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56.部屋割り?

 迎えに行った俺達にスイナがまず言ったのが、


「昇格試験明日になったから朝の混雑が終わる頃にはギルドに来てほしいって」


 というものだった。そこまで急ぐものなのかと思うけれど国やギルドがどう思っているかはわからないため、何とも言えない。

 でも、都合よく予定が付いたという訳ではないと思う。


 その話を聞いた後、着替えくらいは取りに帰るだろうと話を聞いた時の事。


「それじゃぁ、スイナさ……スイナの家に荷物取りに行こうか。他の者はともかく着替えとかは必要でしょ」

「ん? 私の荷物は常にこの腕輪の中に入ってるから直接行って問題ないよ。あ、でもおばさんには声をかけておかないとダメかな。今までお世話になったんだし」

「家政婦さん?」

「ううん、宿のおばさん。ずっとお世話になってたからね」

「……え? 家じゃなくてずっと宿屋暮らしだったんですか?」

「うん、寝に帰るだけだし掃除とかも大変だから宿屋でずっとお世話になってたんだよ。朝も夜も食事はあるし、部屋も片付けてくれるから楽でいいよね」


 実はずっと宿暮らしだったとか誰が想像できようか。それだけ私生活を知らなかっただけとも言える。でも普通、受付嬢と冒険者なんてそんなもんだと思う。


「やっぱりこれからはうちで暮らすんだよね?」

「え? ダメなの?」

「ダメじゃないけど、色々考えないとなぁと思って」


 これは簡易でもいいからサークリスに寝泊まりするだけの所を建てるべきだろうか? 寝る場所に困る……。


「考えるって?」

「今の部屋の使い方だと寝る場所に困るからどうしようかなって。それに別口で同居人もいるし」

「……出先で引っかけて来た女を家で囲ってるの?」

「その辺に関しては家で説明するよ。よくよく考えなくてもあの家、女の人ばっかりが行動してるよね」

「……どんな家なの?」

「不思議な家だと思いますよ。不思議というか異常というか……。これからはスイナも仲間だから誰にも話さないでね」

「仲間……うん、わかったよ」


 普通なら信じられないくらいある魔道具に転移魔方陣。スイナはどんな反応をするのだろうか?

 それよりもトウカとカヤを紹介した時の方がインパクトが大きいかもしれない。どうしたもんかと頭を抱えたくなるがどうにもならないうちに家の近くまで来た。


「スイナ」


 そう呼んで手を繋いだ。これに混乱したのはスイナだ。まぁいきなり手を繋がれたらびっくりするよな。


「えっと、ユキト君?」

「もう家に着くんですけど、こうしてないとおそらく近づきたくなくなるんで」

「どういう事?」

「家に着いたら説明するよ」


 そう言って手を繋いで家まで案内した。登録とか色々としないと家に近づく事もできないため、こうしてるわけだ。




 そして扉を開けて中に入った。


「ただいま」

「お兄ちゃん! おかえりなさい」

「カヤちゃん、ただいま」

「ただいま」


 カヤはどうやら玄関の掃除付近の掃除をしているみたいだった。さほど汚れてないしおそらく簡単な仕事をさせているのだと思う。

 ミヤビは挨拶しながらカヤの頭を撫でていた。


「ユキト君、あんな小さい子に手を出したの?」

「あの子の母親がここに住み込みで働いているんです。まだ本調子ではないのであまり動き回ったりはしてないと思うけど」

「人妻に手を出したの?」

「その辺も含めて話すからとりあえず今は中に入ろう」

「……ちゃんと話すんだよ」


 ムッとしてるのは分かるけど、俺は何も悪くないはずだ。人助けしただけなのにだけのはずなのにどうしてこうなった? 

