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26.戦力確認

「デタラメですね……」


 目の前の光景を見たミヤビの素直な感想だった。スライムがロゲホスを倒していき、元々回復が得意なはずのエリナはライトアローでロゲホスを倒す。そして俺はというと、それを横目に見ながら家具を作っていた。


 森を移動してる最中に木を数十本切り、無限倉庫に収納。ロゲホスを狩り始めてからはサンダーニードルで数を調整しながら、魔法を使って木を乾燥させ、必要な大きさに切りそろえて行った。そして今はその切り出した木材でベットを作ったりしてる訳だ。


「まずはどのように狩るかを見ておくと言う事で手を出していませんが、狩り方もめちゃくちゃなら様々な加工を行いながらも戦場を把握して逐次フォローしてるユキトさんもデタラメです」

「でも、これが俺達の普通。それでどう参加する?」

「アクアとエリナの為にもあまり出しゃばらず、ユキトさんがアクアにしている援護射撃を変わろうと思います。よろしいですか?」

「頼む。空いた余力で家具作りをがんばるよ」

「とても戦闘中の会話ではないですよね」

「俺がいて、ミヤビがいる。この状況で相手はあの程度、ただの狩りだろ? もちろん油断は禁物だけどそんなものはしてないしね」

「家具を作りながら会話してるのは……油断というより異常ですね」

「そうだな。それでそろそろ頼むよ」

「わかりました」


 そう言ってミヤビは弓を構えて魔力で作り出した矢を撃ちロゲホスを倒していく。早くはないが確実に一発で仕留めていく。狩る数が多いので矢は温存してるみたいだ。


 俺はその間に家具を作る速度を若干あげる。あの建物には家具がほとんどなかった。だから机やら椅子やらベットやらを作っている。

 デザインはシンプルにして塗装して終わり。デザインのいいものを作るには圧倒的に道具が足りない。むしろ金槌しかない。切るのはすべて魔法任せだ。

 それに本格的にそこに住み着く訳でもないのでこの程度にしておいて、ほしいものがあれば買えばいいと思っている。


 二階の部屋の使い方は一部屋が三人で寝る寝室。ベットはキングサイズの大きなものではっきり言えばこれで一部屋がほとんど埋まってしまった。

 その為、一部屋は女性用の服や道具をしまい着替えをする部屋、一部屋は俺が使う服などをしまい着替える部屋へとなり、残り一部屋はベットもクローゼットもある普通の部屋にしておいた。

 一階はみんなで使うスペースになる。そして地下は帰還用マーカーや転移魔方陣を敷く事になる。


 そこに置く最低限の家具をこのロゲホスを狩ってる間に作り上げてしまうつもりだ。無限倉庫のおかげでこういう事も余裕で出来る。持ってて良かった無限倉庫。


 スライムがロゲホスを倒し、見た事のない衣装の美女が弓を使い、男はそれをしり目に物を作る。そんな中で美少女がまともに見えるがこの集団の中にいる事自体がおかしい。そんな感じで見られそうな俺達はきりのいいところまで狩りを続けるのだった。




 夜、周囲にライトを巻いて明るくした。今ままで伸ばしていたミヤビの実力を測る。


「準備はいい?」

「はい」

「ではいつでもどうぞ」


 ミヤビの今の武器はグレイブだ。対する俺は片手剣。それでも魔法使用もありなので距離はそんなに気にしていない。

 ミヤビはこちらを鋭い視線で見ながら、こちらに突っ込んで来て鋭い突きを放つが俺はそれを横に払った。その払われた力に抵抗せず受け入れて加速させて回転という動きに繋げて横からなぐ。受け止める事も可能だがひとまず後ろに飛んで回避する。

