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18.七級試験へ

 俺からしたら控えめに、それでも人から見たらそれなりの速度で森の中を走っていた。

 エリナもけっこうがんばってる。森で走るのは足元が悪いから走るのは大変なのだ。正直ここまでの速度で走れるとは思っていなかった。


「あ」

「よっと、大丈夫?」

「うん、ありがとう」


 たまに転びそうになるのはご愛嬌と言ったところだろうか? エリナはローブのままではさすがに走りにくいだろうと言う事でパーカーを着ている。

 むしろパーカーはエリナの物になりました。ロングコートが出来てしまえば必要なかったしいいんだけど着る機会はあるのだろうか?


 そんな訳で走り続けて一日で到着する事ができた。やればできるもんです。到着した時エレナがものすごい驚いてた。普通森を突っ切るなんて事はしないし、行きに二日かけるからと言ってあったのでそれも当然だと思った。

 すでに日が暮れ始めていたので、そのままテントを張って休むことにした。




 そして次の日、前回同様一頭を足を折って鳴かせ、周囲のロゲホスをどんどん集めてどんどん倒していく。前回と違う点は二つ。一つは一頭を俺が魔法で拘束してエリナがそれ目がけて攻撃魔法を撃っている事。そしてもう一つはアクアも戦っているという点だ。


 色々と心配ではあったがアクアはやる気満々だったので、支援魔法をかけて送り出した。


 最初は正面から体当たりをしたが、オートプロテクションが発動してしまった。つまりアクアの体当たりの方がダメージが大きくはいると判定されたのだと思う。細かな理屈は知らない。普通に考えればしっかりと距離を走って速度が乗ってるロゲホスの突進とその場から飛びかかるアクアの体当たりでは当たり負けするのは当然だろう。


 次は避けてすれ違いざまに体当たりをする事だった。これは一応成功と言えば成功だった。

 最初のうちはタイミングが合わずに避けきれず蹴られる事が多かった。オートプロテクションのおかげで無事だったがハラハラしたものだ。

 だからなのか、避ける事に集中し出した。避けるだけならなんとかなるようで、これはすぐにできるようになったが、攻撃しようとしても通り過ぎていて攻撃に移れなかった。

 段々と避けるタイミングがギリギリになり、ついに体当たりに成功したのだが威力が微妙だった。何度かやって多少はよくなった気がするが、それでも威力不足でビクともしていなかった。

 攻撃できる方法としては成功だけど、倒すという点においては失敗したと言っても良かった。


 そうなると現時点で一番威力がある攻撃は飛びかかり伸ばした体を縦に回転させた一撃だが、どうしても攻撃のタイミングが遅くなりまったく当たらなくなり、無理に正面から当てようとして吹き飛ばされたりしていた。


「アクア! 足を攻撃して動きを止めろ!」


 俺がそう言うと、アクアの動きが足を攻撃するものに変わる。最初は正面から体当たりしようとして逆に蹴られていた。

 次は避けて体当たりしようとしたがタイミングが合わずに後ろ足で蹴られ、それならばと後ろ足に体当たりしようとしても攻撃できる範囲が狭いので当たらない。避けながら横回転で止めようとしても体当たりと同じで当たり負けする。

 アクアが焦れるような感覚が流れ込んできたが、横回転の避け方と早さ、ロゲホスの速度を見てこれならと思い指示を出す。


「アクア! 逆回転で裏側からひっぱたけ! 出来れば関節部!」


 最初はタイミングが合わず空振りしていたが、少しずつそのタイミングを修正して行く。そして七回目で軽く当たるようになり、十三回目にしっかりとした一撃が入った。

 勢いよく走っているところからの、予想外の力のかかり方。かくっとバランスを崩して顔面を地面に強打しながらつっこみ、勢いが良かったのかそのままぐるっと回って背中から落ちた。

