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27.勧誘

 それから五日間はひたすらロゲホスを探しては倒し、回収しと動き回り、夕食後はエリナへの魔法指導やミヤビとの手合せなどをしていた。

 ミヤビの加入、エリナとアクアの成長により狩りの速度は上がり、家具を作り終えた俺は戦闘中にロゲホスを回収するという暴挙に出た為、回収速度も上がった。

 そのため合計で二千頭ものロゲホスが無限倉庫の中に入っている。毎日のように五十頭だしても一ヵ月以上もつし、あの家は俺達の物になったも同然だ。


 最終日は狩りをしないでそのまま王都へと帰った。成果は十分だったし、ずっと野営というのは知らず知らずのうちにストレスがたまるものだと思う。




「おかえりなさい。成果はどうだった?」


 ギルドでスイナさんと挨拶をしてようやく帰ってきたなぁと思えた。


「十分に、それで指名依頼お願いします」

「はいはい、そうだ、商業ギルドからの伝言で早く再開お願いしますって言ってたよ。それから余裕があれば五十までなら値下げなく買い取れるので依頼外の納品もお願いしたいだって」

「わかりました。大分狩ってきたので多く出していきますよ」

「お願いね。それとミヤビさん。ミヤビさんにクランからの勧誘が来てますがどうなさいますか?」

「ユキトさんが行くのであればそれに付き従うだけです」

「ユキト君?」

「すべてお断りでお願いします」

「了解、本人の希望によりクランには所属せず、現在のパーティで活動する事、パーティ自体もクランへの所属をしない事。合わせて伝えておくね」

「よろしくお願いします」


 ミヤビの実力なら勧誘が来るのはおかしくはない。おかしくはないけど、どうしてミヤビを勧誘したんだろうか? 巫女装束の美人だが、冒険者としての実力はまだここでは見せていないはずだ。

 そうなるとたまにある容姿で勧誘するというパターンか、それともどこかでミヤビを知っての勧誘か……。おかしなことにならなきゃいいけど……。


「ちなみに何で勧誘したか聞いてます?」

「一級冒険者をぜひ私のクランにって言ってたね。大人しく引いてくれればいいけど……」

「めんどくさそうな人ですか?」

「二級だから実力はあるんだけど……問題もあってね……」

「……何かあっても叩き潰せばいいですよね」

「ユキトさんが対処する必要はありません。なにかあれば私が」

「俺がやる事に意味がある。ランクは低くてもミヤビを連れてあるける実力がある事を見せる必要があるんだよ」


 ミヤビなら問題なく撃退できるだろうが、そうするとそんなやつにうんぬんかんぬんと色々とうるさいだろう。うるさく言って来るとおそらくミヤビがキレる。そうするとそいつが死ぬような目に遭う事になる。そんな事をミヤビにはさせたくない。

 そうでなくとも俺の力を見せておく方がいいだろうと思う。


「わかりました。確かにユキトさんが見くびられているのは我慢なりませんので思う存分叩きのめしてください」

「あんまりやりすぎないでね」

「善処します」


 そんな話をして、ロゲホスを五十頭おいて前に泊まった宿に行く事にした。さすがに高い値段設定なので満室と言う事はないと思う。

 しかし話を聞いたからなのかしっかりとフラグが立ってしまっていたらしい。




「ミヤビさん! おぉこのような所で会えるとはまさしく天の采配! ギルドでクランへの勧誘の件聞いていただけたでしょうか? あなたのように美しくそして強い女性を我がクランへ迎え入れる事ができるのは至高の喜び! …………」

「一方的に話し続けてるな」

「そうですね……」

「話しかけるミヤビさんすらこの人見てないよ……」


 目の前には一つ一つの小物は良い物そうなのにその数が多すぎて非常に派手で残念な男が延々と話していた。ミヤビを褒め称えるようなくだりもあるがミヤビにはまったく届いていなかった。むしろドンドン機嫌が悪くなっていく。なんでかと思えば、


「すでに私が入る事前提なのが気に入りません」

「……普通気に入りませんとか言われたらそれに反応してこっちを向きそうなのにまだ話してるな」

「このまま通り過ぎちゃダメかな?」

「それはいい案かもしれない」


 しかし、さすがにそれはできないようだった。移動しようとすると向こうも移動して進路を塞ぐのだ。それでも何事もないように語り続けるのがある意味すごい。すごいけど迷惑以外の何物でもない。


「アリルフさん、そこの美人さんがクランに入るっていうミヤビさんですかい?」


 そう言って近づいて来た十人程度の冒険者。後ろからも隠れてはいるが来てるのが三人いる。……もしかして時間稼ぎをされたのだろうか? 俺とエリナを人質にしてクランに入る事を強制でもしようと言うのだろうか?小声でミヤビに話しかける。