 中に入ってトウカを紹介して、里での事とこの家の魔道具の事、転移魔方陣の事を話した。

 なんというか呆然としていた。今までも常識外れと思ってはいただろうがこの家は極め付けになったのだろう。魔石の補充が少し大変だけど、この前伐採に行った時にも稼いできたししばらくは問題ないだろう。

 ついでにアクアの進化した姿も披露した。スイナもこんなスライムは見た事がないらしかった。


「転移魔方陣ってそんなものまであるんだね」

「これを使ってチルアスの南の山向こうの平原まで行って訓練してましたから」

「便利だね」

「便利だよ。でも、本来個人で持つようなものではないというのも事実だと思う。だからこそ秘密にしてるんだけどね」

「大丈夫?」

「ダメなら移動して里に引きこもるだけだからなぁ」

「逃げ道まで万全なんだね」

「まあね」


 最初は逃げ道なんてなかったからこうして頑丈な家にしたんだけどなと思いながら答えた。しかしこう答えながらも思う事がある。


「転移魔方陣隠しておけるかなぁ……」

「どういう事?」

「明日の結果次第、そして国の思惑次第では嫁さんが増えるんじゃないかと思ってる。ちなみにスイナ。結婚適齢期にある重要度の低い王族もしくは王族に近い血筋の人っている?」

「……今年で十七になる第4王女のシーリア様がいるね。普通なら絶対に貴族の出でもない冒険者に降嫁なんてさせるはずないけど……ユキト君なら……」

「いるんだ……。気にし過ぎって事ですめばいいけど……」


 本当に気のせいですめばいいと思う。けどこれフラグがビンビンに立ってるよね?

 しかし今から気をもんでも仕方がないので食事にする事にした。


「美味い美味い」

「おかわりならまだありますよ」

「おかわり!」

「はい、どうぞ」

「トウカの料理初めて食べたけど本当に美味い。カヤは幸せ者だな。こんな美味い食事を作ってもらえるんだから」

「お母さんの料理とってもおいしいの!」

「そうだな。おいしいな。美味い美味い」

「あ、あんなユキト君初めてみました」

「私達はアルタレアの宿でもあれを見ましたけどいい食べっぷりですね」

「でもあれって完全に胃袋掴まれてない?」

「「確かに」」


 スイナも料理は出来ないとさきほど言っていたし、ミヤビは普通に作れる。普通にしか作れないとも言える。エリナとスイナさんはダメとなると、俺の胃袋は完全にトウカに掴まれたことになり、多少焦っているようだ。とはいえ多少なのはこっちに引き込んでしまえという思いがあるからだと思う。

 カヤの事もある、未亡人と言う事で亡き夫に対しての気持ちもあると思うのだからそう簡単にいかないと思う。いかないよね?

 あぁ、でも本当に美味いなぁ……。この後色々と大変そうな部屋割りがあるから今の食事を精いっぱい楽しもうと思う。




 食事を終え片付けた後、トウカは少し眠そうなカヤの体を拭いてやり寝かしつけて来た。ここからがある意味で本番かもしれない。


「さて、今日の部屋割りに関する事を決めようと思う。今現在使える寝室は二部屋、そのうち一部屋はすでにカヤが眠っている。そしてもう一部屋は俺とエリナとミヤビの三人で使っていた。残り二部屋は女性用の衣装室と俺用の衣装室兼着替え部屋だ。さて、どう分ける?」

「今回は私とミヤビさんは転移魔方陣で移動して向こうの柵の中でテント張って休むよ」

「いや、安全は安全だろうけど明日は試験もあるんだぞ? それで大丈夫か?」

「それでダメになるほど柔な鍛え方はしてないよね?」

「確かにしてないけど休める時は休んでおくべきなんだけど」

「でも、今日はスイナさんにとっては特別な日だから」


 ミヤビの時は一緒だったのになというツッコミはなしだろう。しかし、さすがにテントじゃしっかり休めないだろうし……。まぁこういう時は甘えましょうか。


「ウメさんの所に行って社で泊まれるように頼んで来る」

「さすがに私達だけというのは」

「問題ないだろ? 俺も頼みに行くし。それに明日は受かってもらいたいからな。準備は万端整えておきたい」


 二人は顔を見合わせたが、何か諦めたように頷いた。いや、これくらいなら余裕で聞いてくれると思うぞ?


