表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/79

13.魔力循環

 日はまだ高いのでアーラル商会で一通りの装備品を眺めて値段を調べた。七級を目指すあなたへのお勧めセットがあったので、そのセットを元に色々と組み合わせを考えてみる事にした。

 ちなみにロゲホスの布製品はここでは取り扱ってないそうだ。糸に比べて革は使い道が少ない為、七級セットに組み込まれてる物もあったが、布製品は更に値段が上がる為新人が良く使うこのお店での取り扱いはないそうだ。


 次に向かったのはキューム古着店だ。


「古着屋さん? 私服を買いに来たの?」

「ここは古着よりも布や糸の販売がメインなんだよ。使えなくなった古着を買い取ってそれを修復して売ってるんだよ」

「そうなんだ。でも、今回の事で服が破れたりとかしてないよね?」

「来た理由は布がほしかったからだよ。俺が縫えるしね」


 目をパチパチさせながら俺を見ているエリナ。確かに冒険者で破れた所を繕う程度じゃなくて、服を縫うってなると驚くよね。ゲーム時代は戦闘できる万能生産職だったから鍛冶も調合もその他諸々色々と作れるんだけどな。


「お裁縫できるんだ」

「あぁ、だから服は戦闘服も私服も俺が縫うつもりだ。もちろんエリナの私服もお金に余裕ができたらちゃんと縫うぞ」

「えっちな衣装とか?」

「そういう用途の服はもっと仲が進展したらな。どっちかといえばお人形さんの着せ替え遊び? そこまでの枚数になるまでは時間かかるだろうけど」

「私はユキトくんのお人形さんなんだね」

「大切に扱うから安心してほしいね」


 そんな事を話して店の中へと俺達は入っていった。




「いらっしゃーい、あれ? ユキトだ。……しかも女連れ!? この世の春がキターーー!! って感じ?」

「残念ながら蕾が花咲くかわからない状況ですよ。今日は聞きたい事があった来たんです。エリナは服見てていいよ」

「うん、話が終わったら教えてね」


 そう言ってエリナは古着の方を見に行った。女の子だし見るだけでも楽しめるだろう。もちろんほしければ買えばいい。好きな服の傾向も見れるかな?


「それで何かな?」

「ロゲホスの布ってあります?」

「無理、うちの範疇じゃないよ」

「毛皮を持ち込んでもダメかな?」

「ダメだね。うちは一般向けだよ? ロゲホスは冒険者向けだもん。うちで取り扱ったって言ったら他の店から苦情が来るよ。ちなみに紹介もちょっと勘弁してもらいたいかな。基本的にロゲホスみたいな冒険者向けの布って布の状態じゃ販売しないからね」


 店同士の繋がりというか縄張り的に無理らしい。そして紹介も無理。しかたがないからしばらくはここの布を買って戦闘服も縫うか。

 ……糸車と機織り機がほしいな。そうすると家がほしい。しかも借家じゃなくて自分の持ち家で好き勝手に改造できる家だ。広さも必要になるし、魔道具を作る為の高品質な魔石も必要になる。むしろ家ならホームのあったサークリスに欲しいけど移動時間を考えると……王都に転移魔方陣設置拠点がほしいからやっぱり持ち家か。そうするとやっぱり魔道具が必要なわけで……。


 しばらくは完成品で我慢しながらお金を貯めよう。孤児院も何かしたいけど院長に許可とってからだしなぁ。

 思考が脱線しすぎた。とりあえず今必要な物を買おう。


「それじゃ普通の布で我慢します。俺とエリナのズボン二着分ずつ、エリナの上着二着分とローブ一着分、俺の上着二着分と……そうですね。ロングコート一着分の布がほしいかな」

「また買うねぇ……今度はしっかりキッチリ払ってもらうけどあるかい?」

「五万あれば足りるますよね?」

「十分十分、それじゃ色選ぼうかね」

「そうですね。エリナ! 服の色選ぶの手伝って!」

「はーい」


 三人であーでもないこーでもない。どれがいいこれがいいと話をしながら布を決めた。その布に合う色の糸やボタンなども買い、ついでに下着を作る為の布も買った。

 自分の分だけではなくエリナの分もだ。まさかエリナの方から下着が縫えるかどうか聞かれるとは思わなかった。で、バカ正直に縫えると言ってしまえばそれならお願いしますという流れになった。作ってもらえるなら嬉しいらしい。恥ずかしくないのだろうか?


