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28.買い物

 気がついたらお昼過ぎていた件について。

 どの状況で寝たの覚えてないって相当だと思うんですけどどうなのだろうか? そんな中でも二人は俺よりも早く起きたようだ。


「おはよう」

「おはよ」

「おはようございます」

「よく覚えてないんだけど満足してもらえた?」

「うん」

「はい」


 もう輝かんばかりの笑顔が二つそこにはあった。満足してもらえたならいいけど二人相手にするって大変だよね……。二人いれば十分なので今度からはお断りしよう。お断りできるよな?




 帰って来たばかりなので今日はゆっくり一日を過ごすつもりだけど、ギルドには顔を出して指名依頼だけはやっておこうと思った。


「ギルドに行って来るけど二人はどうする?」

「ついて行くよ」

「お供します」

「それじゃ、屋台で色々つまみながらギルド行こうか」


 そう決めて出かけた。屋台でロゲホスの焼肉串が売っていたので買ってみた。中々おいしかった。俺達が狩ってるうちはいいけど、その後はきっとあまり出回らなくなるんだろうなぁと思うとなんとなく味わって食べなきゃいけないような気分になった。

 自分で行けるんだからそんなに気にしなくてもいいとは思うけどな。




 ギルドに着いた俺達はいつも通りにスイナさんの所へ向かう。


「いらっしゃい。ユキト君、いい話とめんどうかもしれない話どっちが先に聞きたい?」

「早く用件が済む方からお願いします」

「それなら先にロゲホスを置いて来てもらっていいかな? その間に準備しちゃうから」

「わかりました」


 一人でも行ってもいいのだろうけど、なんとなく三人で解体場に行きロゲホスを置いて戻ってくると、先ほどまではなかったものがカウンターに乗っていた。


「おかえりなさい。カード貰える? 指名依頼の処理しちゃうね」

「ところでそれは?」

「今まで保留になってた報酬の布だよ。これでよし。カード返すね。それで、今まで待たせた分って事で糸を一緒に持って来てあって、布も三十五回分一括で渡すからちゃんと終わらせてねって伝言付だよ」

「依頼ってこんな感じでしたっけ……」

「依頼元が商業ギルドのギルドマスターで連続指名なんて滅多にない事してるから、できる芸当だね」


 とりあえず普通じゃないって事だけは理解した。これで俺とエリナの服を新しいものに変えることが出来る。ミヤビの巫女装束は素材がいいし、エンチャントもしっかりかけてあるものだったのでそのままだ。下着は俺が作った物を身に着けている。装備も一式かえてほしいと言われたが、さすがにそれは出来なかった。それでも容量が空いてたので隙間に快適を入れる事で改善されて喜んでいた。


