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33.再びの護衛依頼

 ダンジョンから帰って来てからは五級を目指していくつかの討伐依頼を受けて過ごしていた。ちなみに進化したアクアには俺が常時幻術をかけて見た目を誤魔化している。


「どうして三人は二、三日かかる依頼を一日で二つもこなしてくるのかな……」


 なんてスイナさんから突っ込みをもらいながら依頼をこなしてる。理由は簡単でそもそもの移動速度が速く、感知範囲が広いので討伐対象を見つけるのが早い。そして帰りは一瞬だ。


 そして合間を見ては訓練をしている。デートのお誘いをしても乗ってくれない。解せぬ。

 エリナはアクアの強さをみてがんばっている。パーティの問題で回復、支援をすることが少ないとはいえ本来の役目を忘れないでほしい。


 ミヤビは進化の可能性をみてがんばっている。すでに前衛のアタッカーがミヤビの立ち位置になっている。これは元々仕える人に合わせて色々と変えられるようにと育てられてきていたので、今求められる立ち位置が前衛アタッカーということでやってもらっている。壁が必要なら俺がやるからな。


 使徒の情報もちらほら入って来る。どうやら聖教国内で戦果をあげているらしいが本当かどうかの判断ができない。教会が威信を高める為の情報なので実際に討伐はされているのだろうけども、討伐に出向いた人数などの情報が無い為どこからどこまでが使徒の力で、どこからがそうでないのかがわからない。

 それでも使徒の力に魅力を感じて聖教国を目指す人も少なからずいるらしい。でも、今のところ聖教国から冒険者がこっちに流れて来るという事はないらしい。それが何を意味するのか……。まだ判断がつかない。




 七月に入り、五級に上がるにはどれくらい依頼をこなせばいいのかと思っている時にスイナさんから一つの指名依頼を受けた。


「指名でエルド商会の護衛依頼ですか?」

「明後日七月十日にコルコットに出発なんだけど、急ぎの仕事らしくてできればユキト君達にも片道だけでもいいから同行してもらいたいって、一日一人三万リーレってかなり高額だけど受ける? それと細かい打ち合わせをしたいから受けてくれるなら顔を出してほしいって。ちなみにこれを受けて依頼達成すると五級に上がれるよ」


 コルコットは王都の南門から出て三つ先にあった町のはずだ。移動日数は行きだけで十日以上かかるだろうか?


「……少し受けるかどうか相談するんで個室貸してもらえませんか?」

「ええ、ちょっと待っててね」

「受けないんですか?」

「それは個室に行ってからね」


 ミヤビに受けないかと聞かれたけど受けるつもりではある。だけどその前にちょっとやりたいことがある。そのために個室を借りたのだ。他の冒険者と一緒に行動しないなら手持ちの魔石でやれることがいくらでもあるのだ。それにどうせそこまで移動するならその後の事も相談しておきたい。

 俺達はスイナさんに案内されて個室に向かった。……なんで案内されてるのだろうか?


「それでユキト君何をするの?」

「そもそもなんでスイナさんがここに?」

「依頼を断るとは思ってないからね。それなのに借りるなら何をするか気になるじゃない」

「そうですか。まぁスイナさんならいいかな。ちょちょいと作っちゃいますね」


 俺は手持ちのハイデーモンの魔石を二つとデーモンの魔石三つを取り出した。ダンジョンで手に入れた魔石はデーモンは九割を家の魔道具の燃料にしている。その他は全て無限倉庫の中に入れっぱなしにしてある。

 ハイデーモンの魔石は一つは魔物除け、もう一つは効果範囲内の移動速度を上げる風の加護を付与した魔道具だ。これを袋に入れて目印をつけておく。

 そしてデーモンの魔石は、魔石が接触してるとそこから魔力を吸い上げて常時弱い体力回復効果のヒールを発動させ続ける魔道具を作り、これも目印をつけて袋に入れておく。


「ユキト君? いったい何をしたの?」

「魔道具作ってました」


 スイナさんが眉間を揉んでいる。うん、なんかいつもいつもすみません。


「はぁ……。効果は聞かないでおくよ。それを作る時間がほしかった訳だね。あっという間に終わったけど」

「それもありますけど、依頼を受けた後の話をしようかと思いまして」

「依頼を受けた後の事?」


 スイナさんもいるし報告しに来なくて丁度いいかなと思いながらミヤビに聞いてみた。


「寄り道してからになるけどミヤビ、里に行っても大丈夫かな?」

「里にですか……?」

「うん、行こうかなって思ってたけど、この依頼が終わったらそのまま連合国方面に行けば丁度いいかなって」

「ぜ、ぜひお願いします! きっと里の者も喜びます」

「そうか、エリナもそれでいい?」

「うん、国外に出るのなんて初めてだよ」


 冒険者でも国外に出る冒険者は少ない。国内でも十分な量の依頼があるのに外にわざわざ出て行く必要はないのだ。それに国境を超える取引をする商人は大体が専属契約か護衛専門の冒険者に依頼を出すので行く機会もない。


