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37.防衛線

 三人で道を走る。アクアはいつも通りフードの中だ。

 感知範囲に防衛してると思われる人達が引っかかったが、どうやら戦闘中のようだ。


「どうやら戦闘中みたいだ。俺とアクアは先行する。エリナは怪我人の手当、ミヤビは前線で周りを支援して防衛主体だ」

「ユキトさんは?」

「突っ込む」

「わかりました。お気をつけて」

「気を付けてね」

「もちろん」


 そう言って俺は速度を上げた。そして魔力で足場を作り空中を駆けてヘルキャットのど真ん中に降りたつ。魔法じゃなくてついに魔力で足場を作り上げるとかできてたけど気にする事じゃない。


 降りたつと同時にアクアを放ち、俺自身も棒を持って殲滅して行く。

 アクアは攻撃を避けながら水を打ち出す。しかも的確に頭狙いで当てていくのだから恐ろしい。たまに攻撃をくらったように見えるがその全ては幻影で本体はまったく攻撃を受けてない。しっぽまで器用に使って攻撃を避ける。幻影をまいて攻撃の隙を作り出す。中々に器用になったものだ。ただし、アクアにはまだ乗り越えられない壁があるそれは……魔力不足だ。

 単純に見た場合アクアの魔力はその辺の魔法使いなんかよりもよっぽど多い。だけど使う量も多い。そのためある程度戦うとその後は逃げることしかできなくなる。さすがに体当たりだけでは中々ダメージは与えられないようだ。

 そうなると俺の所に近づいてくるのでタイミングよくジャンプしたアクアをキャッチして後ろのフードに入れておく。

 進化してからは魔力の質が俺に似てるのか。俺の近くにいると魔力の回復が早くなる。俺は携帯なんかの充電器みたいな感じだ。


 だが、元々五十程度しかいなかったので再びアクアが出る必要もなく終わった。ヘルキャットの死体がそこらじゅうに広がっていた。


「ユキトさん、おつかれさまでした」

「そっちもおつかれ。エリナは?」

「まだ治療中です。思った以上に怪我人が多いようです。とはいえエリナ目当てに小さな傷の治療までしてもらっているようですが」

「あー、広範囲にヒールをばらまくような魔法を今度教えておくか」

「能力は十分にありますしそれがいいと思います」


 そんな事を話していたらがたいのいいおじさんがこっちに来た。


「えっと、助けてくれたんだよな?」

「もちろん、この辺の死体の処理は任せていいか?」

「それはいいけどお前さんらはどうするんだ?」

「このまま進んでヘルキャットを減らしてくる」

「危険だぞって普通なら言うんだろうけど、この状況を作ったのがあんたなのは見たし、そっちの人も支援に戦闘にってすごかったから心配する必要もないか」

「後もう一人治療をしてる子もいる。それなりの数は倒してくるよ」

「そうか、俺達じゃここに来るのをなんとか倒すくらいしかできなかった。他の町に応援も頼んでると思うがよろしく頼む。あぁそれと遅くなったが助けてくれて本当に助かった」

「気にするな。そうだ。ここの死体の処理は任せるけど、素材や魔石なんかもあんた達の方で使ってくれ」

「そういう訳にはいかないだろ」


 ここには五十匹程度の死体がある。それを換金すればそれなりの金額にはなるのだ。それを放棄するという俺の言葉を喜んで受け取らないのは好感がもてる。けれど、俺達からしてみればこの程度どうということはない。それにこれからもっと大量に狩るのだからどちらでもいいのだ。


「俺達はこのまま進んでこれ以上の戦果をあげてくる。この程度必要ないんだよ。そっちはそっちで怪我人とかもいて金があって困る事はないだろ?」

「それはそうだが……」

「それじゃ、今後の俺達の行動に口を出させないための金だとでも思っておいてくれ。俺達はあくまで町の外から来た自由気ままな冒険者だからな」

「すぐに出て行っても文句は言うなって事か。普通なら文句を言うような事はないだろうがこういう時はそういうバカが出て来るからなぁ……。わかった。俺の方でなんとかしてみよう」