「これで服を新しいものに変えられます。俺はともかくエリナは良い物を装備しててほしいですから」

「それならローブくらいは店売りの高い物買ってあげたらどうかな?」

「……そういえばそうですね。どこに行けばいいかな……」

「ユキトくん、ユキトくん。出来ればユキトくんが縫ったものがいいな」

「同じ素材の中でなら俺が縫うのがいいと思うけどそうでないならいくらでも良い物はあるしなぁ。ミヤビの服とか」

「そうだけど……」

「とりあえずは見てから決めようか」

「……うん」


 そこでしょんぼりするのはやめてもらいたかった。俺が悪い訳じゃないのにヒシヒシと罪悪感に苛まれる。


「エリナちゃん、我がまま言うのもいいけど心配してくれるユキト君の事もちゃんと考えてあげないとね。資金に余裕があるならお金で買える安心は買っておくべきだよ」

「ごめんなさい……私……」

「謝らなくてもいいよ。中の服は俺が縫うし、いずれは俺が全部作るからそれまでは我慢してくれないか?」

「うん、約束ね」

「ユキトさん、私もお願いします」

「はいよ。二人ともいずれはね。それでもう一つの話ってなんですか?」


 正直な所は聞きたくもないのだがそういう訳にもいかないだろう。


「昨日あの後会っちゃったんだって?」

「クランの話ですか? それなら変なのに会いましたね」

「そこのクランマスターから謝りに来いって連絡があってね」

「寝言は寝て……うるさいから寝言も言うなって言ってもらえます?」

「そう言っておくね」

「ユキトさんさすがにそれは挑発にしかならないような……」

「でも、クランには入らないって言うのに突っかかってきたのは向こうだし」


 むしろ挑発に乗ってきたら全て潰せるのでいいんじゃないかなって思う。力があるせいか最近は殲滅思考に偏ってる気がする……。


「むしろユキト君が潰してくれるとありがたいけど、一級も所属してるからね」

「ちゃんと相手の実力を知れば知るほどランクが虚しく聞こえてくるんですけど……」

「あー……ユキト君はもうその域なんだよね……」

「そう言えば特級ってどうしたら慣れるんですか?」

「こうすればなれるって言うのはないかな。大きな功績を立てるとそれが評価されてって感じだからね」

「ミヤビを特級に上げて周りを黙らせようと思いましたけど、それも難しそうですね」

「自分じゃないんだね」

「まだ七級ですから」


 そう、まだ七級でしかない。ここから先はギルドの判断が大きいから地道にやって信用を得ていくしかない。

 それなのに二級があれって冒険者ギルドという組織は大丈夫だろうかと疑いたくもなった。


「それでは大きな功績というのはどのようなものがあるんですか?」

「王都付近だとアーマードボアを倒す時に普段考えられてる被害よりも圧倒的に少ない被害で討伐した時の立役者が特級に選ばれたかな」

「またずいぶんと基準が低いですね」

「ユキト君……。低くないからね? 普段なら数十人の犠牲が出るのが当然なんだからね」


 おそらく俺なら一人で倒せる。だけどミヤビは厳しいかな……。元々火力があるタイプではないから硬いアーマードボア相手だと相性が悪い。


「真面目にコツコツ頑張る事にします」

「そうしてくれると嬉しいかな。ユキト君ならいずれは届くだろうしね」


 話を聞いたらフラグが立つという事がないといいなぁと思いながら、特級というものに思いをはせる。……稼ぐ為にはランクを上げないといけないよな。程度にしか思えない俺はおかしいのかもしれないが、おそらくすでにそれだけの力を持っているからこそそう思えるのかもしれない。




 元々紹介状は持っているし、ミヤビがいるなら紹介状が偽物として追い返される事もないだろうという事でエルド商会にやってきた。


「いらっしゃいませ。……失礼ですがユキト様とエリナ様でしょうか?」

「ハニエルさんから情報が回ってるんですか?」


 まだあれからそれほど時間は立っていなのでまさか店員にそれを話しているとは思ってもみなかった。紹介状見せても怪しまれるんじゃないか? なんて思ってたのが嘘のようにスムーズだ。