 どんな力のかかり方だよ! とは思ったがそこにアクアが今まで攻撃が当てられなかった鬱憤を晴らすかのように何度も縦回転の攻撃を加えていたが、地面に背中を叩きつけた時にはすでに首の骨でも折れたのか死んでいた。

 しばらく放っておこうアクアはよくがんばった。



 こちらはこちらでロゲホスの狩りを継続中、むしろアクアの様子を見ながらでもこの程度のできる。だんだんちゃんと見なくてもヘッドショット出来るようになってきてるのがちょっとだけ怖い。



「エリナはほどほどにして瞑想してね」

「ユキトくんはさっきから一度も休んでないけど大丈夫なの?」

「この程度じゃ余裕だね。そもそも一発の魔力消費が違うし、魔力総量も違う。それとスキルの恩恵があるから回復も早い。これくらいだと減ってもすぐに回復するからいくらでもできるよ。精神的に疲れるのはどうしようもないけど」

「本当にすごいね……」

「俺と一緒にいるんだ。同じとは言わなくてもそれなりの事は出来るようになるよ。出来れば一緒に二級に上がりたいしね」

「私にできるかな?」

「俺もいるしやろうと思えば出来るよ」

「うん……そうすれば一緒にいられるもんね」

「前にも言ったけど養うって手もあるよ?」

「私だって冒険者だよ?」

「確かにその通りだ」


 一緒に居られるもんねって言うのはつまり一緒に居たいってことですよね? ここで雰囲気作るのもいいかなって思わなくもないけど、周りがあまりにひどい光景なのでさすがに抵抗がある。

 辺り一面に転がっているロゲホスの死体。こんな中でいちゃつくなって話です。もったいない。非常に勿体ない!


 この日は一日中ロゲホスを狩っていた。集まらなくなったらロゲホスを回収して次へ移動を繰り返した。元々五日間の予定で移動は一日ですんだ。なので今日も含めて三日間はここで狩りを継続していく。がんがん稼ごうと思う。帰りが一日設定だけど行きは一日でこれたし、行きよりもエリナは成長してるはずなので問題ないはずだ。




 予定の日程を終えて走る森の中、途中で四月も終わり五月。今日で五月三日。無限倉庫の中には約八百頭弱のロゲホスが入っている。

 アクアもエリナも最初とは比べ物にならないくらい強くなっていた。成長というよりもスキルの熟練度が上がった結果だと思う。アクアは途中から水魔法使い始めたのは驚いた。ゲームの時はそんな事なかったのだが、どこまで出来るようになるのかな?


 エリナも光魔法がだいぶ強くなってきて、突進してるロゲホスの足を狙い撃ちして転倒させる事も出来るようになった。倒すまでの魔法使用回数もずいぶん減った。

 町に帰ったら今回こそはエリナの杖を買い換えよう。自分用の防具もだが、いつも忘れてしまう……。なんだかんだで服の事に気が行き過ぎていたと思う。


 行きは日が暮れ始めた頃に森を突破したが、今回はそれよりもだいぶ早く町に着いた。もちろん帰り始める時間が早かったこともあるが、それ以上に休憩の回数が減っていた。パワーレベリングだなぁと思いつつも、今更だし俺と一緒にいると言う事は最初からそういう事なので気にしない事にする。




 時間はまだ余裕がありそうだったので解体場へ行きお金を受け取り、三十頭分の解体をお願いした。資金は十分にあるので、これで装備を代えて解体中の三十頭分の毛皮で七級昇格試験を受けられるはずだ。


 買ったものは、俺が革鎧と盾。エリナは革鎧と額当て、杖、短剣だ。

 エリナの革鎧は胸部を守るための物だ。いざという時の防御力は確保しておくべきなので購入した。短剣はもしもの時用に後で仕込もうと思う。杖術を教えようかとも思ったけれど杖を見る限り、攻撃に用いるには丈夫さが足りなさそうなのでやめた。