「連合国まで行くとなると二ヵ月くらいは最低でも王都を離れる事になるね。ちゃんと無事に帰って来なきゃダメだからね」

「それはもちろんケガなく戻ってきますよ」

「ユキト君達なら大丈夫かな? それじゃあカード借りてもいい? 手続きして来ちゃうから」

「お願いします」


 俺達はスイナさんにカードを預けてそのまま話を続ける。


「とりあえず、依頼でコルコットまで行く。そこからの移動はいつも通り走ってってことで大丈夫か?」

「問題ありません」

「大丈夫だよ」

「それで、ミヤビには悪いんだけどとりあえずチルアスを目指す。そこから南の山を迂回して俺の知識の中にあるサークリスの町があった場所にいきたいんだよ」

「町があるか確認するの?」

「あるか確認といよりはないのを確認するなのかな。なければ色々勝手にいじっても怒られないだろうし」

「あのユキトさん……。何をするつもりなんですか?」

「あそこの素材なら色々できる。だから小屋だけでも建てて転移魔方陣設置していつでも行けるようにしておきたい」


 サークリス周辺は様々な素材に溢れていた。とはいえ、魔物の強さより一つランクの落ちる素材。最前線から遠く、更に行けるようになった時ですら手に入る素材は他で代用の効く物ばかり。その為他の冒険者からは見向きもされない土地だった。

 俺はある程度してからここに籠って農業をしながら、自力で様々な物を作り、NPC冒険者を育て、作った武器や防具を売り、町の防衛力を高めながら、更に畑を広くしてきた。そしてここから、里内だけで流通していた米や大豆を作り、味噌や醤油を売り出していったのだ。

 土地の開拓はどうすれば自分の物になるのかはわからないが、国と繋がりがある院長にでも聞いてみようと思う。国から補助金もらってるなら繋がってるよな?


「あのような場所に小屋を建ててもすぐに壊されてしまうのでは?」

「そもそも近づけないように魔物除け張るし、もしもの時の防御もがっちがちに固めておくつもりだから大丈夫だよ」

「それじゃぁ、依頼が終わったらそこに行くの?」

「二人がいいって言ってくれたらね。ダメでもミヤビの里に行けるようにだけはしておきたいけどね」

「私達がユキトくんの言う事をダメなんて言わないよ」

「私としてはぜひお願いしたい事です。寄り道程度文句などつけません」

「その割にデートに誘ってものってくれないよね」

「まだまだ強くならなきゃ」

「まだまだ強くならないといけません」

「そうですか……」


 俺の普通のデートはいったいいつになったら実現するのだろうか? そんな事をいつもいつも思うのだった。




 この後カードを受け取ってエルド商会に行き色々と話を詰めて来た。依頼は片道のみ、魔物除けを使い移動速度を上げる魔法も使う。それと体力回復の魔道具を売る事になった。今回も馬車三台で馬も三頭らしいので持っていったもので足りた。


 出所は内緒という事にしておいた。これがもっとあればと言っていたが俺は知らん。それと魔除けと移動速度を上げるのは魔道具ではなく魔法という事にした。こっちは魔力の消費量が多いので一般人では長い時間使えないのだ。


 ミヤビなら一日使ってられるかもしれないけれどエリナではまだ無理だろうと思う。

 移動中にヒールをかけると大変なので魔道具にした訳だが、魔道具となると効果を説明したうえで馬具にでもつけておかないといけないのでこれだけは見せない訳にはいかなかったのだが、食いつき具合が半端じゃなかった。一つ百万リーレになった時はどうしようかと思った。断ったら更に値上げされそうだったので売ったのだ。


 まともに働くのがバカらしくなる一面でもあった。それでもまだまだ特級になるまでは仕事するけどな。

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