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44.自室

「久しぶりだな。まぁ私にとっては昨日の事のようだがな」

「昨日のことのようなら久しぶりって言わなくてもいいんじゃないのですか?」


 目の前にいるのは前に力の解放の時に出会った管理者だった。前は白い世界だったのに今回は違う。ある意味で悪意を感じるチョイスだ。


「それにしてもなんで日本にいた時の自室なんですか……」

「懐かしかろ?」

「二度と届かない場所を思い出させるのはどうかと思うんですけど」

「むぅ、それは失礼した。だが設定してしまったので我慢してくれ。それで今回このように呼んだ理由を話させてもらうぞ」

「前回話を切った事の続きですか?」

「それもあるのか……。今回呼んだのは別件だな」

「別件ですか……」


 タイミングで言えば今回寝込む原因になった事への説明とかなのかもしれないけど、まったく関係ない話をされるかもしれない。とりあえず大人しく聞くべきか。


「まずは今回の事に関してだな。自分でも寝込んだ原因は理解してるとは思うが……、してるよな?」

「急に力が複数流れ込んできたからだと思ってます」


 どうやら今回の呼び出しは寝込んだことに関してらしい。でも、まずはって言ってるという事はそれ以外の理由もあるのだろう。罰がどうこう言ってたし、無茶な事やらされなきゃいいけど……。


「その通りだ。信仰により力が生まれその力は神を生み出す。神を生み出す力、これを神力と呼ぶ。つまり君は神と呼べる者になりつつあると言う事だ」

「……それって信仰あり気で神になるって事ですか? それ以前に神を生み出す?」

「例の如く、時間制限はないのでゆっくり説明しよう。君が今いる世界の神は信仰により生み出され、信仰の強さによって力をつけ、信仰によって自らの存在を維持している。すべては信仰あってのものだ」

「でもそれだと神狐って……」

「里をまとめあげる為の嘘が信仰となり、力を得て本当になったという事だな」

「さらりと反応に困る事を言われた気がするよ」


 おそらく他の追随を許さないくらい強い力を持って人が里をまとめるために自分は神の力を手に入れたと言って、自分を中心にまとめあげて支持がそのまま信仰になり、やがて本物の神になったと言う事なのだろうか?

 俺は神になるとか興味ないんだけどな……。


「気にするな。気にしたところで現状は何も変わらん。今理解するべき事は君に神力が流れ込んでいる事だ」

「神力が流れ込んで来て俺が対処できてないのは神になる為に体を作り変えてるから起こっている事だという訳ですか?」

「いや、純粋に神力というものに慣れてないだけだな」

「それならミヤビと会った時とかソウタさんにあった時も何かしら俺の身に何か問題が起こるはずじゃないですか?」

「今までは力技で抑え込んで少しずつ魔力で浸食して魔力として取り込んでいたのだよ。だから今から神力をそのまま取り込む方法を教える」


 なんというか、熱いお湯でも少しずつなら水と混ぜながら取り込めるけど、大量にお湯が来たら対処できなかったって事かな? わかりにくい例えだな……。

 とにかく、今から変換せずにそのまま取り込む方法を教えてくれるらしい。でもそれってつまり神になるって事なんじゃないのだろうか?

 でも、里に行くのに取り込む方法を知っていないと倒れる事になると思うので大人しく教わる事にする。


「それでどうすればいいのですか?」

「ここにいればいい。そして力を感じるのだ。そうすればなんとかなる」

「……そうですか。ならやってみます」

「うむ」


 俺は呆れた。それはもう方法を教えるとかそう言う事ではない気がする。それでもやれば出来るようになるならやるしかないだろう。

 周りの状況から少し集中しきれないがやってみる事にした。その前に本棚にある本を読んだりしてはダメだろうか? いやいや、ダメだろ。




 集中しきれず本に手を出したが引き抜けなかった。置いてある本を開こうとしたら開けなかった。つまりここにあるものは表面だけしか再現していなかった。無念。

 ちなみに持ち出しもできないらしい。残念。キーホルダーとか持ち出したかった。


 途中そんな事もあったが、まずは自分の中の力を確認する。そもそもここに来てから体は楽になっている。そうなると自分の現状を把握しておくべきだと思ったのだ。


 自分の中にいくつもの力がある事がわかる。雪都一樹としてのもの、ゲームアバターユキトのもの、そして様々な小さな力の欠片達……この中にエリナやミヤビ、アクアも含まれているのでおそらくこれが神力に相当するものなのかもしれない。

