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31.家取得

 想像以上にすんなり確認は終わり日常へと帰って行った。

 一晩離れていただけだと言うのに熱烈歓迎なのにはちょっと驚いたりもしたがうれしくもあった。


 その後は魔道具を作り、ロゲホスの布で服を作り、私服や大きなベレー帽のような帽子を縫ってこれを着てデートを! って誘って断られ、訓練を繰り返した。

 ロゲホス千頭を収めたがどうしても用事が空かないと少し待つことになり、指名依頼も終わってしまった。だが、まだロゲホスは残っているのでそれもまた出していこうと思う。




 そして本日六月二十日、ようやく家を受け取る事ができた。


「遅くなってごめんね~。ちょっと色々あったね~。でも、安心して使ってね~」

「実は色々あったっぽいみたいですが気にしない事にしますね」

「それがいいと思います。まさかあんな事になるとは思ってもみませんでしたので、聞かない方が身のためだと思います」


 あのアリエルさんが疲れ果てている様子を見ると絶対に聞かないと心に決めた。


「何があったんだろうね?」

「人には知らないでいい事もあると思いますから気にしない方がいいと思いますよ」

「でも、気になるよ?」

「元々の建物の用途が用途ですから下手につつくと何が出て来るかわかりませんよ」

「……それは怖いよね」


 そう、怖いのだ。だからこれ以上は話をしないでいただきたい。大事なのはここを無事に譲ってもらったという事実だけで十分なのだ。




 家を受け取った俺達は掃除を始めた。最低限の掃除はしてあったようだけど、それでも気になるので二階の寝室になる部屋から始める。最悪今日は寝る所だけ確保できればいい。

 食事などは外で買う事も食べる事もできる。そう言えばこの二人はいったいどれほど料理ができるのだろうか? 俺は問題なく出来るが、野営の時は作った後の片づけが嫌で出来合いのものばかりだった。その為二人がどの程度料理をできるのか知らない。仕える為って言うくらいだからミヤビは料理できると思うけどエリナはどうなんだろうか? それも後で聞けばいいか。


 寝室の掃除が終わったところで残りの掃除は二人に任せて俺は魔道具の設置をすることにした。

 建物自体の認識阻害、許可のない人の出入りをはじく、建物への攻撃を防ぐ、その効果の隠ぺいなどの防犯用から不測の事態で建物内への侵入を許した後での迎撃と保護も追加。

 地下の留置所には予定外に手に入った質のいい魔石で作った転移魔方陣と帰還ポイントのマーカーを設置した。

 これでいつでもどこでもここに帰って来る事ができる。そしてまだ予定はないけれど転移魔方陣を他にも設置すればここと繋ぐことが出来る。

 地下室にも攻撃を防ぐ魔道具を設置した。地下へ降りる階段の扉も魔道具で特定の魔力を流さないと開けない仕様にして更に扉を壁に見せる事で侵入を防ぐ。魔道具を設置し終わった後に建物の壁にエンチャントを施した。


 正直に言えばやり過ぎた気がする。ただ、転移魔方陣という危険な物を運用するならこれくらいの用心が必要だと思う。

 家にいない事もこれから多くなるだろうし、空き巣なんかに入られたらたまったものではない。


「ユキトくん、二階の掃除終わったよ」

「それじゃぁ先に二階に設置するもの設置しちゃうか」

「うん、お願い」


 そんなこんなで家は確保できたしダンジョンで経験値稼ぎしてから、六級の依頼をがんばろうと思う。

 今回の家を手に入れた事で見えてきたものもあった。


「ミヤビ……」

「その……すみません……」

「エリナ……」

「えへへ」

「まさか二人とも料理がまともに作れない人だったとは……」


 ミヤビはちゃんとやってるはずなのにどこかで失敗して妙な味の料理を作り出し、エリナは隠し味を入れて失敗するタイプの人だった。

 ミヤビは救いようがないし、エリナは頑張り過ぎてダメになるので料理はけっきょく俺が作る事になった。料理は基礎がしっかりしてから応用なのにどうしてそれができないのか……。むしろ料理の時にいつの間にか隠し味を入れてるその無駄に無駄のない素早い動きはなんなのか聞きたい……。




 家の事で時間を使い、ダンジョンで何日か過ごすための用意をしてダンジョンに向かう事にした。


「日帰りじゃダメなの?」


 とエリナに言われたが帰りは良くても行きには時間がかかるのだ。それに最下層の様子を見てしまったので一度実攻略フロア掃除しておいた方がいいと思ったのだ。そうするとやはり数日はダンジョンに籠る事になる。その為の準備だった。




