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城に着くと、いつもの女王の間ではなく、今回の作戦を決める会議場に通された。
『ハーン、遅かったな。まあ、私の横に座るがよい』
『遅くなりまして、申し訳ありませんでした。隣失礼致します』
女王はふっと笑い。
『いい面構えになったものよ、覚悟を決めた男の顔…いいものよ』
『ご冗談を、所詮力があるだけの小男です。会議をどうぞ』
『つれない奴だな。まあいい。バロン始めよ』
バロンは大きな地図を壁に張り出し、説明を始めた。
『現在、ハーンの偵察のお陰で大きな被害は出ていません。しかしながらじりじりと前線を下げている状況です』
確かに地図上で、既に相手に奪われた砦に印がついていた。そして相手の進行具合、経路もかかれていた。
『相手の軍は寒い時期でも士気を落とさずに進んできており、そろそろ休息が必要と考えているのか、こちらの思惑通り大平原に布陣するものと思われます』
『ふむ。ハーンあの辺りはだいぶ偵察で通っているな。バロンの話しを聞いてどうじゃ、意見はあるか』
女王は他の家臣ではなく僕に意見を求めてきた。全員が僕を見る。
『地形的に森の中は小川や崖なども多く大人数で動くことは難しいと思います。バロンの読みどおり大平原に陣を構えてくるでしょう』
『大平原ならば、ハーンの力も存分に発揮できるな』
僕は黙ったまま、軽く頷いた。
『では、こちらも大平原に兵力を集中。布陣はバロンに任せる。相手より先に入りたい、急ぎ準備を』
『女王陛下、既に先発隊は現地に入っております。3日あれば準備は整いましょう』
『遅い、出立は2日後。よいな、では解散』
バロンをはじめ、みんなが会議室より出て行く。僕も外に出ようとすると女王に呼び止められる。
護衛2人と女王と僕の4人が残る。驚いたことに女王は護衛の2人にも扉の外で待つように指示を出した。
『女王陛下、いくらハーン殿でもお2人にするわけには…』
『何度も言わせるな、下がれ』『はっ』
会議用の広い部屋に僕と女王が残る、女王は僕に手招きをしてまた隣の椅子に座るように仕草で伝えた。
黙って僕を見ている女王。一向に口を開かない。痺れを切らした僕は尋ねる。
『女王陛下、どうかされましたか』
『ハーン、何をたくらんでおるのじゃ。お前はわかりやすい、そんなところも私は気に入っていはいるが…敵に回るなら話しは別…』
お互い目を逸らさずに微動だにしない。お互いの隙を逃さないように、そして時間は過ぎていく。
切り出したのは僕だった。
『女王陛下、わかっているのではないですか。僕の狙いがわからずとも。相手に鞍替えすることはないと…そうでなければ、いまここであなたを殺し、ここから堂々と出て行ける僕と2人きりにはならないでしょう』
女王は表情を崩し心底楽しそうに笑って見せた。
『相変わらず、謙虚というか自分の力を過小評価する男よの。お前がその気になればバロンクラスの達人が何人いても、私は殺される。そうではないか』
僕は言葉につまる。
『それならば、邪魔のいない2人のほうが都合がよい。それだけじゃ』
そういいながら女王は僕の手を取り、少し眼を潤ませ、熱っぽい視線を絡ませてくる。
『この国の王になる気は無いか』
僕は何もいえない。どういうつもりか分からないが、その目は間違いなく本気でいっていると信じさせるほどの強さと決意が込められていた…
僕は見えない何かに縛られているように動けない、女王は少しずつ僕との距離を縮めてくる。
『分かるから…動けないのであろう、私は本気なのだ。この話し受けてはもらえぬか』




