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翌朝、大平原は霧に包み込まれていた。女王はバロンの制止を振り切り。1人平原の中心を目指して進み出る。僕はバロンの後ろに乗りながら女王の隣まで進む。
時間が進むにつれ霧も薄くなってくる。僕の左目には敵の影も無く、しばらく行くと大きめのテントが1つ建てられていた。その前にはあまり思い出したくない、会いたくない男が立っていた。
『ファミング。なぜお前がここにいる』バロンが叫ぶと奴はへらへらと笑いながら、女王に深く頭を下げ。
『女王陛下、お久しぶりでございます。お元気そうで何よりです』
『ファミング、私を裏切ったということか…』
『何をおっしゃいますか。私を切り捨てたのは女王、あなたではありませんか。そこの小男に尻尾を振って、こんなにあなたの為に尽くしていた私を捨てたのはあなたではありませんか。違いますか女王陛下』
『おのれ、ファミング…』
怒りに言葉を失う女王を無視し、奴はこちらを向く。
『ハーン、お前の活躍は私の耳にも届いているよ。大したものだ、さすがはこの私を地獄に落とすだけのことはある。今日は供の魔人たちはいないのか。戦場の真ん中でずいぶんと余裕だな。足元をすくわれるぞ』
僕は何の反応も示さない。奴も以前のように取り乱したりはしないようだ。
『この陣はお前の策か』
バロンが奴に問う。
『そうだよ、団長殿。いかに奴が強かろうとも広範囲からの包囲には対応できまい。奴1人が生き残っても、戦は頭を取ったほうが勝ち。違うか団長殿』
奴の言葉にすばやく周囲を警戒するバロン。その姿を見て、馬鹿にしたように笑うファミング。
『何がおかしい』
『いやいや、団長殿は相変わらずだと思ってな。心配せずとも伏兵などいない。私の王はそういうやり方はお好みじゃないらしい、甘いお方よ』
『ファミング、黙りなさい。我々の王を侮辱する気ですか。即刻その口を閉じなさい』
テントの中から見覚えのあるメガネの女性が出てくる。
『これは失礼、パメラ殿。あまりに懐かしかったのでつい、口が回ってしまいました』
『敵といえども礼を尽くせない者は目障りです。下がりなさい。』
ファミングは、はいはいといいながらテントの中へ入っていった。
『大変失礼致しました。女王陛下、我が王の側近パメラと申します。早速で申し訳ありませんが王がお待ちです。中へお入りください』
パメラと呼ばれた女性は洗練された動きで頭を下げ、テントの入り口を開き、中へ招き入れた。
僕とバロンは女王の前に立ち、テントの中へと進んでいった。中央には僕のよく知る人物が足を組んで座っていた。
『こちらにいますお方が我らの王、オージル・ラスク王でございます』
パメラの言葉にテント内の数名の兵士が膝を着いて頭を下げる。ファミングも頭を下げている。
中央に鎮座するラスクは僕の知る気軽な男ではなく。紛れも無い王の器を感じさせる男であった。
『よう、ハーン。また逢えたな。まっていたぜ』
僕とバロンは驚きのあまり声も発することができずにいた。
『団長さん、あの日の酒、美味かったぜ、ありがとよ。立ち話もなんだから、まあ座れよ。遠慮はいらねーからさ。女王さんもまあ座れよ。いきなり命はとらないからさ』
『カミュ、ハーン。いったいどういうことじゃ。この者が言っていることはなんなのじゃ』
突然の出来事に取り乱す女王にラスクは優しく話しかける。
『説明するから、とりあえず座れよ。女王様』
ラスクは言葉に強い力を込め、僕らを座らせた。今この場は完全にラスクの手の上になっていた。




