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52.雇用

 王都の家は人海戦術で一気に掃除してきたらしい。今後は里の家に人を派遣するのと同じように定期的に掃除をして、指定された場所に洗濯物があれば洗濯もしてくれるようになった。食事に関してはいるかどうかわからないので保留になった。

 食材を無駄にするのはよくないしな。……残念だ。




 そして翌日から三日間は里を離れてサークリス南の森にて伐採に励んだ。今回は中にも入って間引くように伐採して行った。

 千という数を数えるのが一番の苦労だったというのは笑い話だろうか? 


 里に戻り、さて木を置いて行き本格的に仕事をしてもらおうかと思っていた朝の事。俺達の所に来客があった。その客と部屋であっていた。


「この間は助けていただきありがとうございます」

「ありがとうございます!」


 訪ねてきたのはトウカさんとカヤとウメさんだった。横になってる時はわからなかったが狐人族として基本的なキツネ色の髪。ふんわりした感じのショートボブで身長も胸も平均的な大きさだった。エリナとミヤビがタイプは違えど高嶺の花になりそうなのに対してトウカさんはそれには及ばないものの身近に感じ男子としてはこの子ならと手を出しやすいくらいの可愛い感じのする女性だった。


 カヤは実際の年齢は6歳なのだと教えてもらった。家で会った時は表情は沈みながらも懸命にがんばっている姿から強さを感じたが今は、母親が元気になって子供っぽい元気の良さが戻って来たようだった。


「いえ、治せるかどうかもわからずにやったことですからお気になさらずに。でも、動いて大丈夫ですか?」

「幸い昔鍛えていたからか、動くことに問題はありません。前ほどスムーズにはいきませんが」

「そうですか、無理はしないでくださいね。カヤも心配しますし」

「それはちゃんと理解しています。それで今日ここに来たのはお礼が言いたいのもあるのですが、お願いがあってまいりました」

「お願いですか?」


 普通ならその腕を見込んでなんとかかんとかって流れになるんだろうけど、なんとなくそういうそういうものを頼む雰囲気ではない気がする。いったいどんなお願いなのだろうか?


「はい、助けていただいた上でこのような願い厚かましいとは思うのですがどうしてもお願いしたいと思いまして」

「それで内容は?」

「私を雇っては貰えないでしょうか」

「雇う?」

「それに関しましては私から説明させてもらってもよろしいですか?」

「ウメさん?」


 何をする為に雇うのか? その疑問を答えてもらおうと思ったら入ってきたウメさんが説明してくれるという。


「カヤを育てる為、生きる為には稼がねばなりません。しかし、以前働いていた所ではまだまだ体力的に不安もあり、向こうもすでに新しい人を雇っていてトウカを雇う事ができません。ただ、情けで雇ってもらいたいと言っている訳ではないのです」

「と、いうと?」

「はい、トウカは巫女をやっている時から料理の腕は素晴らしく。巫女をやめてついた仕事は料理人でした。トウカが入ってからお店の評判はみるみるよくなり、今ではトウカが指導した料理人たちが中心となってお店を切り盛りしています。巫女の経験がありますのである程度の力をつけていて、料理の腕もあるとなれば王都の家で住み込みで働き、他の巫女達との橋渡し、そして何より美味しい料理。どうでしょうか?」


 俺は今、自分を褒めてやりたくなった。トウカさんを助けた事をではない。今の提案を即決で飲まなかった自分を褒めてやりたい。

 ウメさんらが変な条件を付けてくるとは思っていない。だから飛びつこうと思えば飛びつけたけど俺の目の前に居る存在がそれを押しとどめた。


「雇う上での条件の一つが住み込みなのはわかりましたけどカヤはどうするつもりですか?」

「出来れば一緒に住み込みで働かせてほしいんです」

「カヤもですか?」


 その提案にはちょっと乗れないと思った。一緒に住むのは別に構わないと思ってる。だが、まだ小さい子供を働かせるのはどうかと思う。里に友達なんかもいるだろう。子供のうちは遊ぶのも仕事だし、なにより将来里の中で生きていくうえで友人を作っておくのは必要な事だろう。

