの時点で安全じゃないからね! 普通は違うからね!」

「スイナさん、そんな常識はユキトくんに通用しないよ」

「総団長瞬殺だもんね!」


 スイナがちょっと自棄になったように言い放った。そもそもステータスだけなら使徒を遥かに超えてるはずなのだ。レベルで言えば最大値五百の所が七百オーバー、しかも向こうは五百から上げるのに対してこちらは上乗せ分の二百はレベル一から上げてるようなものだ。しかも神様効果で爆上げしてるし、向かうところ敵なし? いやいや油断は禁物ですよね?

 ともあれ、その状態でこの世界で育っただけの相手と戦うなら瞬殺も当然だと思うのです。


「まぁ誰であろうと負けるつもりはありませんよ。それがたとえ使徒だとしてもね」

「前に勝てないって言ってなかったっけ?」

「その話をした時より強くなってるし、現状の自分の能力も前以上に理解してるからそこから考えるとね」

「ユキト君が今どれくらいの実力なのかまったくわからないよ」

「国も落とせるかも?」

「冗談じゃないすまない気がするのが怖いね」


 真正面から戦わず、時間をかければ比較的簡単にできそうだなと思っている。要人の暗殺、大勢で訓練してる最中に数人が狂って周りを襲い出すとかやればいい。……やりませんよ? たぶん。


「それでユキトくんは何をしてたの?」

「聞き取りした要望とかも含めて家具一式作って、空いた時間でサークリス……今度開拓する場所で家を建てる用の木材を大量に集めて来て、ついでに素材も大量に仕入れて来た」

「素材って何を?」

「糸車と機織り機も作ったから糸用にロゲルフ、いつか使いたいなぁと鍛冶用にメタルゴーレム、襲って来たから倒した魔物色々、かな? 今度は植物素材も採取しに行きたいよ。染料とか、薬草関係とか」


 あの森素材の染料は色を変える以外にも微微たるものだが防御力を上げたりする効果があるので使えるなら使っておきたい。

 それを聞いたスイナが震えている。何か問題でもあっただろうか?


「それ、今じゃ手に入らない高級素材だからね! ポンポン出てくるような素材じゃないからね!」

「森に入ればわんさか居るんだけど」

「私も行った事あるけど入り口付近で諦めたよ。上から蛇は振って来るし、突然スライムが影から飛び出してくるし、鳥は早くて対処できないし……」

「ミヤビさんがいるから余裕があったよね?」

「入り口付近ならなんの問題もありませんでしたね」

「普通は無理だから、あそこに行くまでもかなりきついから……」


 なんかスイナが萎れてしまった。今回の話の結果、俺達三人は異常という結論に達した。

 エリナとミヤビに関しては俺の指導スキルのせいだとは思うけどそれを言う必要はないだろう。


「これからはスイナもついて来れるようにしないとね」

「私が足手まとい扱いって……」

「だって、俺達馬車使わずに走って移動してますし」

「実力云々の前に移動で置いて行かれそうだよ」

「スイナさんがんばりましょう!」

「ユキト君に背負われてた頃のエリナちゃんが懐かしいよ」


 そんな風に話をしながらの食事だった。


 夜は三人がかりで俺がおいしくいただかれました。

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