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『なにから話そうかね。女王さん、俺はあんたの国でしばらくの間、住まわせてもらった。その時、面白い男の話しを聞いて是非お近づきになりたくてね。色々調べさせてもらったよ。酒場でハーンに近づき、鉱山にも俺の手の者を向かわせた。団長さんはたまたまハーンと一緒だったからついでだな』
女王は苦々しい顔をしてラスクを睨みつけている。
『そこのファミングを戦場で捕らえて、色々聞いたよ。こいつあまりに簡単に話すもんだからこっちも拍子抜けでね。面白いから加えてやった。まあまあ戦力になるしな』
『ラスク王、それでは私がただの滑稽な裏切り者の様ではないですか。私は真に仕える王とであっただけのこと』
『どうみても、ただの裏切り者だろうが。面白い男だな』
ラスクはファミングの奴を指差して笑い出した。
女王は徐々に落ち着いてきたのか、怒りをあらわにしてファミングを怒鳴りつける。
『私からの恩を忘れ、寝返るような奴は黙っていろ。何が真の王だ、この馬鹿者め』
『まあ、黙るのは女王さんも一緒だぜ。この目で見たあんたの国、民は疲弊しそれでも必死に生きていた。あんたは自分の国の民に何をした、考えたことがあるか。なあ、団長さんよ、あんたなら分かっているはずだ、違うか』
女王は歯が砕けるのではないかと思うほどかみ締め、怒りを何とかかみ殺しているようであった。バロンは何も言えず、拳を握り締めて下を向いてしまった。
ラスクは黙った2人に見向きもせずにこちらを向く。
『なあ、ハーンもう一度聞く。こちらに来ないか。俺はお前が守りたい者を悪いようにしない、約束しよう』
さすがに、女王も黙っていられなかったようで。
『馬鹿な、この場でハーンを引き抜くだと。ふざけたことを』
『おっと、俺は大真面目だ。それに女王、ハーンはお前の国の兵士じゃない。決めるのはハーン自身。違うか。これは俺とハーンの話しだ部外者は黙っていてもらおう』
ラスクは女王を黙らせる。女王とバロンは黙って僕を見る。
ひと言も発しない僕を面白そうに見るラスク、その場の全員の目が僕に注がれる…
『パメラさん、1つ聞いてもいいですか』
周囲がざわつく。ラスクは自分ではなくパメラさんに声をかけたことに軽く驚いていた、急に話を振られたパメラさんも動揺しているようだ。
『ハーン、パメラに何を聞く気だよ』
『ラスク、僕はパメラさんに聞きたいんだ、部外者は黙っていてくれないか』
ラスクは両手を挙げて笑いながらパメラさんに答えるようにといった。
『なんでしょうか』
『パメラさんから見て、ラスクはいい王でしょうか』
ラスクを見る、パメラさん。ラスクは『思ったように言えばいい』といった。
『王は、自分勝手に敵地へ入り込んだり。政務をさぼり逃げ出すことも多々あります。しかし、民を想い、民のためにと常に思っている。すばらしい王です。王のために死も恐れない民が大勢おります。私も王のために死ぬことができます』
真っ直ぐな瞳で僕に言う。
『ラスク、パメラさんの気持ちを聞いてどう思う』
『俺はその気持ちを嬉しく思う。俺の理想のために命を懸けてくれる民に感謝している』
ファミング以外の兵士はその言葉に涙ぐみ、深々とラスクに頭を下げた。
女王とバロンはその光景に衝撃を受けているようだ。女王は下を向き、顔を上げることは無かった。