 俺が難色を示したのを感じ取ったカヤは泣きそうな顔をして話しかけてくる。


「ダメ……?」

「一緒に住むのは問題ない。だけど、まだ周りは遊んでる年頃だろ? 働かないで友達と遊ぶのも大事な事だぞ?」

「でも、私は将来ユキト様のお世話をいっぱいいっぱいできる巫女になりたいの! だから、今からがんばっていっぱい勉強したい!」

「カヤ、素晴らしい心意気です。お母さんが巫女のお仕事に必要な事、教えてあげるからね」

「うん!」

「ここはお母さんが止める場面じゃないの!?」

「ここまで熱心なのは珍しいですけど子供の頃から巫女となるべく家事を手伝わせたり、体を動かさせたりするのは普通の事ですよ?」

「その熱心が問題だと思うんだけど」

「「「何か問題でも?」」」


 ミヤビ、ウメさん、トウカさんが声を揃えて言ってきた。つまりあれか、里の常識って事か。頼れるのはエリナだけか!


「お手伝いだと思えば普通じゃないかな?」

「明らかにお手伝いレベル超えると思うんだけどな」

「それでも本人がやりたいことをやらせてあげるのがいいと思うよ」


 日本で同じことを言われた場合は受け入れやすい。なぜならやりたいことをやらせたとしても学校という場所があり、そこで様々な体験をして放課後に好きな事をという事になる。

 しかし、ここの場合は本当に朝から晩まで巫女としての仕事や知識を教えかねないと思っている。

 だが、俺は言葉をつづける事ができない。カヤが涙をためてこちらをみてる。

 ダメなの? 私じゃ役に立たないからダメなの? と言われてる気がする。罪悪感が半端じゃない。しかも周りの説得も不可能。ダメだこれ詰んでる。


「……わかった。カヤの事も認める。そのかわり絶対に無理をさせないように。カヤだって友達はいるだろ? ちゃんと友達とも遊ぶんだぞ」

「うん! ユキト様ありがとう!」


 そこからは細かい給料の話だ。お給料払う為にもしっかり働かないとね。……そういえばヘルキャットの皮の事すっかり忘れてたよ。

 初仕事と言わんばかりに大工たちの所に行くのと革を取り扱うところへの案内はトウカがする事になった。

 雇い主になったと言う事でトウカと呼ぶことになった。若干ほほを赤らめて嬉しそうにしてる。どこまで好感度が上がっているのでしょうか? もしかして候補にいれておくべきなのでしょうか? 二十までは歳が離れていないけど、非常に若々しいけど、ミヤビと並ぶとミヤビの方がお姉さんぽく見えるけど! とりあえずは保留にしておきましょう。


 木は一か所ではなくいくつかの場所に分けて置いてくることになったが、場所を聞いたトウカがそこにも案内してくれた。ミヤビは外回りが多かったためこういう時に頼るには怪しいらしい。


 革を取り扱うところでは大量のヘルキャットの皮がやってきて大混乱に陥った。まずは支払いができない。保管場所がない。その他諸々だ。

 腐る事もないからととりあえず処理できる範囲内の物を置いて来た。革製の防具も作れるが俺は裁縫の方が好きだ。だから不用品の押しつけというイメージがある為、出来上がったものが売れてからその売り上げで返済すればいい事にした。

 まぁこれができるのも俺が神狐という種族だからだろう。相場など何も知らない俺達に対してあくどい事など考えもつかないようだった。

 後々お金が来ることを期待しつつ、また俺の在庫整理に付き合ってもらえる事に期待しておこうと思う。


 これで里でやる事は終わっただろうか? 後ここですぐにやっておきたい事は思い浮かばない。何かあってもすぐに来ることも出来るようになった。

 話をする必要はあるけど、明日王都に帰ってギルドに顔を出しに行こう。スイナさんは元気にしているだろうか? アーマードボア関係もあったな……。


 土産でも買って帰ろうか。

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