 ちなみに裁縫の腕に関してはパーカーを見せたり着せたりすれば何の問題もなかった。むしろこれで食べていけると言われたが仕事にする気はない。自由気ままに作るのが楽しいのだから。




 宿では個室が空かなかった。むしろみんな長期客で早々開かないらしい。もしかすると二人部屋もなんて言われたらもう確保しておくしかない。とりあえず五泊分前払いした。


「それで宿でもできる事ってどんな事なの?」

「魔力循環と瞑想かな」

「瞑想はやった事あるけど、魔力循環はやった事ないかな」

「瞑想は毎日やった方がいいんだけどね。それじゃ魔力循環やってみようか。両手を出して」

「うん」


 両手を握って輪を作る。最初は流れを掴むところから始まる。俺はこれを自分でできるようになったけど、ゲームの最初はこうして教えてもらったし、こうして教えて来た。


「最初は俺が魔力の流れを作るから、エリナは魔力の流れを感じ取って。最初は何かが入ってきて、反対側から出て行く感覚を掴むところからね」

「うん、わかった」

「目を閉じてるとわかりやすいと思うけどその辺の判断は任せるよ。それじゃ行くよ」


 右手から少しずつエリナに魔力を流し、左手からエリナの魔力を吸い上げる。それから吸い上げた魔力に俺の魔力を乗せて右手から送り返す。吸い上げる魔力に俺の魔力を感じるようになったら、今度は最短ルートで移動するように調節して俺とエリナの間に感じ取りやすい魔力の流れを作り出した。


「今、完全に繋がったけどどうかな?」

「うん……なんとなく感じる」

「それをまずはちゃんと感じ取れるようになろうか」

「うん……」


 エリナは静かに魔力の流れを感じる為に集中している。俺は自分の中に入って来る情報の処理をしていた。エリナの魔力を吸い上げてる最中に気が付いたのだが、相手の魔力の質や性質を読み取れるみたいなのだ。そこから得た情報で今後の育成方針を決めていく。

 攻撃は光属性と無属性、後は回復、支援、防御と見事に支援系の性質だ。これに状態異常が入ってればよかったけれど、そっちはダメっぽい。


 しばらく俺が流すだけだったが、少し引っ張られる感じを受けた。


「今、魔力を引き込んだ?」

「え? えっと、これが魔力の流れなんだよねって思って引っ張ってみたんだけど……。ダメだった?」

「問題ないよ。ただいきなり引き込まないようにね。俺の方でも調節してるけど無理に引き込むと体内の魔力が増えすぎて動けなくなるよ」

「そんな事があるの?」

「あるよ。食べ過ぎみたいなものだから時間経過とかこっちで魔力を抜けば動けるようにはなるけど体にはダメージが出るからやらない方が無難だね」

「うん、気を付けるね」

「後、引き込むなら押し出すのも一緒にやらないと体内の魔力がやっぱり増えるからね。今は俺が調節してるけど」

「一緒にできるかな……」

「今はまだいいよ。慣れたらって事で」

「わかった」


 そう言って目を閉じてまた集中する。ある程度魔力を使っているからか呑み込みが早い。こうやって魔力を引っ張り込む事が出来るようになれば、体内で魔力を動かすことも出来るようになる。

 しかし、遠慮なく引っ張ってくる。害にならないようにこちらでも吸い上げる速度を上げる。そんな事をしてたらどんどんその速度が上がっていく。

 対応できる速度なので言わないが、他の人で同じことをやったら下手をすると二人とも倒れるような状況だ。一気にじゃなく徐々に上げてるとはいえよくもまぁ短期間にここまでできるようになるもんだと感心しながら練習を続けた。



 魔力循環の練習が終わった後は瞑想をしてもらった。どう足掻いてもエリナの体内に入った俺の魔力が残ってしまう。それを排出もしくは吸収するためには必要な事だ。

 その間で服でもと思ったが、よくよく考えれば今は上級スキルが使えない状態だ。縫おうと思えば問題なく縫えるが性能が落ちてしまう。なので服のデザインを考えたり、エリナを観察したりしていた。観察してたのは目の保養が大部分の理由だが服を縫う時のサイズを測る為でもある。それを言い訳に観察してる。気づかれてるよなぁと思いつつもそれをやめるつもりはなく、次第に余裕ができたらどんな服を

 縫おうかと考えながら見続けるのだった。


 その後特に追及もなく食事の後、明日の予定をたてる事にした。といっても俺は俺でやりたい事があるからエリナがどうするかを聞くだけになる。


「明日は依頼を受けずに、ギルドでお金を受け取ってロゲホス放出してから孤児院に行こうと思ってるんだけどエリナはどうする? 一度実家に顔を出しに行ってくるか?」

「一緒に行ってもいいかな? 実家には出来れば行きたくないから……」

「そうか……。一緒に行くのは問題ないよ。チビらに囲まれる可能性はあるけどね」

「それくらいはたぶん大丈夫?」


 小首を傾げてそんな事を言う様は可愛らしかった。大丈夫らしいので明日も一緒に行動する事になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