「頼むよ」


 そう言ってエリナを引き取ってすぐにでも出発しようと思っていたのだが、変なのに捕まる事になる。めんどくさいったらありゃしない。




 治療をしているエリナの所へと俺達は向かった。人が列を作って待ってるがエリナ以外の人が仕事をしてる様子はなかった。


「エリナ。治療の様子は?」

「なんだよあんた。横入りするなよ!」

「こっちのパーティメンバーの状況確認だ。そっちが黙ってろ」


 威圧付きで睨んでくる連中を強制的に黙らせる。さっさと終わらせて移動したい。


「様子は?」

「うん、大きなケガをした人の治療はすんだんだけど、他の治療してた人達がばてちゃって今は休んでるよ。ここに並んでる人は応急手当でしばらく休んでれば治るけど現状だと早く治した方がいいよねって人が並んでる」

「ならこいつらの治療が終われば出かけられるな。エリアヒール」


 感知できるエリア内にいる人すべてにヒールをかけて傷を治したはずだ。これでここに縛られる必要はない。


「さすがはユキトくんだよね」

「これでここにいる必要もないだろ。先に進むぞ」

「うん」

「ちょ、ちょっと待て! お前たちはここに救援に来たんだろ!?」

「俺達がここに寄ったのはついでだ。俺達の用事はこの先にある。その過程で十分な量のヘルキャットを狩る事になる。それで充分だろ?」

「そ、そんな勝手を!」

「勝手なのお前だ! すまん、お前たちは進んでくれ」

「ここは任せるぞ」

「あぁ」

「ちょ、ちょっとアルディスさん! あの子がいれば」

「お前は黙ってろ!!!」


 後ろでごちゃごちゃうるさいし周りの視線も集めてはいる。結果的には俺達が進んだ方が余計な犠牲が出なくて済むと思う。

 思うけどちょっと対応は失敗したかなと思わなくもない。めんどくさくなったら王都でヘルキャットもその他諸々の素材も買い取ってもらう事にしようと思う。そうするとチルアスという町の価値が低下しそうだがそこまで俺が気にする事じゃない。

 むしろ町を作ったらヘルキャットの素材はこっちが全て奪う事になるのだから、心配するのはお門違いなのかもしれない。




 ヘルキャットやその他諸々この場所にいる魔物達を狩りながら進み、目的の場所についた。


「ついた」

「えっと……ここ?」

「この場所に何かあるのですか?」

「向こうにいた時の俺の屋敷があった場所がここになるんだよ」


 その場所には何もなかった。その場所から見える所に人工物は一切なく本当にただの平原だ。それでもここから見える遠くの景色から考えて、そして俺の体が覚えてる感覚からしてこの場所に俺の家があったのは確実だろう。


「その……なんにもないね」

「ユキトさん、どうしますか?」

「何もないなら好都合。一からから全部俺が作ってやる。サークリスの町を俺のハーブガーデンを作ってやるぞ!」


 二人がポカンとしてる。普通なら目指してた所に何もなくて落ち込んだりなんだりするのかもしれない。実際にはかなり寂しい気持ちはある。

 だけど町があっても俺のハーブガーデン所有の農場はここにはなかっただろう。俺が住んでた屋敷もあったとしても誰かが住んでいたかもしれない。そうした方がよっぽどダメージを受けた気がする。もうここは俺の知ってる場所じゃないんだって……。

 ならばいっそ更地の方が色々都合がいい。そう思っておく事にする。


「ユキトくん、大丈夫?」

「平気平気、もう夕方だしテントとお風呂小屋準備するよ。明日は向こうの森から木を切りだして来て転移魔方陣とそれようの小屋の製作かな」

「私達はどうしましょうか?」

「エリナとミヤビ、アクアはもう少し暗くなるまで周辺の狩りを頼んでいいか? そんなに広い範囲で動く必要はないから」

「わかりました。行きましょうか」

「うん、アクアおいで。……それじゃ行って来ます」

「いってらっしゃい」


 みんなが狩りに行くのを見送って俺はテントやお風呂小屋、お湯を沸かすためのかまど作りなどをやっていた。

 一人になったからかなんとなくしんみりしてしまった。データ上の事とはいえ数年間かけて作り上げた自分の居場所がなくなっているというのは想像以上にくるものがあったという事だろうか。

 とはいえ、今はエリナもミヤビもいる。アクアもいるしな。ここにまた自分のホームを作ろうと思う。

 ……利権関係とかも色々調べないとな……。院長に聞けばわかるだろうか?

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