「お二人が来られた時に失礼のないようにと言われております。ですが申し訳ありませんが確認の為紹介状を見せて頂いてもよろしいですか?」

「はい、これですね」

「ありがとうございます。……ご協力ありがとうございました。そちらの女性もユキト様の仲間でしょうか?」

「そうです。彼女は一級の冒険者なのでそのままでいいですよね?」

「もちろんでございます。何か良い物があればぜひ見て行ってください。それで本日はどのようなご用件でございましょうか?」


 メインはエリナのローブだ。後できれば何か効果を持ったアクセサリーだろうか? 俺は身体強化すら使ってないのだから必要ないだろう。


「エリナのローブがメインで後二人に何かいいアクセサリーがあればそれをお願いします。予算は三百万リーレくらいなんですけど大丈夫ですか?」

「ローブと効果の低い小物数点なら問題ありません」

「それじゃぁお願いします。二人はその人について色々みてくるといいよ」

「あのユキトくん、三百万って本当にいいの?」

「家もタダで手に入ったし、そうなれば装備にお金を回して上の方の依頼を受ける為の準備をしっかりしておくべきだよ」

「そうですね。ここはユキトさんに甘えるべきです。それと私は自分で買いますのでエリナが使ってください」

「……うん、ユキトくん。私がんばって強くなるからね!」


 そう言えばミヤビの財布事情って聞いた事が無かった。宿代とかいいよいいよで俺が出してたし。一級だしお金を持ってないってことはないのだろう。自分のお金だ好きに使うのがいいだろう。エリナはもしもの為にって事で十万リーレは渡してあるけどそれ以上は一緒にいるから問題ないと受け取ってくれない。


「あのユキトさん……」


 ミヤビが伺うようにこちらを見て来た。いったいどうしたのだろうか?


「どうかしたか?」

「いえその……私のお金もユキトさんに渡した方がいいでしょうか? こういうものはパーティで共有するものかと思いましたので……」

「今更だけど、自分のお金は自分で持ってて、それはミヤビが稼いだものなんだから」

「本当にいいのでしょうか……」

「それじゃ何かこっちの手持ちで足りない時は援助してくれればいいよ」

「わかりました。その時は必ず」


 そう言ってエリナとミヤビは色々と商品を見始めた。俺も色々と商品を見ていく。本当に質のいい物がそろっている。だからこそ、だからこそ思ってしまうのだ。こいつら全部エンチャントを施したいと。

 素材は良い物を使っている。職人もいい仕事をしている。俺は意図的にやっているが魔力を流す技術がなくても丁寧な仕事をすれば容量は増える。

 こっちにはすでにエンチャント済みの物もある。……この店に置いてある物なのにこの程度のエンチャント? 納得が、納得ができない!


「難しい顔をしていますがどうなさいましたか?」

「あれ? ハニエルさんこんにちは。もしかしてわざわざ降りてきてくれました?」

「もちろんです。それでどうなさいましたか? ほしいものでもありましたか?」

「いえ、そうではなく……そのですね……」

「お客様の意見は重要な物ですのでどうぞ、遠慮なく仰ってください」


 遠慮なくと言われても、エンチャントがお粗末とか言っていいのだろうか? 武器の質を褒めるというのもいいがすでに難しい顔と言われるような顔を見せているし、ほしいものがというのも否定してしまった。……正直に言うか。


「質は良い物が揃っているなぁ。さすが高級店って思ってたんですけどエンチャントがあまりにもお粗末なのでその差で思わず表情に出てしまったみたいです」

「……お粗末ですか? これでも腕のいい人に頼んでいるのですが」

「これで……腕がいい……?」


 俺が見ていたミスリルの剣は切れ味上昇がつけられているが無駄に広く容量を使っている。俺ならこれに耐久力上昇と汚れに強いくらいは余裕でつけられる。


「ハニエルさんは目利きに自信はありますか?」

「これでもこのエルド商会では立場がありますから、目利きはそれなりに」

「ならこれ見てもらえます?」


 今日はラフな格好をしているので、しまっておいたロングコートと鉄の片手剣を出してみてもらう。それを見る目はどんどん真剣になっていく。


「これはどこで手に入れた物ですか?」

「ロングコートは自作です。剣はアーラル商会ですね」

「アーラル商会でこのような剣が売っていたのですか? この程度の剣にいったいどうやってエンチャントを……。それよりもこのロングコートにも施して……」

「エンチャントも自分でしてます」

「それはすぐにでもできますか?」

「できますよ」


 エンチャントを継続した仕事にするつもりはないが、縫い物以外の生産系の事をがっつりやりたいと常々思っていた。一日二日くらいここでエンチャントをがっつりやらせてもらえないだろうかという思惑が働いていた。


「少しお付き合いいただいてもよろしいですか?」

「いいですよ。でも先に二人に声をかけてきてもいいですか?」

「そうですね。その方がいいでしょう」


 さて、突発ではあるけれど生産系の依頼を取れるかな?


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