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20.今宵

 魔物に一切襲われる事なく俺達は進んでいく。食事は買い込んできた食料を食べる。ハニエルさんにもごちそうした。そして俺達は他の冒険者とは一切かかわる事がなかった。


 順調に進んだため、町に着いたその日に荷物をすべて降ろすことができた。他の人たちからすれば、なぜか馬たちも元気だったために次の日には王都に戻る事になった。

 意識する事で普段はケガを治すヒールが体力回復効果に代える事に気が付いたのは、例の短剣講習だった。疲れ切った子供がヒールをしてくれと言うので、体力回復効果はないんだけどな。体力回復したらいいのにな。なんて思いながらかけたら急に元気になったのだ。

 その後はエリナに協力してもらって試したところ、その効果が確実にあると判断できた。ただ、普通はできないとエリナが言っていた。俺の知識の中でもそんな事ができるなんて知らなかった訳なので黙ってる事にした。

 ちなみにきっかけの子供は、なんだ。元気有るじゃないか。といって誤魔化した。誤魔化せたよな?


 途中雨が降ったりもした。それも魔法で雨を遮り、ぬかるんだ道はプロテクションを張る事で移動速度を落とさずに移動を続けた。ハニエルさんの引きつった顔が忘れられない。魔法の同時使用に長時間使用、あまりにも常識外れな光景だったらしい。

 ハニエルさんは忘れてるようだが、俺は町にいる時以外はずっと魔物除けも使っていたので今更な気がした。


 そしてそのまま何もないまま護衛依頼は終わってしまった。

 盗賊に襲われる。この辺りでは魔物除けが効かないアーマードボアに襲われるという通常イベントフラグが一切立たずに本当に終わってしまった。




「これで二人とも七級昇格だね。おめでとう」

「「ありがとうございます」」


 二人そろって微妙な顔をしてたと思う。だからこそスイナさんも疑問に思ったのだろう。


「二人ともどうしたの?」

「魔物除けの結界は張ってましたけど護衛依頼っていうほどの仕事はしなかったなって思って」

「ユキトくんはそれでもお仕事してたでしょ? 私なんてアクアと遊んだりハニエルさんと話するだけだよ?」

「どういう事?」


 スイナさんに今回の護衛依頼がどんな感じだったのか話、商業ギルドの思惑も軽く話した。スイナさんが眉間のしわをグリグリ揉んでいる。その気持ちはよくわかる。俺も最初はそんな気持ちだった。


「商業ギルドには抗議を入れておきます。だけどどんな依頼内容であったにせよ資格は満たしてるから二人は七級にちゃんと慣れるから安心してね」

「護衛依頼はちょっと受けたくないですけどね」

「それは受けなければいいだけだしいいんじゃないかな? それでもしばらくは指名依頼を片付けないといけないだろうけどね」

「最低一回は行かないと行けないですからね」

「無理はしないでね。今日はこの後どうするの?」

「指名依頼受けて、ロゲホスの解体お願いして帰ります。なんだか疲れましたから」

「そう、お疲れ様。依頼の受理はやっておくから帰っていいよ」


 スイナさんの言葉に甘えて、解体場に向かいロゲホスをお願いして宿に帰った。



 夕食をとり、一通り身の回りの事をして体も洗いすっきりしてベットへと寝転がった。


「特に何もしなかったのに今回は疲れたね」

「そうだなぁ……。体は動かしたいし、自分のペースでは行動できない。そういうのが積み重なったかな」

「ユキトくんのおかげで魔物も来なかったしね」

「アーマードボアなら魔物除け効かないから来るんじゃないかなって少し思ってたんだけどね」

「そういうのは遠慮したいかな」

「護衛依頼は安全第一って考えればそうだね」


 それは分かってる。分かっているがそれでもここまでお約束無視されるのはちょっとどうなのだろうかと思ってしまった。力があっても物語の主人公みたいな事は早々起きるもんじゃないって事かな。


「ねぇユキトくん、そっちに行ってもいい?」

「ん? あぁいいよ」


 俺はエリナがベットに腰かけると思っていたのだが、ポスっと座った後に俺の上に倒れ込んできた。


「エリナ?」

「ダメかな?」

「ダメじゃないけど……その、どうしたの?」

「一緒にはいたけど二人じゃなかったから」


 アクアも居るけどと言うのは無粋だろう。アクアはアクアで最近妙に物わかりがよく一匹でコロコロしてることがよくある。今もきっとそうしてるだろう。

 護衛依頼中はハニエルさんと一緒にいた。夜は夜で俺は一人で眠り、エリナはハニエルさんと一緒にいた。確かに二人の時間というのはなかった。そうだとしてもずいぶんと積極的な行動だった。


「ユキトくん、私はいつまで一緒にいられるかな?」

「エリナが望めばいつまでも」

「本当に?」

「もちろん」

「それならいいよね」


 そう言って倒れた体を起こしたエリナは位置を変え俺にキスをしてきた。動かずに受け入れた訳だが、これは完全に俺がヘタレで動かなかった事でエリナに行動させてしまったという事だろう。


「好き、好きなの。だから傍にいたい」

「俺も好きだよ。先に言わせちゃってごめんな」

「うんん、一緒にいられればそれでいいから」


 ギュっと抱き付いて来たのでおれも腕を回して抱きしめる。それからまたキスをされる。このままされるがままと言うのはアレかなと思っていたのだが、


「ユキトくん……いいよね?」


 そう言って服を脱ぎ始めた。これはまずい主導権がどうこうとかそんなものはどうでもいい。一度始めたらおそらく止められない。もしこれで妊娠でもしてしまったら……。問題ないかもしれないけど、せめてもう少し二人の時間を楽しみたい!