 その後ろに飛んだところに魔法が撃ちこまれる。これは大人しくマジックプロテクションでガードする。ガードしたがそれが煙幕となって視界を遮る。


「はぁぁぁぁぁ!」


 気合の声と共に上からグレイブが振り下ろされ、しかも煙幕の中からもミヤビが突きを放って来た。

 しかし、俺はどちらも無視して後ろを向く。そこにはグレイブを構えたミヤビが立っていた。


「やはり幻術に引っかかってはもらえませんか」

「俺が見ればさすがにわかるよ。それに視覚だけに頼らない相手でもわかるかな? 勘のいい魔物にも効かないか」

「はい」

「その辺はしっかり理解してるみたいだな。それでも使って来い。使わなきゃ成長しないからな」

「はい、行きます!」


 今度は幻術で複数出してかかってきた。こちらも幻術をミヤビの目の前に姿が現れるようにして使う。

 急に目の前に現れればわかっていても反応するものだ。その幻術を貫いて俺はミヤビに迫る。それを迎撃しようとしてミヤビは俺に背中を押された。幻術を貫いて来た俺もまた幻術だったわけだ。


「視覚があるとほんの少しだけでも騙せるかもしれない。そこにもう一手入れて思考を更に混乱させる。わざわざ煙幕を張らなくても再現できるわけだな」

「同じことをすぐに返されるのはきますね」

「俺も同じことは何度もやって来たってだけだ。さぁどんどんいこう」


 それからはグレイブを縦横無尽に振るい突き、魔法を織り交ぜ、幻術で隙を作ろうとしたりと様々な手段をもちいて打ち込んで来る。

 その事如くを避け、受け止め、受け流し、としながらミヤビの実力を測る。


「ミヤビ! 後先考えずに俺に一撃入れて見せろ!」

「はぁ!」


 気合を入れて再度連続で突きを繰り出してくれるが俺には届かない。でもさすがは一級なだけはあって、むやみやたらに武技を使ってこない。焦って一発勝負に出ようものならさっさと沈めるがその危険性は十分に理解しているようだ。

 だからこそまだまだだ。まずはその武具の可能性を見せる。


「ミヤビ、こちらから仕掛ける出来るだけ耐えろよ」


 ミヤビはその言葉に反応して動いた。そして俺は最初っから武技を使っていく。


 武技を使うのが危険な理由は発動前に武器が薄ら発光してこれから武技を使いますよと宣伝せんばかりだったり、使うと同じ型でしか動けない。使用後に硬直時間が発生するなど強力だが問題も多い。

 だが、使い込んでいけば少しずつ改善する。名前を呼ばなくても発動できるようになり、徐々に光は薄くなり、硬直時間も短くなる。使い込んでいけばその状態までは持っていける。

 俺がやる事はその先にある。コンボという武技と武技を繋ぐものもあるが俺のやる事はもっと自由だ。

 武技を使ってる間は自分の体が武技に使われているような状態だ。そうではなく魔力を込めて思い描く武技を自ら再現し武技として認めさせるという方法が俺の取る方法だ。これをするとどうなるかと言えば、武器の種類も問わず、発光もせず、硬直時間もなく武技の威力だけを放てるのだ。

 そして硬直時間がない事をいいことに、ミヤビにひたすら武技を叩き込み吹き飛ばした。……やりすぎたかもしれん。


「ヒール、ミヤビ……大丈夫か?」

「先ほどまであれほど疲れていたのに……」

「ヒールはケガの回復と体力の回復を切り替えられるらしいからな」

「そのような事が……」

「とりあえず今日はここまでにしようか。総評はまた後で、風呂も作ったし入るといい」

「外で裸になるのはちょっと……」

「もちろん小屋の中だ。安心していい」

「途中で作っていた小屋はそれようだったんですね」

「そう言う事だ」

「一緒に入りませんか?」

「私も一緒がいいな」

「狭いから一人ずつね」

「「え~」」

「本当に二人は仲がいいな」


 二人が仲良くなればなるほど俺の立場が弱くなるとは思うけど、ケンカなんぞされるよりはよっぽどいいだろう。ただ、エリナの様子は見ておかないといけないと思う。ミヤビとの戦力差は圧倒的だ。エリナの成長が早いとはいえその差は中々縮まらない。しかも、本人は気が付いてるかわからないが、手合せしてる最中も少しずつスキルが成長してるのを感じた。