 そしてそれらを統括するのが今のユキトというこの世界で生きて来た俺自身だ。


 ……なにこれ? 現状の把握というのは自分の魔力がどうとかその中の違和感があってそれが神力でなんて状況を思い描いてたんだけど予想とは違う結果を手繰り寄せて若干混乱してる。

 それでもこうして見れてしまったのだからと雪都一樹の情報を読み取ろうとするとステータス画面が現れた。まさかこんな所で出て来るとは思わなかった。むしろその貧弱な数値を見てげんなりした。

 ゲームアバターのユキトも見てみたが記憶に残ってる情報そのままだった。つまり棒術のレベルもそのままで上級アーツが発動できる状態ではなかった。

 現状を理解するために片っ端から見れる情報は見ていった。


 見て来た中で気になる文字があった。まずは名前の横にある文字だった。


 雪都一樹(完全制御)、ユキト(完全制御)、エリナ(制御三十%)、ミヤビ(制御二十七%)、アクア(制御七十四%)、ソウタ(制御一%)、???(未制御)


 ステータス画面の名前の横にこんなものがついていた。???は十数個あったのでおそらく宿で会った人たちの物だろう。

 元の自分とゲームのユキトは完全に制御していて、力技ということでアクア以外は軒並み制御が低い。アクアに関しては俺の影響を強く受けてるから元々馴染みやすかったのだと思う。


 そしてお次は今のユキトのステータスで気になったものの一例だ。


 STR:二百三十七(十七)(八百九十)(九)(十一)(六)


 これだけだと意味がわからないが、例えば一七は雪都一樹のSTRと同じで八百九十はゲームのユキト、九はエリナの力の欠片のステータスの三十%となり後はミヤビとアクアの分になる。

 ここから見えるものは実はゲームの時の能力は上乗せ計算されていたという事もあるが、これ自体も神力である可能性があるのだ。

 信仰うんぬんという難しい事を抜きにして他からの力が自分の物として使うという風に考えれば同じことだと思う。

 それが自分の物として最初から馴染んでいたものか、それとも後から来たものかの差だと思う。


 しかし、どうやれば制御率が上がるのかさっぱりわからない。とりあえず受け入れやすそうなエリナの力を受け入れてみようと思う。

 さっきお湯で例えた訳だが、自分の持ってる水場は果てしなく大きい。そこにお湯を入れた所で水温がガンガン上昇する訳じゃない。だからそのままバシャバシャ自分の中にそのまま取り込むイメージをしてみる。

 イメージというのは本人が理解できればいいのだ。もっとうまい例えができればもっと楽にイメージできそうだけど、できないものは仕方がない。


 こんなんで出来る訳がないと思いつつも状態を確認するとエリナ(制御百%)になっていた。こんなんでいいらしい。でも、完全制御ではなく制御百%なのは……自分の力と人の力ならそうなるのか? 後は整列させて全てそのイメージで取り込んでみる。

 すると、エリナ、ミヤビ、アクアは制御百%に他の人達は七十%ほどまで上昇してた。これでいいのか……。




「色々と納得しにくいけど制御率がかなり上昇しました。これで大丈夫ですか?」

「ん? おぉ、大丈夫みたいだな。それと二度あることは三度あるって言うよな。まだ二度目だけど」

「それってどういう事ですか?」

「君の力が大きくなったからここに留めておけなくなった」


 そう言うと部屋が少しずつ崩壊して行く。確か一回目も同じような事を言っていた。今度からは俺も気を付けようと思う。そうしないと聞きたい事が聞けない。

 それにしても自分の部屋を模した場所が崩壊するというのはなんとも悲しい気分になる。


「色々聞きたいだろうが機会があればな、時間もないので一つだけ言っておくと使徒はプレイヤーで君の友達もいるよ」

「アルルのやつはこっちに来てるのか……」

「そういう事だな。では元気でな」

「次こそは黒幕が誰なのか教えてくださいよ」

「私が言わなくてもわかるかもしれないがね」


 それがどういう意味かを聞く前に部屋は完全に崩壊して俺は意識を失った。

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