「わかりました。ですが私達二人だけで行き頼んで来ます。さすがにスイナとトウカ先輩だけというのは気まずいでしょうし。それでは私達はこれから社に行って来ますね」

「もし何か言ってくるようなら俺も行くから。それじゃいってらっしゃい。ウメさんによろしくね」

「おやすみなさい」

「おやすみなさい」


 そして残された3人、しかし、けっこうあっさり今日の問題は片付いた。とはいえ明日からどうするかという話なんだけど、ベットを買ってきて俺が使ってる部屋に設置すればいいかな? 明日時間があるといいな。


「それじゃ、俺とスイナが一緒って事でいいのかな?」

「えっと、その……よろしくお願いします」

「ユキトさん、少しいいですか?」

「何?」

「今日でなくてもいいので私にも手を出してもらっていいんですよ?」

「それを今言いますか!?」


 このタイミングというのは一緒に頂いてくださいってアピールか? アピールなのか?


「いやあのカヤの事もありますし」

「カヤもいずれはユキトさんのものになりますし」

「決めつけよくない。それにいずれじゃなくて今の話!」

「あの子は寝つきが良くて朝までぐっすりですよ」

「亡くなった旦那さんへの想いとかあるでしょ?」

「あの人は押しの強い人で……。何度断っても言い寄ってきたんです。それでお酒の席で不覚にも眠ってしまって、気がついたらお持ち帰りされてて一発大当たりです。それでこうなったらどうにもならないなと一緒になりました」


 それって準強姦罪って立派な犯罪なんですが……。しかしなぜそれをすらっと言える……。


「それをよく普通に言えますね。心の傷がとか色々ありそうですし、なんでそれで一緒になるのかもよくわからないです」

「一緒になるならこの人でもまぁいいか程度には思っていたんですよ。ただ、私はそれ以上に巫女でありたかっただけです。それに酔った巫女をお持ち帰りで一緒になるのは比較的多いので、本当に嫌ならお酒を飲まない事になってますから」

「一緒になってもいい最低限の所には引っかかってたから誘いに乗ってお酒を飲んだと」

「いえ、後から勝手にやってきたんですよ。どうやら周りにはめられたみたいでした」


 ダメじゃん! とか思ったが本人が気にしてないならいいのか? カヤの事は十分に可愛がっているのはわかるし……。


「カヤには聞かせられない馴れ初めですね」

「まったくです。ですので何の問題もなく手をだしてくださいね」

「どうしてそうなる」

「巫女として優秀というのは能力があることも大事ですがなにより信仰が大事です。強く信仰してる者ならユキトさんに強く惹かれますよ」

「それって今現在巫女になってる人はもれなくって事か?」

「全員が全員とはいいませんが、おそらくユキトさんに手を出してもらえるのを待ってると思います。おばば様も年甲斐もなくときめいていらっしゃるのではないかと」


 頭を抱えたく情報だった。どこかで線引きしないとボコスカ嫁が増えてしまう……。そしてその話を大人しく聞いているなぁと思ったスイナは口をパクパクさせていた。


「スイナ?」

「ユ、ユキト君! 先に行って渡し準備してるから!」

「スイナ! 奥の右側だから!」


 うかうかしてられないとでも思ったのかスイナは部屋の場所も聞かずに走り出したので場所だけ伝えた。ちゃんと聞こえていただろうか?


「それでどこまで本当なんだ?」

「全部本当ですよ。ただ、恐れ多くて他の子達は積極的には来ないと思うけど」

「トウカは積極的だよね」

「後輩たちの為にユキトさんが積極的になってくれる後押しをしたいですし、何より私は年齢が上ですから、今のうちじゃないと相手にされないじゃないですか」

「それでわざわざ今話をしてスイナをたきつけたと」

「このままだと一緒に眠って終わりになりかねないかと。落ち着いたら私の相手もしてくださいね」

「美味い食事を作ってくれる人を逃すのは惜しいからね」

「ありがとうございます」


 いったいどこまで増えるのか? 自重していきたいと思うけどはたしてどこまでできるのか?


「それじゃおやすみ。無理しないように」

「わかりました。おやすみなさい」


 とりあえず今はそれは置いておくとしてスイナの所に行こうか。



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