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僕は闇を纏ったまま、女王とラスクの姿が見えるようにして戦場の中央に立つ、ここならどちらの陣営からも僕らの姿が見えるはずだ。
どちらも様子を伺っているが女王とラスクが捕まっているのを見て動揺しているようだ。
2人を目覚めさせ両陣営を向かせる。2人の姿を見た各軍は助けようとして中央へ進軍を始めた。女王とラスクはかろうじて動けるバロンとパメラに兵を近づけないようにと叫ぶ。
2人は何も喋らない僕を警戒しながら声を絞り出して全軍を止める。
僕を取り囲む両軍、それぞれの王が下がるように言うが、どうしていいかわからない両軍は下がることもできずにいた。女王もラスクも必死に叫ぶがどちらの軍も動くことができない。
動揺は全員に広がり、そのうち『王を放せ』『女王を解放しろ』などの声に変わっていく。
その場の全員が一丸となっていくのが伝わってくる。
『黙れ、人間共。お前らの王はこの魔王の手の中…』
風の吹く音以外の音はなく。日は天上に輝いている。
『頼む、俺以外の者は無事に帰してやってくれ…』
『私からも頼む、皆に罪はない…すべての責は私にある…』
ラスクと女王は僕に頼みを聞いて欲しいと懇願する。
『なぜ、私がお前ら人の頼みを聞かねばならない』
その言葉にうなだれる2人…その姿に両軍の兵士達は覚悟を決めたのかこちらに向かって進み始める。
『控えよ』
全員の足元に黒い茨が表れる。見る見るうちに全員が地面に縛られていく…
茨を通して力を吸い始める僕、兵士達は皆、息を荒くしながら僕を睨む。
力が満ちてくる…
『つまらん、群れても何もできない虫けらどもが、消し去る価値もないわ』
『私はこの先、森の泉にいる。首が欲しければ取りに来るがよい。争いを好む無価値な人の子よ』
僕はラスクと女王の顔を自分に近づけ、2人にそっと囁いた。2人は目を見開く、次の瞬間、僕は両軍の中へ2人を放り投げる。
『皆のもの出よ』
ドレスアーマーを身に纏った美しい姿のリーチェ。
金色の鎧を纏った、美青年のヴァル。
若草色が美しいローブに大きな宝石のついた杖を構えた初老のベア。
ただならぬ雰囲気を身に纏う3人が僕に頭を深く下げ僕の後に続いた。
『我々を相手にするなら、人すべてでかかってくることだ。相手になるとは思えんがな』
僕は大声で笑いながら茨の拘束を解く、力なく這いつくばる人の中を、後ろに3人を引き連れて森の奥へ歩いていく。




