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酒瓶片手のリーチェがふらふらしながら僕に近づく…
『ハーァン、なによあの無様な姿は、私は悲しい、悲しすぎるわ』
といいながら酒瓶を真上に上げて酒をあおる。僕と肩を組み不甲斐ない、不甲斐なさ過ぎるわ、あんな奴に負けるわけないとか色々言っているがとにかく酒臭い…いつの間に飲んだんだろう。
リーチェの肩越しに床に倒れて動かないベア、酒瓶を抱えてわんわん泣いているヴァル少年…いつの間にこの状況になったのか、僕は考えることをやめた。
これは夢だ、きっと夢だ、僕も少し飲んだからきっと夢だ、3人を無視して僕は横になろうとしたがリーチェの振り下ろした酒瓶が僕に現実であると思い知らしてくれた。
そして、僕とヴァル少年、ベアは正座している。相変わらずベアは座椅子状態だけれど、どうなるんだろう僕達…
『まあ、おふざけはここまでよ、ハーン、あのピカピカ野郎に復讐よ。ヴァル、ベアいつまでも遊んでないでしゃんとなさい』
今までの姿はなかったかのようにすっと立つ3人。
『あなたの力を使えるように特訓よ』おー、という両隣の2人。
不安しかない、ヴァル少年のゴーを思い出していると突然。
リーチェの腕が僕の胸を貫いていた。
不敵に笑うリーチェは愛らしい笑みを浮かべて、私を見て、といった。
僕は自分の身体の中が消えていくような感覚に驚いていた、自分の身体よりも広い空間を身体の中に感じる変な感覚…自分が自分でないような空気に溶けてしまうような広がり。
『これが、あなたの器、あなたを選んだ私たちの理由』
意識が薄れそうになった時、僕の頭に見たこともない大きさの門が浮かんできた。
『ここからはワシの担当じゃな』ベアの声が聞こえ、目の前のリーチェが消えた。
僕は近づくベアの中に吸い込まれていった。目の前にはさっき頭に浮かんだ大きな門。
門の前に立っている僕にベアの声が聞こえる。
『小さきものよ、その門を開けるのだ』
僕は見上げるような扉を一生懸命押した、びくともしない、さらに力を込めて押す。
開かない、物音ひとつしない。途方にくれる僕にまたベアの声が聞こえる。
『その扉を開けるのは強い意志と願い、頭と心をつなげて願え、小さきものよ』
僕は自然とあの泉を思い出していた、もう一度、もう一度・・・
扉は音もなく静かに隙間を開いた、指も入らない本当にわずかな隙間、その隙間から強い風が吹いてくる。倒れてしまいそうで足を踏ん張り風に向かって身をかがめた。
『あはははははは、ここから先は俺の出番だー』ヴァル少年の笑い声がこだまする。
ヴァル少年は笑いながら叫ぶという器用なことをしながら僕にいう。
『扉に背を向けて立て、あれはお前のものだ、溢れる流れを背中から身体に取り込め』
僕は言われたように扉を背に立つ、押しつぶされそうだ…
背中を丸めてうずくまりそうになる…
『ばかやろう、胸を張れ、取り戻したいものがあるんだろうが』ヴァル少年の声が胸に刺さる。
僕は一度目をつぶり、身体を伸ばした。
身体に風が流れ込んでくる、力が満ちてくる、身体が中から爆ぜてしまいそうなくらい。
『そこでゴーだぁぁぁぁぁぁぁぁっ』
ヴァル少年の楽しそうなゴーって言っている姿を思い出し僕は手を前に突き出した。




