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53.子連れ帰還

 翌日俺達は王都に戻ってきた。

 朝は必要最低限の物をまとめに帰っていたトウカとカヤを迎えに行きつつ荷物を回収してきた。

 申し訳ないとは思ったがトウカとカヤは誰か来てもいいようにと作っておいた一部屋に二人で暮らしてもらう事になった。

 さすがにせまいかなと思ったけれどまだカヤも小さいし、一緒に寝るのに抵抗がないようなのでしばらくはこのままになると思う。でもいつかはもう一部屋くらい必要になると思うので俺の衣裳部屋兼着替え部屋を改装予定だ。


「それじゃぁ、悪いけどしばらくはこの部屋で親子一緒に暮らしてほしい」

「これだけ広さがあれば十分ですよ。ありがとうございます。それと草履に関してもありがとうございました」

「お兄ちゃん、ありがとう!」


 俺達からしてみたら普通の事だが、里の中からまだ出た事のないカヤは家の中で靴を履くという文化がなかった。しかも、あれだけ時代劇の日本っぽいのに足元は草履ではなく靴だった。

 草履だったらそれほど気にしなくていいのだけれど、家の中まで靴をずっと履きっぱなしというのは楽ではないと思ったので、王都に戻ってくる前に家の中用の草履を用意したのだ。

 ミヤビは家の中でも靴を履くという文化に慣れていた。トウカは知っていたはずだがすっぽりと抜けていた。そういう訳で気が付いた俺にお礼を言っているのだ。


 そしてこちらで暮らすという事で、トウカとカヤは家から外に出ていい事になっている。そんな中で家の外でユキト様と呼ばれるのはちょっと嫌だ。

 その為名前の呼び方を変えてほしいと頼んだ所、トウカはユキトさんに落ち着いたのだが、カヤがなぜかお兄ちゃんと呼び始めた。

 嫌がるような事でもないのでそのままそう呼ぶことを許可した。トウカは何か言いたい事があったようだけど俺が許可してしまったので言う事ができなかった。

 おそらく仕える者の心構えとしてとかだと思うが、今はまだ子供なのだしそこまで気にしなくてもいいと思う。


「どういたしまして、向こうから持って来た荷物はここに出しておくから整理しておいてね。それとさっきも言ったけど好きな時に向こうに戻って荷物取ってきたり、向こうで買い物したりして構わないからね。それと王都でも買い物に出ていいけどカヤはまだ一人で王都に出ちゃダメだからね。約束だぞ?」

「うん、約束はしっかり守るよ」

「あぁ、カヤはいい子だな」


 そう言って俺はカヤの頭を撫でてやった。カヤもなんだか嬉しそうだ。


「そうやって見ると兄妹ってよりも親子って感じに見えるね」

「俺まだ十五なんだけどね」

「それでもアレもあるし、時々私もお父さんみたいに感じるよ」

「エリナのお父さんって、エリナの方が年上だろうに」

「お兄ちゃんがお父さんでお母さんがお母さんなの?」

「お兄ちゃんはお兄ちゃんだからね?」


 その会話を聞いてまんざらでもなさそうな。むしろ嬉しそうなのはどうしてなのでしょうか? とトウカに聞きたい気分ではあるが、聞いたらむしろ私は夫婦でも構いませんよとか言われそうな気がする。

 それとも私が妻などと謙遜しながら、ユキトさんが望むならとか言われたらどう対応していいのかわからないのでここら辺で逃げる事にした。

 子連れ未亡人、しかも子供との方が歳が近いとなるとどう反応していいのかわからない。見た目は、見た目は若いけど! この事もエリナとミヤビに相談するべきなのだろうか?