 二人ががんばってるのはもちろんなんだが、俺の持ってる指導スキルの性能がプラスの方向にぶっ壊れてる気がする。顕著にわかりやすいのがアクアなんだけどな。


 なぜか俺からはいる事になり、ミヤビ、エリナの順に入っていった。お湯はもちろん俺が魔法で出した。

 外で待機してる間、エリナがべったりくっついてくるのは予想の範囲内だったが、恥ずかしそうに俺に寄りかかって来るミヤビは少々予想外だった。これの打ち合わせ? のようなものが俺を最初に風呂に入れた理由だったのかもしれない。




 風呂からあがり、片付けた後テント内で今日のまとめに入った。


「エリナは順調に成長してるみたいだし、狙いもよくなってる。魔力も魔法も順調だからこのまま行こうか。そろそろ支援は自分でかけるようにして支援の方も伸ばそうね。魔力確保の為とはいえ攻撃寄りだったからね」

「うん」


 焦らないようにと言うべきか迷ったけれど、そう言った方がなんとなく焦りを生む様な気がして言わなかった。着実に強くなってるので目の前の事をしっかりと積み上げて行ってほしいと思う。


「ミヤビは弓での狙いは正確だし、グレイブもかなり使えてた。これで回復、支援が得意っていうんだからそっち方面も期待しておくよ。さっきは焦って武技を使わなかったのも良かったと思うよ」

「武技は確実に当てられる。追撃されないという状況でなければ怖くて使えませんから……。しかし、先ほど最後にやられていたのは武技の連続使用のようにおもえたのですが」

「その通りだよ。武技に頼らず武技を出すと硬直はもちろん武器の種類、発光そう言ったものを全て無視して発動できるようになる」

「武技に頼らず武技を出す?」

「武技って引っ張られる感覚があるだろ? それを魔力を込めた状態で再現するとデメリットなしで武技を使えるんだよ。しかもそれを完全に習得できれば前に2回突き出す2連突きを上空に向かって打てるようになったりする」


 武技に関しては初耳だったのかかなり驚いているようだ。ちなみにプレイヤーでもこれができる人は少なかった。武技の完全トレースというのが中々できないのだ。

 だからできる人は少なかったし、できても初級の武技で出来るようにしておいて通常攻撃に織り交ぜるとい使い方くらいしかしてなかった。

 俺はプレイ期間だけなら長いのでこういう技術も習得していた。これでなんで上級の試験が突破できないのかと不思議がられた事もあるが、自分で決めたルールのせいとだけ言っておこう。


「そのような方法が……」

「とはいえこの方法はかなりの反復練習が必要になるから自分の使いやすいものをとりあえず一つ使いこなせるようにがんばろうか。最初は大変だろうけど一つ覚えれば簡単とはいかないまでも、覚えやすくなるはずだから」

「はい」

「アクアは安全第一でがんばろうな。軽く顔に水あててやるってのもやってみるといいぞ」


 アクアは体を伸ばして上の方を縦に何度か振った。おそらく頷いてるんだろう。この手のパターンがだいぶ増えて来たと思う。


「それにしてもユキトさんの底がしれません。私が指導される側になるなんていったいいつぶりの事でしょうか……」

「いやか?」

「いえ、全力でぶつかる事の出来る相手がいるというのは嬉しいものだと実感しました。これからもよろしくお願いします」

「こちらこそ頼むよ」


 使徒がどれくらいの力を持っているかはまだ実際に会ってないのでわからないが、下手をしたら敵になる可能性もある。そう考えて行動して行こうと思う。だからこそ二人の実力を伸ばすのは必須だ。


 そんな事を考えながら、夜は更け三人で眠った。さすがにここで手を出すなんてことはしませんよ?

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