 そうして出発して転移トラップの前までやって来た。


「ここから最下層に飛んで下から順番に攻略して十七階まで上がるからね」

「それって攻略って言うのかな?」

「その手の事は気にしても仕方がないと思いますよ。ユキトさんですから」

「そうだね。ユキトくんだもんね」

「その納得やめない?」

「でも、他にどういえばいいのかわからないよ」

「そうですね」

「そうですか……。それじゃあ行こうか。向こうの小部屋から勝手に出るなよ?」

「わかった」

「わかりました」


 そして俺達は転移トラップで最下層の小部屋へと移動した。外の様子を探ってみるとだいぶデーモンが復活してるようだった。さすがボスなしのモンスターハウスだと思った。


「さて、ここを出たら多くのデーモンを相手にする事になる。エリナはライトアローで頭を狙う。ミヤビは好きに暴れる。俺はフォローする。質問は?」

「いきなりデーモンはエリナにはきついのでは?」

「死なないように俺が見てる。何の問題もないさ」

「エリナ……大丈夫?」

「私そもそもデーモンの強さがわからないから黙ってついて行くよ。今これくらいだよって言われるとちょっと引いちゃいそうだから」

「それじゃ引く前に行くか」


 俺が出るのに続いて二人も出て来る。目の前にいるのはデーモンの群れ。……やっぱりデーモンしかいない。そうなるとやっぱりあいつらは進化したって事になるのだろうか? もしそうなら二人やアクアも何かしらの条件を満たせば進化できるのかもしれない。

 俺がそんな事を考えてる間にも周りの状況はどんどん動いていく。ミヤビはグレイブを操り舞い踊る。そう、俺が棒術でやっている事をマネし出して元々舞をやっていたこともあり、動き方がだいぶ変わっていた。数が多いし流れるように動く必要があるというのも理由だと思う。

 エリナも必死になって魔法を撃ちこんでいる。それでも五発撃ちこんで倒せているのだから上出来だろう。

 そして予想外なのがアクアだ。水魔法も水を当てるだけだったのが変化して高圧の水を吹くように撃つことができるようになっていた。それを頭にくらうと一撃で倒せてしまうのはもうどう答えていいのかわからない。


「ミヤビは当然としてアクアの戦果がすごいな」

「私としても動けるようになってるとは思っていましたが、デーモンを一撃で斬り飛ばすことができるとは思っていませんでした」

「私が一番攻撃力低いよね……」

「エリナは元々が支援タイプでしょ? むしろここまで戦える方がおかしいですよ」

「一番おかしいのはアクアだと思うよ」


 そうエリナが言うと視線はアクアに集中する。アクアは恥ずかしそうにプルプル震えてる。アクアよ。そんな感情表現まで覚えたのかと思ってしまった。


「スライムってこんな事もできるようになるんだね」

「昔育てた時はこんな事できなかったはずなんだけどな」

「では昔と今で違う事があるのですか?」


 違う事……そもそも世界が違う。後は……ご飯? 環境? ……環境とご飯か……。


「スライムって周辺環境によって特性が変わるよね?」

「そうですね」

「つまり俺の傍にいて、俺の魔力を好んで食べてるって事はかなり俺の影響を受けてる。それが原因? それに前にここに来た時はハイやらアークやらバフォもどきがいたから成長もしたんだろうなぁ」


 それを聞いたミヤビがぽかんとしてる。バフォもどきはわからなくてもハイやアークは理解できてるのだろう。


「そんな危険な魔物がここに……?」

「手加減なしのライトウェーブで全部蒸発したから戦ってすらいないけどね。バフォもどきもそれでまともに動けなくなってたし」

「よくわからないけど、大物を倒してアクアはもっと強くなったんだね」

「そういう事だな。強くなる為にミヤビみたいな加護ってつけられないのかな……」

「私できるならほしいな」

「ん? あれ? 繋がった?」


 加護が繋がるのはどうやら相手が求めてこちらが許可した場合らしい。今回は順番が逆だったけど、それとアクアにも繋がったみたいだ。アクアもほしがったってことかな?


「そうなの?」

「エリナは特に感じないのか?」

「うん」

「その感覚はおそらくある程度感知系の修業をしていないとダメなのではないでしょうか?」

「そうかもしれないね」

「それじゃ、少し休んだし上に上がろうか。おそらくハイとかアークがいるけどがんばっていこう」

「おー」

「私のフォローもお願いしますね。そんな魔物一人じゃ厳しいですから」


 そんなこんなで俺達は上を目指して移動を開始したのだった。

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