「後の事は任せるよ。それじゃ俺達はギルドに行って来ます」

「はい、いってらっしゃい」

「いってらっしゃーい」


 こうして俺達は久しぶりに王都の町へと繰り出していった。




 ギルドへ向かう途中の事、俺は二人に相談をしていた。もちろん用件はさっきの事だ。


「それでトウカなんだけど、明らかに好意を持たれてると思うんだけど」

「元々は巫女として腕を磨いていましたし、死の淵から助けてもらったとなればそれも当然かと」

「私は助けてもらった時の事は覚えてないけど、状況的に助けてもらったのはわかったから嬉しかったし、好きになる要因の一つにはなったかな?」

「男の勘違いですむ話じゃなく、好意を持たれてるのは確実って二人にはやっぱり見えるか」

「そうですね」

「そうだね」


 やっぱり都合よく勘違いと言う事にはできないらしい。拒む理由はないんだけどカヤからすればどう見えるのか……。


「どうするべきかね」

「トウカさんの事嫌なの?」

「今のところどっちっていう感情はないかな? それにカヤもいるし色々と考えないといけないだろ?」

「むしろ二人とも迎え入れてしまってはいかがですか?」

「二人ともって……カヤはまだ子供だし、どうしてそんなに受け入れ態勢万全なんですか……」

「このまま行けば間違いなくカヤちゃんもユキトくんのお嫁さんだよね?」

「このまま行く保証はどこにもないわけで」

「それならそれとしておけばいい事だと思いますよ。私達ではどうしても家事がおろそかになりますから家を守ってくれる人がいるのはいいですよね」


 確かに家を守ってくれる人がいるのはいい事だ。良い事だけどそういう事じゃない。それは別に嫁になってもらう必要はないのだ。


「それは嫁さんを増やす理由にはならないと思うんだけど」

「ある程度人数がいないと言い寄られて大変だと思いますよ」

「学校でも将来有望そうな子には女の子が群がってたよ」

「それでも二人いれば十分なような」

「周りはきっとまだチャンスがあるって思うと思うよ」

「そんなもんかなぁ」

「どうしても女の子の方が余っちゃうから力のある人の所には集まるって学校でも言ってたよ」

「そう言われればそうかなぁと思うけど」


 そしてこの後ミヤビからガンガン説明が出てきた。


 男女なら男の方が死亡率の高い仕事に就くことが多い。冒険者だって俺のまわりだけ見れば女性ばかりだけど、男だけのパーティは実に多い。

 女性は結婚や出産を期に冒険者をやめることが多く、そうするとパーティが解散となる事もある。

 男だけならその心配は極端に少なくなる。嫁ができようが子供が出来ようがそれは嫁に任せて行けるからだ。

 それに異性に対する遠慮もしなくていいから気が楽だし、結婚してると浮気の心配をさせないのもいい。

 だから、仕事は気の合う男だけで組んで、家に帰って嫁とイチャイチャするのが普通だ。そして実力ある人は多くの女性を娶る。等々だ。


「それでエリナとミヤビも俺にもっと嫁さんを増やしてほしいと?」

「優良物件だと言い寄られる前にある程度の人数が居た方がよいかと」

「私もそう思うな」

「……わかった。トウカの事はちゃんと考えておく。だけど積極的にこっちから声をかけるような事はしないからな」

「いざとなれば巫女数人をそれらしく見せればよいかと」

「それならそれでいいんじゃないの?」

「やはりしっかりとそういう関係の方がいいと思います。ただ、私もそうでしたがお仕えするというイメージが強すぎて嫁と言われると……」

「トウカは?」

「トウカ先輩はすでに一度結婚をした身ですからそのあたりの違いだと思います」

「そうですか」


 嫁さんはこれからも増やさないといけないらしい。とはいえ積極的に探すつもりはない。面倒な話は断ればいいだろうしな。


「でも、もしかしたらすぐに一人増えるかも?」

「エリナ……それはどんな予言なんだ?」

「ユキトくんは王都に戻って来ても外には出なかったんだよね?」

「まぁ下手に見られると大変だから家から出てないな。むしろ地下室からも出てないし」

「そうすると一ヶ月以上会ってないんだし、いくら自分の気持ちに鈍感とはいえある程度の変化があると思うんだよね」

「えっと、誰の事を言ってるの?」

「すぐに答えは出るからその後に教えるね」


 すぐに答えは出るってこれから行くのはギルドな訳でして……。え? つまりはそういう事なの? でも、養子に欲しいって言ってたなら違うような……。

 ミヤビもそうですねなんて言ってるから、ミヤビも前から気が付いていたって事か? ……そういう感じには見えなかったけれど、まわりから見たらそう見えたのだろうか? とりあえず答えはすぐにでるらしいから大人しく答えを待つことにした。

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