「後ろ気が付いてるか?」

「はい、三人ですね」

「何かあれば後ろは頼む。エリナはフードにアクア入れておく。あのうるさいの以外は避けるだけならエリナでもできるからもしもの時はしっかりと動くようにね」

「うん」


 そんな会話がされてるとも知らず、向こうは向こうで話をしていた。


「おぉ! 奇遇だね。そうあそこにいるのが今度我々のクランに入ってくれるミヤビさんだよ。あのような女性が入ってくれるとはとても心強いとは思わないかい」

「それは心強いですね。非常にいいですねぇ」


 邪な感情を感じました。この程度の雑魚相手にミヤビの手を煩わせる必要もない。というか、みんないやらしい笑顔を浮かべてる。話をした後は地獄に落ちてろ。

 おっと、引いてくれたらちゃんと逃がしてあげますよ? 俺は一歩前に出る。


「人のパーティメンバーを勝手にクランに入れようとするのやめてもらえますか?」

「君は誰かな? ミヤビさんと一緒にいるという事は最低でも二級なんだよね?」

「七級ですよ」

「七級? 七級風情がミヤビさんと一緒にいるなんてあり得ないね。ミヤビさん、どんな理由があるか知りませんが、我々と共に参りましょう」

「お断りします」

「足手まといを抱えて戦うと言うのは一級としてどうなのでしょうか? あなたには相応しい仲間がいるのですよ」


 そう言うと後ろの三人が動いたので幻術を発動させる。効果は仲間二人を捕まえる対象と勘違いさせるというものだ。ミヤビや辛うじてこのうるさいはかからないと思うがそれ以外なら余裕だろう。

 俺達の後ろでケンカが始まった。大人しくしろ、抵抗するな、あいつらどこにいったんだよ。などなど言いながら仲間をボコボコにしていた。


「後ろが騒がしいみたいですね」

「あいつら何をやってる」

「お知り合いですか?」

「し、知る訳ないだろ!?」

「そうですか。あなたがどれほど強いか知りませんが、まさか後ろから襲わせようとしていたなんて事はないですよね?」


 これを聞いて相手はにやりと笑った。自分が何級なのかを言えば大人しくなると思ったのだろう。俺から見ればただの雑魚でしかない。


「そんなわけないだろ? 私は二級なのだから! まだ二級ではあるがすぐに一級に上がる。そういう男とミヤビさんは一緒にいるべきだ」

「二級ってのはその程度の実力でなれるんですね。なら俺が一級になるのもすぐなのかな」

「おい、私の事をバカにしたか?」

「そんな事も確認しないと自信がないの?」

「まぁまぁアリルフさん、ここは俺がビシッと実力ってやつをわからせてやりますよ」


 腰ぎんちゃくっぽいのが前に出てきてそのまま殴り掛かってきた。ちゃんと意見を聞いたうえで動いた方がいいと思うけどね。

 俺は殴ってきた拳ををそのまま掴み止めた。


「これが実力ねぇ……。自分の実力が分かりましたか?」

「てめぇ!」

「いらないから返すよ」


 俺は掴んでいた拳を放して体を手のひらで押し出した。そいつはそのまま飛んでいき二級の人にぶつかった。……仮にも二級なら避けるか受け止めるかくらいしてほしかった。


「二級のくせに避けられないの?」

「全員であいつをやっちまえ!」

「「「おう!」」」


 仲良く武器まで抜いてこっちに来た。だから俺は丁寧に武器を全て壊してあげてから気絶させた。周りから見たら軽くホラーだったかもしれない。俺がいなくなったと思ったら次々に武器が破壊されて、破壊が終わった後は次々にそいつらが倒れて行くのだから……。


「それで? あんたはどうするのさ」

「五級を倒したくらいで言い気になるなよ! 私は二級なんだ!」

「あれを見てそれでも俺を脅威だと思わないとか危険感知能力低すぎない?」

「うるさい! ミヤビは俺のものだ!」

「俺の女に手を出すんじゃねぇよ」


 静かにそう相手に言って気絶させた。どうか良い悪夢を……。


「それじゃ、帰ろっか」

「うん」

「はい」


 俺達はとっととその場から離れた。早く離れないと色々と面倒な事になると思ったのだ。それにしてもなんだかミヤビが嬉しそうだ。


「ミヤビ? どうかした?」

「ちゃんと聞こえましたから」


 狐人族は耳がいい。つまり俺の女発言が届いたと言う事だろう。ちょっと恥ずかしかった。


「今夜こそは貰っていただけますよね?」

「私も久しぶりだからいっぱいしたいな」


 今夜はとても長い夜になりそうだ。

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