「エリナこのままはまずい。妊娠したら色々大変だろ?」

「え? ……ユキトくん、避妊の魔法知らないの?」

「そんなのがあるの!?」

「うん、学校で必ず習うよ……。そっか、ユキトくんは孤児院出身だから知らなかったのかな……。でも、大丈夫だよ。私がしっかり使えるから安心して任せて」


 魔法使えるから任せてなんだろうけど、私がリードするから任せてと男前っぽいセリフにも聞こえるなぁとか思ったが、すでに脱ぎ終えてこちらを脱がしにかかってる。

 抵抗する理由もないのでされるがままだ。意外と実は肉食系ですね。なんて思いながら魔法を発動させる。


「遮音結界」

「ユキトくん?」

「エリナのそういう声を外にいる人に聞かれたくないから張っておいた」

「それじゃぁなんにも遠慮することないね」


 その後、初めてのはずなのにエリナにおいしくいただかれました。どう考えても終始エリナが主導権を握っていた。邪魔する必要もないので言われるがままにしていたのだけれども、ヒールを使って体力回復してまでやり続けるとは思わなかった。

 エリナの思わぬ一面を見た気がした。俺としてはなんの問題もない。




 起きると日がある程度上がってるのはわかった。時間を確認してみればもう二時になっていた。まぁ寝たのが周りが少し明るくなってきてからなんだからこんなもんなのかもしれない。

 眠ってるエリナの頭を撫でる。さすがにあれだけやればいたずらしようとか思わない。それにギルドにも行かないといけないのだから、始めてしまってはまずい。


 そろそろ起こさないとまずいかなって思っていたら、薄っすらと目が開いて俺を見る。


「おはよう」

「おはよう…………。 ッ!?」


 眠そうに挨拶したかと思ったら、目を見開いて布団を手繰り寄せて隠れてしまった。亀みたいになってる。いったいどうしたと言うのだろうか?


「エリナ?」

「ぁぅぁぅ、昨日はなんてことを……」

「……まさか俺としたこと後悔してる?」

「ち、違うの! そうじゃないの! そうじゃなくて、私の乱れっぷりがひどいことになってたでしょ?」


 確かに乱れっぷりは半端じゃなかった。それにものすごく求められた。だけど今更恥ずかしがるような事なのだろうか?


「俺としてはあれでもいいけど、エリナとしてはダメなの?」

「ダメだよ。あんなひどいの……ずっとユキトくんとしたかったからってあんな風に自分がなっちゃうなんて……」

「ずっと、っていつから?」

「会った日から……」

「お礼どうこうってやりとりがあった時から? 確かに助けた事は助けたけどいくらなんでも早すぎない?」

「私、ゴブリンに気絶させられた時って覚えてないから、助けてもらったって自覚あんまりないの。それよりあんな風に優しくしてくれたり、甘えさせてくれたのがうれしくて……。私ね。親にもあんまり甘えさせてもらえなかったから、いっぱい優しくしてくれて甘えさせてくれたユキトくんに初めてもらってもらいたいなって……」


 俺の場合は親がいなくても院長が甘えさせてくれた。その院長の手助けがしたくて周りの面倒をみていたけど、親がいるエリナが甘えさせてもらえていなかったと言うのはちょっと信じられなかった。


「今はそう言われてもわかるけど、昔は親がいる子供なら当然のように優しくされたり、甘やかしてもらえてると思ってたよ」

「私はあんまり手がかからなくて、幼馴染に私の親まで世話してたんだよ。おかしいよね」

「どういう状況だそれ……」

「親同士が仲良くて、私が大人しくしてたから暴れ回るリックを私の親まで一緒になって色々面倒みてたの。私は両親に構ってもらいたくて、リックが大人しくなればいいのかと思って私も親のマネを始めたの」

「その結果、更にって事か?」

「うん、褒められたのは嬉しかったけどけっきょくエリナはしっかりしてるから任せて安心って認識になっちゃって、兄さんにばっかり構って私はずっとほったらかしにされたの……」


 いくらしっかりしてるとしても子供だぞ? って思うのは俺だけだろうか? それにほったらかしはないだろ。こんなに可愛い娘をほったらかしにできる父親とか本気で信じられない。


「その分、俺に思いっきり甘えていいし優しくするから」

「ユキトくん……」


 いい雰囲気なのだが、エリナが亀になってるのが雰囲気をぶち壊してくれてた。ただそのおかげで多少は冷静でいられる。話はこの辺にしようか。ポンポンとエリナの頭を軽く叩く。


「それじゃ俺は着替えて来るからエリナも着替えておいてね。もういい時間だからギルドに早く行かなきゃならないから」

「え、あ、うん」


 こうしてまた一日が始まる。……俺達にとってはここから始まる。

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