 俺の盾は本当にとりあえずだ。俺が前衛を務める時に回避してはいけない場面もあるはずなのでその為だ。


 新装備はエンチャントはしてないが、これで十分八級依頼を受けさせてもらえる装備になったと思うのでギルドのスイナさんの所へと向かった。




「いらっしゃい、特に何事もなかったみたいで良かったよ」

「ロゲホス程度に後れは取りませんよ。でも心配してもらったみたいでありがとうございます」

「いいよいいよ。無事に戻って来てくれれば何の問題もないよ」

「それでこれで八級の依頼をお願いしたいんですけど」


 そう言って俺は解体場の札を渡す。これで数を確認してもらえば七級昇格試験になるはずだ。


「それじゃ確認してくるからちょっと待っててね」


 スイナさんは確認の為に解体場へと行った。おそらくすぐに戻って来るだろう。


「これで七級昇格試験か、その後は指名依頼しながら色々な場所行かないとならないのかな?」

「どうなんだろうね? それよりもこんなに早くここまで来るなんて思ってもみなかったよ」

「俺と一緒にいたら仕方がないな」

「そうだね」


 小さく笑いながらエリナはそう答えた。なんというか二人でいるのが普通になりつつある。いつまでこうしていられるのか? ずっと一緒に居られるのか? 先の事なんてわかりはしないか。死なんてそこらじゅうに溢れているんだから……。

 そんな事を考えてたらスイナさんが戻ってきた。


「確認してきたよ。三十枚あったからこれで七級昇格試験だね。すぐに処理しちゃうからカードもらえる?」

「お願いします」

「……これで完了。カードは返すね。それで七級昇格試験は前にも言ったと思うけど護衛依頼なの。良さそうなのがないか確認するからちょっと待っててね」


 そう言うとスイナさんは手元にあった資料を見始めた。依頼書の控えでもあるんだろうか?


「スイナさん。それはなんですか?」

「エリナちゃん、これはね。護衛依頼をまとめてある依頼書の控えよ。護衛依頼は複数のパーティが受けるから、張りっぱなしにしてあるの。だからこれが必要なんだよ。他の依頼も控えはあるけど基本的に必要ない事が多いからそっちは別保管なんだよ。そうだ。二人は護衛依頼の依頼書取って持ってきちゃダメだよ。心の中で取るなって書いてあるよね? って思いながらみんな対応するんだから」

「「気を付けます」」

「二人なら大丈夫だと信じてるよ。あ、これなんてどうかな? 出発は七日、馬車で三日かかる隣町まで行って戻って来る依頼で、依頼料はちょっと安いけど王都に戻って来るし、この商人さんの所は信用があるからいいと思うよ」

「スイナさんがお勧めしてくれるならそれにします。打ち合わせとかはあるんですか?」

「特にないよ。朝、南門が開くとそのまま出発だから朝は気を付けてね」


 この後色々と注意事項を聞いたり、必要な物を聞き依頼を受ける事になった。これが無事に終われば七級にあがる。がんばろうと思う。


「そうそう、この依頼が終わって七級に上がったら指名依頼があるからね? 三十五回連続依頼ってそうそうないよ。わかってると思うけど、これを受けてる間は別の依頼受けられないから、一ヵ月くらいはこれに専念してね。この依頼が終わればそのまま六級にあがるから」

「そうなんですか?」

「七級から上に上がる為には成功率とギルドへの貢献が必要になるんだけど商業ギルドのギルドマスター直々だから貢献が大きいと判断されたんだよ」

「最低回数はないんですね」

「貢献したってもっともわかりやすいのが回数だからね。特に設定しなくても普通はそれなりの回数こなすものだよ」

「普通はですか」

「そう、ここからは実力が更に反映されやすいようになってるんだよ。でも、無理しちゃダメだからね。エリナちゃんだっているんだから」

「わかりました」


 六級も一ヵ月かければ問題なくなれそうだ。まずは目の前の事をがんばろうか。

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